短21《妻とのリストラ》第8回
短21《妻とのリストラ》第8回
[水曜日] 夕方、妻(積木理香:りか:32歳)のパート先の会社に向かい浅尾正明(まさあき:28歳)が退社してくるのを待った、妻から聞いた退社時刻を少し過ぎてから浅尾が現れた。彼は中肉中背で背は私(積木清人:きよと34歳)よりも低く170cm前後だろうか、近づく私に彼はまったく気付いていなかった。
「浅尾さんですか?」
〔そうだけど、アンタは?〕
私を不審そうに見ながら浅尾がボソッと答える。
「理香の旦那です。なぜ私が来たかわかりますか?」
〔・・・・・・。〕
「ここでは話もし辛いので、移動しましょう。」
会社近くの喫茶店に入る。
「先程も伺いましたが、なぜ私が来たかおわかりですね?」
〔・・・・・・。〕
「黙っていても終わりませんよ、単刀直入に聞きますが、浅尾さんは理香と関係を持っていましたね。」
〔・・・・・・。〕
「黙るしかないですよね。妻を脅していたのですから。」
〔おっ、脅してなんかいない、同意の元に関係を持ったんだ。〕
「なら関係があった事は認めるのですね?」
〔・・・あぁ認めるさ。俺達は結婚するんだからな。〕
私はどうしても浅尾に確認したい事がある。それは妻の理香(りか:32歳)が本当に脅されていたのかどうか、そこで一つの賭けに出ることにした。私は少し驚いた口調で喋った。
「理香もそう言っていたのですか?もしそうならなぜ君と結婚したいと?」
浅尾の表情が一瞬緩んだように見えた。
〔あぁそうさ。理香も俺と結婚したいと言っていたよ。アンタと一緒に居てもアンタは種無しだから子供が産めないからってな。だから俺達はいつも中出しでやってたんだよ。子供をつくれば嫌でもアンタとは別れられると思ってな。〕
《しかし、この男はよくもここまで強気に出られるものだな?》と、なぜか冷静に思う私がいる。
「なぜ私が種無しだと?理香がそう言っていたのですか?」
〔いや聞いたのは理香の知り合いの真理子からだよ。〕
“真理子”という人物は理香に今のパート先を紹介した妻の友達で、その真理子自身も社員として働いている。私の知る限り妻の良い友達ですが、『少し口が軽いのがたまに傷。』と理香も笑いながら以前言っていました。しかし今回はこの真理子のお陰で妻が本当に浅尾に脅されていたと確信を持つ事が出来ました。
「そうですか、わかりました。今度、3人で話し合いたいのですが、時間を作ってもらえますか?」
〔あぁいいだろ。今週の日曜はどうだ。〕
「では今日はこれでお引取り下さって結構です。」
なぜ私がこんなに冷静なのだろうか、いや今はそんな事はどうでもいい妻が本当に脅されていたと確信を持てたのだから。浅尾が店を出た事を確認し、隠し持っていたICレコーダーを取り出すとしっかり録音出来たかを確かめて、私もその店を出た。
なぜ私が《理香は脅されていて関係を持った》という確信を持てたのかと言うと、それは私が《種無しではない》からです。ではなぜ私が種無し扱いなのか、その理由は妻にあります。実は私達夫婦は子供を望んでいました。しかし、なかなか子宝に恵まれず二人で病院に行った結果、妻が子宮頸がんであることが判明したのです。
理香の子宮頸がんは進行が進んでおり、医師からは「子宮の摘出を」と告げられ、理香は1週間も涙にくれ、夫婦でよく話し合った結果、手術を決断しました。手術後、妻の落胆は一層ひどく、日常生活もままなりません。誰にも知られることなく半年が過ぎて、理香も立ち直りました。
そこへ私達両親の「子供はまだか?」という声が聞こえ出し、このままでは本当に妻が精神的におかしくなると判断し「検査をしたら私が種無しだったから子供が出来ない。」という事にしました。両親も当初は驚いていましたが、私達夫婦にはそれぞれ兄弟がいて既に子供もいます、つまり私達の両親にとっては孫がいるので、それ以上はあまり言ってこなくなりなんとか乗り切り事が出来ました。
そして、この話をした人物がもう一人います。それが真理子でした、何故真理子にこんな話をしたかと言うとそれは両親の時と同じ理由です。今思えばこの頃から私達夫婦は少しずつすれ違いだしたのかもしれません。いえ私の方が勝手に距離を取り、妻を避けていたのです。そんな結果今回のような問題が起きたのかもしれません。そんな事を考えながら私は帰路に着きました。
2015/10/29
