長E〖妻が好き過ぎて〗第23回
長E〖妻が好き過ぎて〗第23回
第22回← 20180824
私(橋内正人:はしうち・まさと:30歳) 妻(橋内実優:はしうち・みゆ:27歳)
友人(栗原良純:くりはら・よしずみ:30歳)
私は、こんな押入れの中に入っていて、出て行く格好悪さは、未体験ゾーンです。『正人サン、何やってるの?』・・・。想像するだけでも恐ろしい・・・。それでも、もし、もう少し妻の号泣が続いていたら、私は飛び出してしまっていたかもしれません。私がその気持ちになりかけてきた頃、実優の泣き声が静まってきました。栗原は胡坐をかいて、両手を前で組み、体を丸めてうな垂れています。この時ばかりは、私と同じ運命を背負った同志の様に見えました。
やがて、栗原がおもむろに自分の荷物を片づけ始めます。しかしソーセージには気付きません。何故かかえってホッとしました。それが終わると、ため息をつきながらトイレに行き、又ため息をつきながらティーシャツを着ています。彼は身支度が終わると、ちょっとジッとしていましたが、〔ヨシッ!〕と小さな声を出すと襖の方へ近づいて行きました。
〔実優ちゃん。〕
『・・・・。』返事がありません。
〔実優ちゃん、俺、もう帰るね!〕ちょっと大きな声をかけます。
その時、かすかに実優の声が聞こえました。
〔エ?〕栗原が聞き返しています。今度は襖に耳を付けて、〔実優ちゃん、もう帰るね!〕栗原はもう一度そう言うと、『ちょっと待って!』って、ようやく実優の声が聞こえました。
襖が静かに開いて、実優が現れます。さっきと同じ、外行きのワンピースを着たまま。まぶたがさっきより大きく腫れてしまいました。『ちょっと。』て言いながら、静かに妻が入ってきます。『もうちょっといられる?』かすれた様な小さな声で実優が聞くと、〔あ、あー、全然、仕事休みだし・・・。〕戸惑うように栗原は答えます。『そう、じゃあちょっとお話してもいい?』相変わらず小さなかすれた声。〔あ、あー、もちろん。〕妻が座るのを見て、栗原も慌てて座りました。
正座した実優は、下を向いたまま暫らく黙ってしまいます。何か、重苦しい雰囲気になってしまいました。〔実優ちゃん、何処か出かけるの?〕妻の沈黙に耐えかねた様に、栗原が質問。『エ?』実優が初めて顔を上げます。
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20200713
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