中9〖妻の写真集〗 Vol.15
中9〖妻の写真集〗 Vol.15
自身のヌード撮影の直後で正常な思考能力のない妻(水沢杏璃:みずさわ・あんり:30歳)は、小松氏のその言葉をとっさに理解することは出来なかったのだと思います。バスローズだけを身につけ、毛の長い絨毯に腰を下ろし、半身を投げ出している妻は、私たちに顔を向け小松氏の言葉の意味を聞いてきました。しばらくの間、私たちは誰もが言葉を失っていました。
小松氏の作品というのは、全裸の男女による性的な表現のポーズが特徴。裸のまま男女が絡み合い、歓喜の表情をあげる女性の妖艶な姿とたくましい男性の勇姿。人間が神から与えられた最大の悦びの姿を表現するものなのです。
長い沈黙の間、その静寂を破ったのは妻の親友である浜崎美佳さんでした。
「杏璃・・・せっかくのチャンスだからやってみたら・・・。」
「う、うん・・・やろうよ!」と夫の浜崎満さん。
「あんたは黙っていて!」
私(水沢修平31歳)はまだ言葉を出す事が出来ませんでした。《妻の杏璃が私の目の前で他の男に抱かれる。》私が妄想していたことが今現実に起ころうとしていました。
私の心臓は今にも口の中から飛び出してきて、その拍動で床を這い回るのではないかと思ったくらいです。
『ちょ、ちょっと待って、今はまだ何も考えられないの・・・少し考えさせて・・・。』
少しずつ正気を取り戻してきている杏璃は、その状況を理解しつつあるようでした。あり得もしない小松氏の申し出を断る言葉が見つからない妻は、慌ててその場を取り繕うために、だた考えさせてと言ったに過ぎませんでしたが、小松氏の情熱はそんな杏璃の思いを知る由もないのです。
〚どうかお考えにならないで下さい。頭で考えてはダメなのです。あなたのその身体、本能のままの女性の美、それが私の求めている究極の美しさなのです。私はそんなあなたを撮りたい。どうか何も考えず、今のあなたの魂を包み隠さず私にぶつけてきて欲しいのです。〛
小松氏はそう言うと、やさしい視線を妻に向けました。妻はゆっくりと小松氏を見上げると、目を見開いたままその申し出に答えることが出来ません。考えてはいけない。小松氏の求める芸術には、人間の思考などじゃまになるだけなのです。答えは早く出さなければいけないということでした。
「わかりました。先生がそこまで想っていただいているのなら・・・。」
私は小松氏に返答ができずに固まっている妻に代わって静かにそう言っていました。
『あ、あなた・・・。』
妻はただ驚いた様子で、その美しい顔を私に向けました。
「杏璃、もう一つ今日の記念を残してもらおう。心の中から湧き出てくる、僕も見たことがない杏璃の本当の姿を・・・。」
私はそう言って妻の手を握りました。
2015/09/30
自身のヌード撮影の直後で正常な思考能力のない妻(水沢杏璃:みずさわ・あんり:30歳)は、小松氏のその言葉をとっさに理解することは出来なかったのだと思います。バスローズだけを身につけ、毛の長い絨毯に腰を下ろし、半身を投げ出している妻は、私たちに顔を向け小松氏の言葉の意味を聞いてきました。しばらくの間、私たちは誰もが言葉を失っていました。
小松氏の作品というのは、全裸の男女による性的な表現のポーズが特徴。裸のまま男女が絡み合い、歓喜の表情をあげる女性の妖艶な姿とたくましい男性の勇姿。人間が神から与えられた最大の悦びの姿を表現するものなのです。
長い沈黙の間、その静寂を破ったのは妻の親友である浜崎美佳さんでした。
「杏璃・・・せっかくのチャンスだからやってみたら・・・。」
「う、うん・・・やろうよ!」と夫の浜崎満さん。
「あんたは黙っていて!」
私(水沢修平31歳)はまだ言葉を出す事が出来ませんでした。《妻の杏璃が私の目の前で他の男に抱かれる。》私が妄想していたことが今現実に起ころうとしていました。
私の心臓は今にも口の中から飛び出してきて、その拍動で床を這い回るのではないかと思ったくらいです。
『ちょ、ちょっと待って、今はまだ何も考えられないの・・・少し考えさせて・・・。』
少しずつ正気を取り戻してきている杏璃は、その状況を理解しつつあるようでした。あり得もしない小松氏の申し出を断る言葉が見つからない妻は、慌ててその場を取り繕うために、だた考えさせてと言ったに過ぎませんでしたが、小松氏の情熱はそんな杏璃の思いを知る由もないのです。
〚どうかお考えにならないで下さい。頭で考えてはダメなのです。あなたのその身体、本能のままの女性の美、それが私の求めている究極の美しさなのです。私はそんなあなたを撮りたい。どうか何も考えず、今のあなたの魂を包み隠さず私にぶつけてきて欲しいのです。〛
小松氏はそう言うと、やさしい視線を妻に向けました。妻はゆっくりと小松氏を見上げると、目を見開いたままその申し出に答えることが出来ません。考えてはいけない。小松氏の求める芸術には、人間の思考などじゃまになるだけなのです。答えは早く出さなければいけないということでした。
「わかりました。先生がそこまで想っていただいているのなら・・・。」
私は小松氏に返答ができずに固まっている妻に代わって静かにそう言っていました。
『あ、あなた・・・。』
妻はただ驚いた様子で、その美しい顔を私に向けました。
「杏璃、もう一つ今日の記念を残してもらおう。心の中から湧き出てくる、僕も見たことがない杏璃の本当の姿を・・・。」
私はそう言って妻の手を握りました。
2015/09/30
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