中Ⅱ12 一輪草~追憶~ 第2回
中Ⅱ12 一輪草~追憶~ 第2回
第1回
家にはPCが2台、私(海藤将司:かいどう・まさし:49才)のデスクトップ型と妻(海藤恵梨香:えりか:47才)のノートパソコンがあります。これまで勿論2台ともパスワードは設けてありません。ある日曜日にインターネットで検索する必要が出来ましたが、生憎(あいにく)私のPCの具合が悪く、妻のノートブックを使うことにしました。
起動させたところ、初期画面でパスワードの入力を要求してきます。妻の名前と誕生日、色々組み合わせても開きません。しばらくして諦めました。私は何故パスワードの設定が必要なのか少し疑問に思いましたが、ネット検索は急ぐ事でもなかったので、パスワードの件も次第に忘れてしまいます。
二人きりになってから休みの日は二人で出かける事が多かったのですが、最近、恵梨香が
一人で出かける事が増えだしました。これくらいでは妻を疑う材料にはなりません。私の考えすぎなのでしょう。
まだこの時点では夜遅くなると言うことはありませんでした。ただ平日の日中、妻の自由になる時間はいくらでもあります。しかも今までは妻一人で出かける時は行き先と凡その帰宅時間を告げて出かけていましたが、それも曖昧になってきます。
ある土曜日の10時頃、妻が出かける用意をしています。淡いブルーの少し短めのワンピースを着ていました。それは括(くび)れたウェストラインを強調するように白いベルトが腰に巻きついています。栗色のカールがかった髪が透き通るような襟首に纏わりついていました。日頃見慣れている妻とは別人のようです。
『出かけてきます。お昼ごはんは用意していますから・・。』
「何処へ?」
『うん、範子(のりこ)さんと植物公園へ行くの。』
「昨日言ったけど、夕飯は外で予約してあるからな。」
『はい。5時までには帰ります。』
葉山範子さんなら良く知っています。妻と同年輩で趣味も合い親友のように付き合っています。恵梨香は自分の車で出かけました。私は妻の姿を反芻します。オバサンだと思っていた妻の変わり様。娘と一緒に暮らしていた頃は殆ど自分の身の回りを構う事なく、娘が嫁いでからも喪失感もあらわな妻でした。ホームページを始めてから明るくなったとは言え、今日の妻のあの若やいだ雰囲気はどうでしょう。改めて妻を女として見ている自分に気が付くのです。
何故、妻はノートパソコンにパスワードを設けたのか、そのことを思いだしました。恵梨香が出かけてしまうと、無性に妻のメールを覗いて見たいと言う気持を抑えられなくなってきます。ノートパソコンを起動し、思いついたアルファベット、数字を打ち込みますが、受け付けてくれません。苗字の海藤、名前の恵梨香。私の名前、娘の名前、誕生日あらゆるアルファベットと数字の組み合わせを試して見ましたが、駄目でした。
嫁いだ娘の秋乃が使っていた8畳の間を二つに区切り、私のPCと妻のPCが別個に置かれ、それぞれ独立した作業場になっています。パソコンラックとその脇には整理デスクが置いてありました。私は何となく罪悪感がかすめながらその引き出しを探って見る事にします。すると一番上の引き出しに黒い手帳のようなものがありました。
2016/06/03
第1回
家にはPCが2台、私(海藤将司:かいどう・まさし:49才)のデスクトップ型と妻(海藤恵梨香:えりか:47才)のノートパソコンがあります。これまで勿論2台ともパスワードは設けてありません。ある日曜日にインターネットで検索する必要が出来ましたが、生憎(あいにく)私のPCの具合が悪く、妻のノートブックを使うことにしました。
起動させたところ、初期画面でパスワードの入力を要求してきます。妻の名前と誕生日、色々組み合わせても開きません。しばらくして諦めました。私は何故パスワードの設定が必要なのか少し疑問に思いましたが、ネット検索は急ぐ事でもなかったので、パスワードの件も次第に忘れてしまいます。
二人きりになってから休みの日は二人で出かける事が多かったのですが、最近、恵梨香が
一人で出かける事が増えだしました。これくらいでは妻を疑う材料にはなりません。私の考えすぎなのでしょう。
まだこの時点では夜遅くなると言うことはありませんでした。ただ平日の日中、妻の自由になる時間はいくらでもあります。しかも今までは妻一人で出かける時は行き先と凡その帰宅時間を告げて出かけていましたが、それも曖昧になってきます。
ある土曜日の10時頃、妻が出かける用意をしています。淡いブルーの少し短めのワンピースを着ていました。それは括(くび)れたウェストラインを強調するように白いベルトが腰に巻きついています。栗色のカールがかった髪が透き通るような襟首に纏わりついていました。日頃見慣れている妻とは別人のようです。
『出かけてきます。お昼ごはんは用意していますから・・。』
「何処へ?」
『うん、範子(のりこ)さんと植物公園へ行くの。』
「昨日言ったけど、夕飯は外で予約してあるからな。」
『はい。5時までには帰ります。』
葉山範子さんなら良く知っています。妻と同年輩で趣味も合い親友のように付き合っています。恵梨香は自分の車で出かけました。私は妻の姿を反芻します。オバサンだと思っていた妻の変わり様。娘と一緒に暮らしていた頃は殆ど自分の身の回りを構う事なく、娘が嫁いでからも喪失感もあらわな妻でした。ホームページを始めてから明るくなったとは言え、今日の妻のあの若やいだ雰囲気はどうでしょう。改めて妻を女として見ている自分に気が付くのです。
何故、妻はノートパソコンにパスワードを設けたのか、そのことを思いだしました。恵梨香が出かけてしまうと、無性に妻のメールを覗いて見たいと言う気持を抑えられなくなってきます。ノートパソコンを起動し、思いついたアルファベット、数字を打ち込みますが、受け付けてくれません。苗字の海藤、名前の恵梨香。私の名前、娘の名前、誕生日あらゆるアルファベットと数字の組み合わせを試して見ましたが、駄目でした。
嫁いだ娘の秋乃が使っていた8畳の間を二つに区切り、私のPCと妻のPCが別個に置かれ、それぞれ独立した作業場になっています。パソコンラックとその脇には整理デスクが置いてありました。私は何となく罪悪感がかすめながらその引き出しを探って見る事にします。すると一番上の引き出しに黒い手帳のようなものがありました。
2016/06/03
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