中24『愛の絆(きずな)』 第4回
中24『愛の絆(きずな)』 第4回
喫茶〈羽衣〉チェーンのオーナー、諸口惣一(40歳)が巡回に訪れた。いつもは厨房に入り、自ら調理に携わりながら、矢継ぎ早に店員に指示を出す。しかし、今日の諸口は女性店員の動きが見渡せる客席に腰を降ろした。女性店員には、仕事ぶりを監視されているようで余計に緊張感が増す。
『何かご注文はされますか?オーナー・・。』
チーフの指示で、稲沢詩音(しおん28歳)が水をテーブルの上に置いた
〔詩音くんか・・いつ見ても・・・元気そうだな。〕と諸口がくだけた口調で話す。
『はい、それが私の唯一の取り柄ですから・・・』
〔唯一?・・・いいや、君は他にももっと良いものを持っているじゃないか。〕
『なんでしょう?それは?』
〔・・・まあいい、ホットを頼む。〕
諸口の店員に対する話し方は、このようにぶっきら棒で高圧的だ。背を向け、カウンター
へ戻る詩音の後姿を見つめる諸口。詩音は細身で背が高く、それなのにバストとヒップが大きく、括(くび)れたラインにジーンズがぴったりと身に付いている。諸口は、日本経済新聞の株価欄に視線を戻しニタッと笑って鼻を摘む。
詩音はこの店の忙繁時間帯だけに雇われたアルバイト店員です。その日、詩音の仕事が終わる午後2時前に再びオーナーの諸口が現れた。チーフに要件を伝えると、チーフが帰り支度の詩音を呼び止める。[諸口さんがお呼びだよ。]
〔詩音くん・・・今から、俺に付き合ってくれないか、見せたいものがある。〕
『あの今からですか?』
〔ああ、そうだ・・・時間はとらない・・・君にとって良い話だと思う。〕
諸口にそう言われて駐車場に向かった。
オーナーの愛車は白のフェアレディZ これまでに、この助手席に幾人の女性が乗ったことか、すると助手席に座る詩音に、諸口は洒落たサングラスを手渡す。
〔気に入るかどうかは別にして、詩音くんに似合うはずだ。〕
詩音は手にしたサングラスを掛けると、諸口の方に顔を向ける。そこには、鼻筋の通った彫りの深い美人がいた。
『オーナーこれ頂いてもいいんですか?』
〔うん・・・似合ってる。〕
詩音はお客さんとの会話を思い出していた。
「ここのオーナーは金持ちだが・・・女癖が悪くって、それで奥さんに逃げられたんだ。」
『えっ??』
「この頃は、真面目に商売に専念しているようだが・・・なにせ、まだ40歳の若さだし女を卒業するには、まだまだ・・・。」
そして静かに、詩音を乗せた白色のフェアレディが走り出した。
2015/09/20
喫茶〈羽衣〉チェーンのオーナー、諸口惣一(40歳)が巡回に訪れた。いつもは厨房に入り、自ら調理に携わりながら、矢継ぎ早に店員に指示を出す。しかし、今日の諸口は女性店員の動きが見渡せる客席に腰を降ろした。女性店員には、仕事ぶりを監視されているようで余計に緊張感が増す。
『何かご注文はされますか?オーナー・・。』
チーフの指示で、稲沢詩音(しおん28歳)が水をテーブルの上に置いた
〔詩音くんか・・いつ見ても・・・元気そうだな。〕と諸口がくだけた口調で話す。
『はい、それが私の唯一の取り柄ですから・・・』
〔唯一?・・・いいや、君は他にももっと良いものを持っているじゃないか。〕
『なんでしょう?それは?』
〔・・・まあいい、ホットを頼む。〕
諸口の店員に対する話し方は、このようにぶっきら棒で高圧的だ。背を向け、カウンター
へ戻る詩音の後姿を見つめる諸口。詩音は細身で背が高く、それなのにバストとヒップが大きく、括(くび)れたラインにジーンズがぴったりと身に付いている。諸口は、日本経済新聞の株価欄に視線を戻しニタッと笑って鼻を摘む。
詩音はこの店の忙繁時間帯だけに雇われたアルバイト店員です。その日、詩音の仕事が終わる午後2時前に再びオーナーの諸口が現れた。チーフに要件を伝えると、チーフが帰り支度の詩音を呼び止める。[諸口さんがお呼びだよ。]
〔詩音くん・・・今から、俺に付き合ってくれないか、見せたいものがある。〕
『あの今からですか?』
〔ああ、そうだ・・・時間はとらない・・・君にとって良い話だと思う。〕
諸口にそう言われて駐車場に向かった。
オーナーの愛車は白のフェアレディZ これまでに、この助手席に幾人の女性が乗ったことか、すると助手席に座る詩音に、諸口は洒落たサングラスを手渡す。
〔気に入るかどうかは別にして、詩音くんに似合うはずだ。〕
詩音は手にしたサングラスを掛けると、諸口の方に顔を向ける。そこには、鼻筋の通った彫りの深い美人がいた。
『オーナーこれ頂いてもいいんですか?』
〔うん・・・似合ってる。〕
詩音はお客さんとの会話を思い出していた。
「ここのオーナーは金持ちだが・・・女癖が悪くって、それで奥さんに逃げられたんだ。」
『えっ??』
「この頃は、真面目に商売に専念しているようだが・・・なにせ、まだ40歳の若さだし女を卒業するには、まだまだ・・・。」
そして静かに、詩音を乗せた白色のフェアレディが走り出した。
2015/09/20
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