長E〖妻が好き過ぎて〗第21回
長E〖妻が好き過ぎて〗第21回
第20回
またもや呆然と立ち尽くす栗原良純(くりはら・よしずみ:30歳)の体が目の前に現れ、私(橋内正人:はしうち・まさと:30歳)は慌てて顔を背ける。栗原はガクッとうな垂れ、座り込んでしまいました。暫らくうな垂れていた栗原は、〔実優ちゃん。〕と、いかにも自信なさげに声をかけます。しかし、『・・・・。』実優は何も答えませんでした。
栗原がちょっと襖に近づき、〔実優ちゃん!〕ちょっと大きな声で呼びますが、『・・・。』妻(橋内実優:はしうち・みゆ:27歳)は尚も沈黙を保っています。栗原はゆっくりと立ち上がり、タバコを取り上げると窓を開け、上体をもたれ掛けてタバコを吸い始めました。遠くを見ているかと思うと、急にガクッと頭を下げたりしています。中途になってしまった事を残念がっているのか、これまでの事を後悔しているのかは判りません。
それよりも、実優が今、何を思っているのかの方が気になります。興奮も醒め、もうこの悪夢は終わったと思っていた私は、実優と私の将来という、重大な問題に気付き始めました。(今、とても実優の顔をまともには見られないだろう・・・、実優の顔を見て私の心が、行動が、どうするなんて見当もつかない・・・実優は・・・どうするんだ?!・・・)
どれ程の時間が過ぎたでしょうか、突然“バチン”と洋服ダンスの開く音がしました。そして、「バチン」又音がしました。タンスを閉めた様です。そして衣擦れの音がしています。栗原もその音に振り向き、慌てるようにパンツを穿き、ズボンに足を通し始めた時に、襖がスーッとゆっくりと開きました。慌てて穿こうとしてよろめいてしまった栗原を見て、実優は「クスッ」と僅かに笑みを浮かべました。泣いていたのか、目がちょっと腫れぼったく見えます。
『栗原君、何か食べる?』
その声はいつもの優しい声です。
〔あ、あー、いいの?〕
コクリと頷いて実優は台所に行きました。
『栗原君。』
〔ハイッ!〕
栗原は思わず正座をしています。
『正座なんかしなくていいョー、タバコ吸ってもいいって言おうとしただけだから。』
そう言って笑っていました。怒っていない事を知って、栗原はホッとしたのか、急に明るい声になります。
〔あっ、いいの?〕
『うん、正人はいつも構わず吸っているし、私は大丈夫だから・・。』
〔ありがとう。〕
栗原は早速タバコに火を点けました。
『何にもないけどいい?』
〔いいよいいよ、朝ごはんまで、作ってもらうつもり、なかったし・・・実優ちゃんに
二度も作って貰えるなんて、感激だよ!〕
『・・・。』実優は黙っています。 第22回へ続く
2017/08/07
第20回
またもや呆然と立ち尽くす栗原良純(くりはら・よしずみ:30歳)の体が目の前に現れ、私(橋内正人:はしうち・まさと:30歳)は慌てて顔を背ける。栗原はガクッとうな垂れ、座り込んでしまいました。暫らくうな垂れていた栗原は、〔実優ちゃん。〕と、いかにも自信なさげに声をかけます。しかし、『・・・・。』実優は何も答えませんでした。
栗原がちょっと襖に近づき、〔実優ちゃん!〕ちょっと大きな声で呼びますが、『・・・。』妻(橋内実優:はしうち・みゆ:27歳)は尚も沈黙を保っています。栗原はゆっくりと立ち上がり、タバコを取り上げると窓を開け、上体をもたれ掛けてタバコを吸い始めました。遠くを見ているかと思うと、急にガクッと頭を下げたりしています。中途になってしまった事を残念がっているのか、これまでの事を後悔しているのかは判りません。
それよりも、実優が今、何を思っているのかの方が気になります。興奮も醒め、もうこの悪夢は終わったと思っていた私は、実優と私の将来という、重大な問題に気付き始めました。(今、とても実優の顔をまともには見られないだろう・・・、実優の顔を見て私の心が、行動が、どうするなんて見当もつかない・・・実優は・・・どうするんだ?!・・・)
どれ程の時間が過ぎたでしょうか、突然“バチン”と洋服ダンスの開く音がしました。そして、「バチン」又音がしました。タンスを閉めた様です。そして衣擦れの音がしています。栗原もその音に振り向き、慌てるようにパンツを穿き、ズボンに足を通し始めた時に、襖がスーッとゆっくりと開きました。慌てて穿こうとしてよろめいてしまった栗原を見て、実優は「クスッ」と僅かに笑みを浮かべました。泣いていたのか、目がちょっと腫れぼったく見えます。
『栗原君、何か食べる?』
その声はいつもの優しい声です。
〔あ、あー、いいの?〕
コクリと頷いて実優は台所に行きました。
『栗原君。』
〔ハイッ!〕
栗原は思わず正座をしています。
『正座なんかしなくていいョー、タバコ吸ってもいいって言おうとしただけだから。』
そう言って笑っていました。怒っていない事を知って、栗原はホッとしたのか、急に明るい声になります。
〔あっ、いいの?〕
『うん、正人はいつも構わず吸っているし、私は大丈夫だから・・。』
〔ありがとう。〕
栗原は早速タバコに火を点けました。
『何にもないけどいい?』
〔いいよいいよ、朝ごはんまで、作ってもらうつもり、なかったし・・・実優ちゃんに
二度も作って貰えるなんて、感激だよ!〕
『・・・。』実優は黙っています。 第22回へ続く
2017/08/07
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