短21《妻とのリストラ》第9回 完結
短21《妻とのリストラ》第9回 完結
帰宅すると、暗いのにリビングに電気が点いていません。
「電気も点けないでどうした?」
『・・・。』
妻の理香(りか:32歳)は泣いているようです。私(積木清人:きよと34歳)は部屋の明かりを点け、ICレコーダーで録音した浅尾正明(まさあき:28歳)との会話を妻に聞かせた。理香は俯きながら聞いている。しかし、浅尾が私を〔種無し〕と罵倒した所で妻は顔を上げ泣きながら『ゴメンなさい。ゴメンなさい。』と何度も私に謝ってきた。
『・・・本当にゴメンなさい。私のせいでこんなことを・・・。』
「いや、それは別にいいんだ。それより理香は本当に私と別れたくないのか?」
『はい、清人さんと一緒にいたいです・・・でも自分の犯した罪の重さもわかっています。都合の良い事を言っているのもわかっています。それでも本当に清人さんと一緒にいたい。』
よく女の涙は武器と聞きます。しかし、私には妻が嘘を言っているとは到底思えません。いえ正確には《この懺悔の言葉が嘘でも騙されてもいい。》と、そう思いました。そんな事を考えながら私は喋り出しました。
「・・・私は仕事を理由にずっと君を一人にしてきた。今回の問題も最初はそのせいで君が不
倫をしたのだと思っていた。それに不倫をされても仕方がないとも思っていた。でもこの問題を探る間に私は理香の事を愛しているんだと気付いた。私こそ都合の良い男だよ。でももし、こんな私でもいいと思うのならもう一度やり直さないか?」
それを聞いた妻は泣きながら何度も頷いていた、気付いたら私は理香を抱きしめ一緒に泣いていた。
寝る前に妻から預かった携帯をチェックすると浅尾からのメールが届いています。
≪旦那と話したよ。ずっと俺に敬語使って情けない奴だな!あんな奴と別れて俺と早く結婚しよう。≫このメールを見て私の気持ちが変わりました、本当は日曜日には妻ではなく弁護士を連れて浅尾に会いに行こうと思っていましたが、私はある決意をしました。
「日曜に浅尾と会うんだけど、理香も協力してくれないか?」
妻は少し驚いた顔をした後、まっすぐに私の目を見て答えます。
『・・・はい、私に出来る事は何でもします。』
そして日曜がやってきました。私と妻の理香は浅尾と会う約束をしたシティホテルのロビーに向かいます。私達の方が早く着いたみたいで浅尾はまだ来ていません。暫くすると浅尾がやってきましたが、相変わらず反省の色はなくふてぶてしい態度です。
〔待たせた?まぁいいや、で話って離婚してくれるの?〕
浅尾の態度に怒りを通り越し既に呆れている私がいます。
「いや、私達は別れない、なぁ理香。」
『はい、別れません。』
浅尾が驚いた表情をします。
「理香、何かこの人に言いたい事があるんだろ?」
『えぇ、あります。私はあなたの事が好きではありません。むしろ大嫌いです。写真で脅され関係を迫ってきたので仕方なく応じました。応じた理由もこの人と別れたくなかったから応じただけで本当はすぐにでも全部伝えるべきだったと後悔しています。』
浅尾の表情がみるみる曇っていく、予想以上に理香の言葉が効くとは、本当にこの男は理香に惚れていたみたいだ。
「まぁそういう事だから理香のことはキッパリと諦めてもらえるかな、それともまだ取った写真で脅すつもりなのか?」
その後は、放心状態の浅尾が黙って携帯からSDカードを抜き私に渡してきました
結局この日が、私達夫婦と浅尾とが会った最後の日になりました、後は弁護士に全て任せ報告だけを受けました、警察には告発しないことを条件に慰謝料を積み上げ、送金させました。それを受け取ったと同時に会社へもこの事を伝えると浅尾は解雇されたみたいです。さらに浅尾正明の実家にも内容証明郵便で浅尾の悪行を伝えました、浅尾は既に成人ですから親の責任は勿論ないのですが、すぐに御両親がやってき謝罪をしてもらいました。