[水曜日] 夕方、妻(積木理香:りか:32歳)のパート先の会社に向かい浅尾正明(まさあき:28歳)が退社してくるのを待った、妻から聞いた退社時刻を少し過ぎてから浅尾が現れた。彼は中肉中背で背は私(積木清人:きよと34歳)よりも低く170cm前後だろうか、近づく私に彼はまったく気付いていなかった。
「浅尾さんですか?」
〔そうだけど、アンタは?〕
私を不審そうに見ながら浅尾がボソッと答える。
「理香の旦那です。なぜ私が来たかわかりますか?」
〔・・・・・・。〕
「ここでは話もし辛いので、移動しましょう。」
会社近くの喫茶店に入る。
「先程も伺いましたが、なぜ私が来たかおわかりですね?」
〔・・・・・・。〕
「黙っていても終わりませんよ、単刀直入に聞きますが、浅尾さんは理香と関係を持っていましたね。」
〔・・・・・・。〕
「黙るしかないですよね。妻を脅していたのですから。」
〔おっ、脅してなんかいない、同意の元に関係を持ったんだ。〕
「なら関係があった事は認めるのですね?」
〔・・・あぁ認めるさ。俺達は結婚するんだからな。〕
私はどうしても浅尾に確認したい事がある。それは妻の理香(りか:32歳)が本当に脅されていたのかどうか、そこで一つの賭けに出ることにした。私は少し驚いた口調で喋った。
「理香もそう言っていたのですか?もしそうならなぜ君と結婚したいと?」
浅尾の表情が一瞬緩んだように見えた。
〔あぁそうさ。理香も俺と結婚したいと言っていたよ。アンタと一緒に居てもアンタは種無しだから子供が産めないからってな。だから俺達はいつも中出しでやってたんだよ。子供をつくれば嫌でもアンタとは別れられると思ってな。〕
《しかし、この男はよくもここまで強気に出られるものだな?》と、なぜか冷静に思う私がいる。
「なぜ私が種無しだと?理香がそう言っていたのですか?」
〔いや聞いたのは理香の知り合いの真理子からだよ。〕
“真理子”という人物は理香に今のパート先を紹介した妻の友達で、その真理子自身も社員として働いている。私の知る限り妻の良い友達ですが、『少し口が軽いのがたまに傷。』と理香も笑いながら以前言っていました。しかし今回はこの真理子のお陰で妻が本当に浅尾に脅されていたと確信を持つ事が出来ました。
「そうですか、わかりました。今度、3人で話し合いたいのですが、時間を作ってもらえますか?」
〔あぁいいだろ。今週の日曜はどうだ。〕
「では今日はこれでお引取り下さって結構です。」
なぜ私がこんなに冷静なのだろうか、いや今はそんな事はどうでもいい妻が本当に脅されていたと確信を持てたのだから。浅尾が店を出た事を確認し、隠し持っていたICレコーダーを取り出すとしっかり録音出来たかを確かめて、私もその店を出た。
なぜ私が《理香は脅されていて関係を持った》という確信を持てたのかと言うと、それは私が《種無しではない》からです。ではなぜ私が種無し扱いなのか、その理由は妻にあります。実は私達夫婦は子供を望んでいました。しかし、なかなか子宝に恵まれず二人で病院に行った結果、妻が子宮頸がんであることが判明したのです。
理香の子宮頸がんは進行が進んでおり、医師からは「子宮の摘出を」と告げられ、理香は1週間も涙にくれ、夫婦でよく話し合った結果、手術を決断しました。手術後、妻の落胆は一層ひどく、日常生活もままなりません。誰にも知られることなく半年が過ぎて、理香も立ち直りました。
そこへ私達両親の「子供はまだか?」という声が聞こえ出し、このままでは本当に妻が精神的におかしくなると判断し「検査をしたら私が種無しだったから子供が出来ない。」という事にしました。両親も当初は驚いていましたが、私達夫婦にはそれぞれ兄弟がいて既に子供もいます、つまり私達の両親にとっては孫がいるので、それ以上はあまり言ってこなくなりなんとか乗り切り事が出来ました。
そして、この話をした人物がもう一人います。それが真理子でした、何故真理子にこんな話をしたかと言うとそれは両親の時と同じ理由です。今思えばこの頃から私達夫婦は少しずつすれ違いだしたのかもしれません。いえ私の方が勝手に距離を取り、妻を避けていたのです。そんな結果今回のような問題が起きたのかもしれません。そんな事を考えながら私は帰路に着きました。
2015/10/29
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