中9〖妻の写真集〗 Vol.14
中9〖妻の写真集〗 Vol.14
約一時間に及んだ妻(杏璃:あんり)の裸の写真撮影は終わりに近づいていました。
〚はい、じゃあこれで終了。お疲れ様でした。〛
小松氏のその言葉で、ついに〖30歳を記念した妻のヌード撮影〗は終わりました。広田君が杏璃に近づき、バスローブをそっとその細い肩にかけます。妻はタオル地のその衣類で素肌を包むとやっと顔を私に向けてくれました。私たちは自然と手を叩き、妻に近づいていきます。
「杏璃、すっごく綺麗だったよ!」
美佳さんの最初の言葉に私(水沢修平31歳)も無言で頷くと、妻は笑顔のまま一筋の涙を流しました。バスローブに身を包んだその姿は何者にもかなわないくらい美しいと感じます。私はこの場で強く杏璃を抱きしめたい気持ちで一杯でした。
『ご、ごめん、なんか、急に涙が出ちゃって・・・。』
妻はバスローブの袖でその涙をぬぐうと、再び笑顔を私たちに顔を向けてくれました。
〚みなさん、今日はありがとうございました。〛
撮影をしてくれた小松氏が私たちに向かって礼を言ってくれました。
「こちらこそありがとうございます。とてもいい記念になります。」
私は小松氏に素直に感謝の意を伝えました。
杏璃から言い出した〖30歳の記念のヌード撮影〗という妻の純粋な思いを歪め、私は自己の性的妄想を募らせて今回の撮影を待ち続けましたが、芸術というのは、そんな不道徳な考えを一蹴してしまうものだと思い知らされました。私はなんて浅はかな人間なんだと、つくづく自分が小さな人間に見えてなりませんでした。宇宙の神秘に匹敵するような妻の芸術美を目の当たりに出来た幸せだけで、私は《つまらない欲求など、もうどうでも良い》と考えていた時です。
〚終わったばかりだと言うのに、とてもこんな事を言うのは恐縮なのですが、少し私の話を聞いてもらえないでしょうか?〛
小松氏の顔が笑顔から真剣なまなざしに変わると、私たちは彼が何を言おうとしているのか、分からないながらも聞かずにはいられませんでした。
〚私はまだまだ無名のカメラマンに過ぎません。いや、この先も無名のまま終わるしがない芸術家でしょう。しかし、杏璃さんを初めてこの目で見たとき、私が追求する芸術を表現できる唯一の女性だと直感しました。そして、今日ファインダー越しに杏璃さんを見て、その直感は確信に変わりました。こんなあつかましいお願いをする立場ではないことは充分に理解しています。どうかみなさん無礼を許してください。〛
小松氏は改まってそう言うと、私たちに頭を下げたのです。
そして、再び頭を上げてから言った小松氏の言葉に、私は胸を打ち抜かれてしまいます。
〚杏璃さんに今から、私の作品のモデルをお願いしたいのです。〛
私たちは、小松氏の突然の申し出に、完全に言葉を失っていました。
「・・・えっ?・・・・な、なんて?・・・」
2015/08/24
約一時間に及んだ妻(杏璃:あんり)の裸の写真撮影は終わりに近づいていました。
〚はい、じゃあこれで終了。お疲れ様でした。〛
小松氏のその言葉で、ついに〖30歳を記念した妻のヌード撮影〗は終わりました。広田君が杏璃に近づき、バスローブをそっとその細い肩にかけます。妻はタオル地のその衣類で素肌を包むとやっと顔を私に向けてくれました。私たちは自然と手を叩き、妻に近づいていきます。
「杏璃、すっごく綺麗だったよ!」
美佳さんの最初の言葉に私(水沢修平31歳)も無言で頷くと、妻は笑顔のまま一筋の涙を流しました。バスローブに身を包んだその姿は何者にもかなわないくらい美しいと感じます。私はこの場で強く杏璃を抱きしめたい気持ちで一杯でした。
『ご、ごめん、なんか、急に涙が出ちゃって・・・。』
妻はバスローブの袖でその涙をぬぐうと、再び笑顔を私たちに顔を向けてくれました。
〚みなさん、今日はありがとうございました。〛
撮影をしてくれた小松氏が私たちに向かって礼を言ってくれました。
「こちらこそありがとうございます。とてもいい記念になります。」
私は小松氏に素直に感謝の意を伝えました。
杏璃から言い出した〖30歳の記念のヌード撮影〗という妻の純粋な思いを歪め、私は自己の性的妄想を募らせて今回の撮影を待ち続けましたが、芸術というのは、そんな不道徳な考えを一蹴してしまうものだと思い知らされました。私はなんて浅はかな人間なんだと、つくづく自分が小さな人間に見えてなりませんでした。宇宙の神秘に匹敵するような妻の芸術美を目の当たりに出来た幸せだけで、私は《つまらない欲求など、もうどうでも良い》と考えていた時です。
〚終わったばかりだと言うのに、とてもこんな事を言うのは恐縮なのですが、少し私の話を聞いてもらえないでしょうか?〛
小松氏の顔が笑顔から真剣なまなざしに変わると、私たちは彼が何を言おうとしているのか、分からないながらも聞かずにはいられませんでした。
〚私はまだまだ無名のカメラマンに過ぎません。いや、この先も無名のまま終わるしがない芸術家でしょう。しかし、杏璃さんを初めてこの目で見たとき、私が追求する芸術を表現できる唯一の女性だと直感しました。そして、今日ファインダー越しに杏璃さんを見て、その直感は確信に変わりました。こんなあつかましいお願いをする立場ではないことは充分に理解しています。どうかみなさん無礼を許してください。〛
小松氏は改まってそう言うと、私たちに頭を下げたのです。
そして、再び頭を上げてから言った小松氏の言葉に、私は胸を打ち抜かれてしまいます。
〚杏璃さんに今から、私の作品のモデルをお願いしたいのです。〛
私たちは、小松氏の突然の申し出に、完全に言葉を失っていました。
「・・・えっ?・・・・な、なんて?・・・」
2015/08/24
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