ようやく私の浅尾正明に対する制裁はおわったのです。そして私は今回の不倫騒動で自分がまだ妻の理香を心から愛しているのだと改めて感じる事が出来ました。会社には異動願いを出し、給料は下がりますが仕事が定時で終わる部署に移ることができました。
決まった時間に家に帰ると妻が夕食の準備をして待っています。こんな当たり前の事にでも幸せを感じています。幸か不幸か私にはフラッシュバックというものが起こりません。やはり妻の行った行為よりも私が今まで妻にしてきた事の方が酷かったからだと思います。普通にセックスもしますし、一緒に風呂に入る事もあります。休日には一緒に買い物に出かけたり、時々はデートみたいな事をするようになりました。何よりも妻の理香が以前にも増して笑っている事が多くなりました。
後日、私の携帯に理香が友達の真理子宛に送ったメールが届きました。メール転送機能を解除し忘れていたのです。不倫騒動は既に解決していたので見るのは止めておこうと思い削除しようとするとボタンを間違ってメールを表示させてしまい送ったメールを目にしてしまいました。書かれていた内容はこうでした。≪清人さんとの関係がすっかり良くなりとても幸せ。≫と書かれていました。 完
2015/11/11
短21《妻とのリストラ》第1回から読みたい方は ⇒ こちら
帰宅すると、暗いのにリビングに電気が点いていません。
「電気も点けないでどうした?」
『・・・。』
妻の理香(りか:32歳)は泣いているようです。私(積木清人:きよと34歳)は部屋の明かりを点け、ICレコーダーで録音した浅尾正明(まさあき:28歳)との会話を妻に聞かせた。理香は俯きながら聞いている。しかし、浅尾が私を〔種無し〕と罵倒した所で妻は顔を上げ泣きながら『ゴメンなさい。ゴメンなさい。』と何度も私に謝ってきた。
『・・・本当にゴメンなさい。私のせいでこんなことを・・・。』
「いや、それは別にいいんだ。それより理香は本当に私と別れたくないのか?」
『はい、清人さんと一緒にいたいです・・・でも自分の犯した罪の重さもわかっています。都合の良い事を言っているのもわかっています。それでも本当に清人さんと一緒にいたい。』
よく女の涙は武器と聞きます。しかし、私には妻が嘘を言っているとは到底思えません。いえ正確には《この懺悔の言葉が嘘でも騙されてもいい。》と、そう思いました。そんな事を考えながら私は喋り出しました。
「・・・私は仕事を理由にずっと君を一人にしてきた。今回の問題も最初はそのせいで君が不
倫をしたのだと思っていた。それに不倫をされても仕方がないとも思っていた。でもこの問題を探る間に私は理香の事を愛しているんだと気付いた。私こそ都合の良い男だよ。でももし、こんな私でもいいと思うのならもう一度やり直さないか?」
それを聞いた妻は泣きながら何度も頷いていた、気付いたら私は理香を抱きしめ一緒に泣いていた。
寝る前に妻から預かった携帯をチェックすると浅尾からのメールが届いています。
≪旦那と話したよ。ずっと俺に敬語使って情けない奴だな!あんな奴と別れて俺と早く結婚しよう。≫このメールを見て私の気持ちが変わりました、本当は日曜日には妻ではなく弁護士を連れて浅尾に会いに行こうと思っていましたが、私はある決意をしました。
「日曜に浅尾と会うんだけど、理香も協力してくれないか?」
妻は少し驚いた顔をした後、まっすぐに私の目を見て答えます。
『・・・はい、私に出来る事は何でもします。』
そして日曜がやってきました。私と妻の理香は浅尾と会う約束をしたシティホテルのロビーに向かいます。私達の方が早く着いたみたいで浅尾はまだ来ていません。暫くすると浅尾がやってきましたが、相変わらず反省の色はなくふてぶてしい態度です。
〔待たせた?まぁいいや、で話って離婚してくれるの?〕
