中Ⅱ12 一輪草~追憶~ 第1回
中Ⅱ12 一輪草~追憶~ 第1回
(原題:白き花 投稿者・投稿日:不詳)
一人娘の秋乃が去年大学を出て直ぐに嫁(とつ)ぎ、49才の私(海藤将司:かいどう・まさし)と47才の妻(恵梨香:えりか)の二人暮らしです。娘が居た時は賑やかだったこの家も、二人で暮らすには広すぎた。それで日々の暮らしも何やら寂しいものがあります。
娘と一緒に暮らしていた頃は、秋乃は妻に甘えてばかりいました。その愛娘(まなむすめ)が遠くに嫁いでしまい恵梨香の喪失感は大きく、私は出来る限り妻と過ごせる時間を多く取ろうと心がけていました。妻は花が好きで庭には四季の花々が咲き乱れています。
それで私は妻の喪失感を少しでも埋めてあげようと、妻の花を紹介するホームページ(“四季の花園”)を立ち上げてあげました。ただホームページを立ち上げても直ぐにアクセスがある訳ではありません。それとは別に妻が以前から習いたかったダンス教室にも通うようになりました。しかし、その二つのことか間違いの入り口になろうとは誰が思ったでしょうか。
ホームページを立ち上げたのは、昨年の今頃の事です。季節毎に変わる花の紹介(ページの更新)の方法は妻の恵梨香に教えてあげました。それで2、3か月で妻も慣れたようです。主だったサイトに登録し、随所に検索でヒットする言葉を散りばめました。それでも最初の半年位はホームページへのアクセスが増えても、メールでの問い合わせはありません。寂しそうにしている妻を見かねて、仕方なく、私が訪問者を装ってメールの遣り取りが始まります。
『貴方、今日始めて“四季の花園”にメールを頂いたのよ。』
「そうか、それは良かったな。」
ようやく妻に明るさが戻ってきます。最初は二日に一度、二度と頻度多く遣り取りをしていました。こんな花が好きだとか、あの公園には珍しい花が咲いているとか、花が好きな人の会話でした。その中では日常の会話で私には話さない事も書いてきます。妻の意外な一面も知って、それはそれでときめいたのを覚えています。暫くしてメールの頻度が少なくなり、その内に自然消滅してしまいました。
最近、本物の訪問者からのメールがボツボツと入りだしたのです。
「何か、このところ楽しそうじゃないか?」
『貴方のお陰よ。メールがまた来るようになったの。』
「それで最初に来てくれた人とはまだ続いているのか?」
『うんそれが、だんだん間隔が開いて今はもうメールくれないわ。』
「お前からメールしてあげればいいじゃないか、最初の人なんだろう。」
『うーん、でもその人あまり花の事を知らないみたいなの。花の写真を送ってくれた事もないしね。』
「ふーん、しかし、お前少し冷たいぞ。」
それを聞いて自分の事をないがしろにされたようで、気が滅入りました。しかし、妻(恵梨香:えりか:47才)が明るくなって良かったと思っていました。それと昨年の冬から通い始めたダンス教室の影響もあるのでしょう。
2016/05/31
(原題:白き花 投稿者・投稿日:不詳)
一人娘の秋乃が去年大学を出て直ぐに嫁(とつ)ぎ、49才の私(海藤将司:かいどう・まさし)と47才の妻(恵梨香:えりか)の二人暮らしです。娘が居た時は賑やかだったこの家も、二人で暮らすには広すぎた。それで日々の暮らしも何やら寂しいものがあります。
娘と一緒に暮らしていた頃は、秋乃は妻に甘えてばかりいました。その愛娘(まなむすめ)が遠くに嫁いでしまい恵梨香の喪失感は大きく、私は出来る限り妻と過ごせる時間を多く取ろうと心がけていました。妻は花が好きで庭には四季の花々が咲き乱れています。
それで私は妻の喪失感を少しでも埋めてあげようと、妻の花を紹介するホームページ(“四季の花園”)を立ち上げてあげました。ただホームページを立ち上げても直ぐにアクセスがある訳ではありません。それとは別に妻が以前から習いたかったダンス教室にも通うようになりました。しかし、その二つのことか間違いの入り口になろうとは誰が思ったでしょうか。
ホームページを立ち上げたのは、昨年の今頃の事です。季節毎に変わる花の紹介(ページの更新)の方法は妻の恵梨香に教えてあげました。それで2、3か月で妻も慣れたようです。主だったサイトに登録し、随所に検索でヒットする言葉を散りばめました。それでも最初の半年位はホームページへのアクセスが増えても、メールでの問い合わせはありません。寂しそうにしている妻を見かねて、仕方なく、私が訪問者を装ってメールの遣り取りが始まります。
『貴方、今日始めて“四季の花園”にメールを頂いたのよ。』
「そうか、それは良かったな。」
ようやく妻に明るさが戻ってきます。最初は二日に一度、二度と頻度多く遣り取りをしていました。こんな花が好きだとか、あの公園には珍しい花が咲いているとか、花が好きな人の会話でした。その中では日常の会話で私には話さない事も書いてきます。妻の意外な一面も知って、それはそれでときめいたのを覚えています。暫くしてメールの頻度が少なくなり、その内に自然消滅してしまいました。
最近、本物の訪問者からのメールがボツボツと入りだしたのです。
「何か、このところ楽しそうじゃないか?」
『貴方のお陰よ。メールがまた来るようになったの。』
「それで最初に来てくれた人とはまだ続いているのか?」
『うんそれが、だんだん間隔が開いて今はもうメールくれないわ。』
「お前からメールしてあげればいいじゃないか、最初の人なんだろう。」
『うーん、でもその人あまり花の事を知らないみたいなの。花の写真を送ってくれた事もないしね。』
「ふーん、しかし、お前少し冷たいぞ。」
それを聞いて自分の事をないがしろにされたようで、気が滅入りました。しかし、妻(恵梨香:えりか:47才)が明るくなって良かったと思っていました。それと昨年の冬から通い始めたダンス教室の影響もあるのでしょう。
2016/05/31
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