中17〖救い〗その5回
中17〖救い〗その5回
その4回
体育館には、子供の親たちが、数十人はいて、熱気がこもっていました。いやその熱気は子供たちから出されるものだったのでしょう。面と竹刀を脇において、正座をした子供たち。その正面に、長机があって、指導者らしい男性が数人座っています。女性の指導者もいました。私(五十嵐俊一:いがらし・しゅんいち:39歳)は、その中で一人の男に目を凝らしました。
《間違いない!あの男だ!》私は思わず声を出しそうになるのを、こらえました。その男は、頭ひとつ分は他の指導者よりも高く、座っていても、大柄なのがわかりました。色が黒く、白髪が多い頭髪は、覚えがある。ただ、顔自体をはっきり認識していませんでしたが、私には確信できました。その男の顔には、数箇所、傷の後があったのです。絆創膏を、額に一枚貼っている。私があの男を、襲ったときのものに違いない。間違いない、あの男だ。
男は、厳しい目つきで子供たちを見ています。五十代の前半ぐらいだろうか。ひょっとしたら六十近いかも?歳の割には色黒の顔は血色が良く。いかにも性欲が強そうに見えてしまうのが、異様にムカムカしたのを覚えています。剣道着の胸に、名前が書いてあり。目を凝らしました。〈足立〉とあります。そうか、《あの男は足立というのか。》
私はその時、足立の襲撃に成功した事が、いくら不意を衝いて背後から襲ったといっても、運が良かったのかもしれないと思いました。足立は一目で秀でた身体能力が明らかです。剣道の有段者であることは明白でしたので、正面から向かって勝てる相手ではないと、本能的に察知できました。
運が良かった・・・その運の理由が、私をメラメラと燃えさします。足立は、妻の五十嵐麻貴(いがらし・まき:35歳)との性交で、体力を消耗させていたのだ。私の家に家庭訪問のため来ていながら、自分の教え子の母親である私の妻を激しく抱いていたのを私は目撃する。私の妻を攻めたてたことによって、素人の私にやすやすと襲われるほど体力を消耗していたのだ。
私は館内の妻を捜したら、すぐに見つかりました。まろやかな麻貴の体のラインは、母親たちの集団の中で目立って浮き立っていたから。ぴっちりした黒のノースリーブで、豊満な胸が突き出ている。ウエストは細く、その為、余計にプリプリのお尻が際立っている。
パンティ-ラインが見えそうだ。それに、髪をかき上げるたびに、ノースリーブの腋から下着が見えてしまうじゃないか。《もっと地味なのを着ろよ!》妻は前方を見ていて、それは、息子の剛を見ているのか。それとも、あの男をじっと見ているようにも見えました。たまらなくその時の私はムカムカとしていました。
“メーン!ドーッ!”甲高い声が響く中、妻と息子の剛が向き合っていました。二人とも笑顔でした。剛は、昇級審査を終えた後で、うまくいったのでしょう、満面の笑顔を母親に向けていました。そこに、あの足立がやってきたのです。足立は剛の頭を撫でて、剛もうれしそうな顔を男に向けていました。麻貴は、男に礼を言うようにお辞儀をしています。背の高いその男は、小柄な妻を見下ろしています。私はメラメラと燃えました。麻貴がお辞儀することによって、豊満な胸の谷間が晒されているに間違いないのです。
足立が、妻と剛の元を離れ、他の親子にも話をしながら歩いています。私は燃える目で男を追いました。そして、ハッとしました。足立が、白い紙切れを床に落としたのです。それとも、たまたま袴のポケットから出て落ちたのか分かりませんが、誰も気づくことではありません。私のように男を目で追い続けていなければ。ただ、一人いたのです。それに気づいていたのが私の妻だ。
嘘だろうと、妻の行動に鼓動が速まりました。麻貴は、何気なく男のたどった跡を行き、そして、ごくさりげなく屈むと、紙切れを拾ったのです。誰も、そんな妻の行動を気にするものなどいません。私以外、いや、あの男と私以外です。麻貴は、チラッと、その二つ折りの紙切れを開いて見ると、バッグの中にしまいました。それで私は足立を捜しました。しかし男の姿が見当たりません。その時、剛は剣道仲間の中に入っていました。そして妻が、その場を離れだしたのです。 その6回へ続く
2015/08/23
その4回