浅尾の態度に怒りを通り越し既に呆れている私がいます。
「いや、私達は別れない、なぁ理香。」
『はい、別れません。』
浅尾が驚いた表情をします。
「理香、何かこの人に言いたい事があるんだろ?」
『えぇ、あります。私はあなたの事が好きではありません。むしろ大嫌いです。写真で脅され関係を迫ってきたので仕方なく応じました。応じた理由もこの人と別れたくなかったから応じただけで本当はすぐにでも全部伝えるべきだったと後悔しています。』
浅尾の表情がみるみる曇っていく、予想以上に理香の言葉が効くとは、本当にこの男は理香に惚れていたみたいだ。
「まぁそういう事だから理香のことはキッパリと諦めてもらえるかな、それともまだ取った写真で脅すつもりなのか?」
その後は、放心状態の浅尾が黙って携帯からSDカードを抜き私に渡してきました
結局この日が、私達夫婦と浅尾とが会った最後の日になりました、後は弁護士に全て任せ報告だけを受けました、警察には告発しないことを条件に慰謝料を積み上げ、送金させました。それを受け取ったと同時に会社へもこの事を伝えると浅尾は解雇されたみたいです。さらに浅尾正明の実家にも内容証明郵便で浅尾の悪行を伝えました、浅尾は既に成人ですから親の責任は勿論ないのですが、すぐに御両親がやってき謝罪をしてもらいました。
ようやく私の浅尾正明に対する制裁はおわったのです。そして私は今回の不倫騒動で自分がまだ妻の理香を心から愛しているのだと改めて感じる事が出来ました。会社には異動願いを出し、給料は下がりますが仕事が定時で終わる部署に移ることができました。
決まった時間に家に帰ると妻が夕食の準備をして待っています。こんな当たり前の事にでも幸せを感じています。幸か不幸か私にはフラッシュバックというものが起こりません。やはり妻の行った行為よりも私が今まで妻にしてきた事の方が酷かったからだと思います。普通にセックスもしますし、一緒に風呂に入る事もあります。休日には一緒に買い物に出かけたり、時々はデートみたいな事をするようになりました。何よりも妻の理香が以前にも増して笑っている事が多くなりました。
後日、私の携帯に理香が友達の真理子宛に送ったメールが届きました。メール転送機能を解除し忘れていたのです。不倫騒動は既に解決していたので見るのは止めておこうと思い削除しようとするとボタンを間違ってメールを表示させてしまい送ったメールを目にしてしまいました。書かれていた内容はこうでした。≪清人さんとの関係がすっかり良くなりとても幸せ。≫と書かれていました。 完
2015/11/11
短21《妻とのリストラ》第1回から読みたい方は ⇒ こちら
- 関連記事
-
- 短21《妻とのリストラ》第6回 (2015/07/15)
- 短13〔夫婦の妄想ゲーム〕その4 (2015/07/17)
- 短21《妻とのリストラ》第7回 (2015/07/20)
- 短28〖絵里加の本音〗第7話 (2015/10/10)
- 短32【無防備】第5回 (2015/10/10)
- 短31《何が聞きたいの?》パート4 (2015/10/25)
- 短21《妻とのリストラ》第8回 (2015/10/29)
- 短21《妻とのリストラ》第9回 完結 (2015/11/11)
- 短13〔夫婦の妄想ゲーム〕その5 (2015/12/12)
- 短28〖絵里加の本音〗第8話 (2015/12/13)
- 短32【無防備】第6回 (2016/03/26)
- 短31《何が聞きたいの?》パート5 (2016/04/06)
- 短17《妻は上司に抱かれる?》Vol.4 (2016/07/24)
- 短17《妻は上司に抱かれる?》Vol.5 (2016/08/21)
- 短17《妻は上司に抱かれる?》Vol.6 (2016/11/06)
コメント
コメントの投稿