体育館には、子供の親たちが、数十人はいて、熱気がこもっていました。いやその熱気は子供たちから出されるものだったのでしょう。面と竹刀を脇において、正座をした子供たち。その正面に、長机があって、指導者らしい男性が数人座っています。女性の指導者もいました。私(五十嵐俊一:いがらし・しゅんいち:39歳)は、その中で一人の男に目を凝らしました。
《間違いない!あの男だ!》私は思わず声を出しそうになるのを、こらえました。その男は、頭ひとつ分は他の指導者よりも高く、座っていても、大柄なのがわかりました。色が黒く、白髪が多い頭髪は、覚えがある。ただ、顔自体をはっきり認識していませんでしたが、私には確信できました。その男の顔には、数箇所、傷の後があったのです。絆創膏を、額に一枚貼っている。私があの男を、襲ったときのものに違いない。間違いない、あの男だ。
男は、厳しい目つきで子供たちを見ています。五十代の前半ぐらいだろうか。ひょっとしたら六十近いかも?歳の割には色黒の顔は血色が良く。いかにも性欲が強そうに見えてしまうのが、異様にムカムカしたのを覚えています。剣道着の胸に、名前が書いてあり。目を凝らしました。〈足立〉とあります。そうか、《あの男は足立というのか。》
私はその時、足立の襲撃に成功した事が、いくら不意を衝いて背後から襲ったといっても、運が良かったのかもしれないと思いました。足立は一目で秀でた身体能力が明らかです。剣道の有段者であることは明白でしたので、正面から向かって勝てる相手ではないと、本能的に察知できました。
運が良かった・・・その運の理由が、私をメラメラと燃えさします。足立は、妻の五十嵐麻貴(いがらし・まき:35歳)との性交で、体力を消耗させていたのだ。私の家に家庭訪問のため来ていながら、自分の教え子の母親である私の妻を激しく抱いていたのを私は目撃する。私の妻を攻めたてたことによって、素人の私にやすやすと襲われるほど体力を消耗していたのだ。
私は館内の妻を捜したら、すぐに見つかりました。まろやかな麻貴の体のラインは、母親たちの集団の中で目立って浮き立っていたから。ぴっちりした黒のノースリーブで、豊満な胸が突き出ている。ウエストは細く、その為、余計にプリプリのお尻が際立っている。
パンティ-ラインが見えそうだ。それに、髪をかき上げるたびに、ノースリーブの腋から下着が見えてしまうじゃないか。《もっと地味なのを着ろよ!》妻は前方を見ていて、それは、息子の剛を見ているのか。それとも、あの男をじっと見ているようにも見えました。たまらなくその時の私はムカムカとしていました。
“メーン!ドーッ!”甲高い声が響く中、妻と息子の剛が向き合っていました。二人とも笑顔でした。剛は、昇級審査を終えた後で、うまくいったのでしょう、満面の笑顔を母親に向けていました。そこに、あの足立がやってきたのです。足立は剛の頭を撫でて、剛もうれしそうな顔を男に向けていました。麻貴は、男に礼を言うようにお辞儀をしています。背の高いその男は、小柄な妻を見下ろしています。私はメラメラと燃えました。麻貴がお辞儀することによって、豊満な胸の谷間が晒されているに間違いないのです。
足立が、妻と剛の元を離れ、他の親子にも話をしながら歩いています。私は燃える目で男を追いました。そして、ハッとしました。足立が、白い紙切れを床に落としたのです。それとも、たまたま袴のポケットから出て落ちたのか分かりませんが、誰も気づくことではありません。私のように男を目で追い続けていなければ。ただ、一人いたのです。それに気づいていたのが私の妻だ。
嘘だろうと、妻の行動に鼓動が速まりました。麻貴は、何気なく男のたどった跡を行き、そして、ごくさりげなく屈むと、紙切れを拾ったのです。誰も、そんな妻の行動を気にするものなどいません。私以外、いや、あの男と私以外です。麻貴は、チラッと、その二つ折りの紙切れを開いて見ると、バッグの中にしまいました。それで私は足立を捜しました。しかし男の姿が見当たりません。その時、剛は剣道仲間の中に入っていました。そして妻が、その場を離れだしたのです。 その6回へ続く
2015/08/23
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