中Ⅱ5<恋多き妻>VOL.3
中Ⅱ5<恋多き妻>VOL.3
VOL.2
そして一週間程が過ぎて、辛うじて普通に会話が出来るようになった時、妻(義家茜音:よしいえ・あかね:24歳)におもむろに言われます。『こないだわたしに「浮気して来い」と、言ってたよね? あれ、本気?』私(義家真一:よしいえ・しんいち:35歳)は心の内では動揺しながらも、真剣に、言葉を選びながら答えました。「茜音への愛情に変わりはない。ただお前の事が不憫なだけだ、たかがセックスで気分が紛れるのなら俺は寧ろ嬉しいんだ。」
それを茜音は黙って聞いていましたが、ふと寂しそうに笑うと、『貴方の気持ちは分かったけど、私はそんな事はしたくない。絶対にね。』って。そして、この話は何と無く禁句になり、その後から話題に出ることはありませんでした。
それから暫く経ちましたが、私のEDは一向に改善の兆しはない。それに焦る事で更に悪い方向に、という負のスパイラルに陥っていました。医者からは、[肉体的なものではなく、精神的なもの、恐らく流産させてしまった事が遠因である。]と言われます。だが、本人にその自覚が無いだけに出口の見えないトンネルに入った気分でした。
妻に対しての罪悪感も日増しに募っていったのでしょうか、意識せざるとも茜音への接し方にも無意識に変化していたようです。『そんなに自分を卑下しなくても。』『貴方への愛情は何ら変わらないって言ってるでしょ?』『だから貴方は貴方のままでいいんだからね。』類の事をよく言われるようになりました。自分の不甲斐なさから妻の顔色ばかり伺っていたのでしょう。溜息交じりに言われた時など、本当に悲しい気分になりました。
そして八月、蒸し暑いある日です。出先から直帰した私が家に着いたのは午後五時過ぎ。こんな早い時間に帰宅した事はありませんでしたが、夕方になっても三十度を下回らない蒸し暑さに、茜音に連絡することなく家のドアを開けました。
すると、妻の楽しそうな声が聞こえます。誰かと話しているようでした。私は靴を脱いで中に入った時、妻の声が浴室の方から聞こえる事に気付き、そして浴室のドアを開けてしまいました。
目に飛び込んできたのは、スマートフォンを耳に当ててバスタオルを身体に巻いた妻の姿です。茜音は私の存在にまさに飛び上がらんほどに驚き、『ゴメン。』って一言謝るとそこのドアを閉めてしまいました。一瞬、何が起きたのか理解出来ませんでしたが、その時の妻の顔は一生忘れないと思います。
茜音はドアの向こうで密やかな声で電話の人物に謝罪をして切ったようでした。『今日早いですね。連絡してくれればいいのに。』って言って出てきた妻は、既にいつもの妻でした。
「こんな早い時間からシャワー浴びていたの?」
『ええっ、今日暑過ぎて汗かいちゃったから・・・。』
「ふーん。」
そんなとりとめのない会話だったと思います。 VOL.4へ続く
2017/06/21
VOL.2
そして一週間程が過ぎて、辛うじて普通に会話が出来るようになった時、妻(義家茜音:よしいえ・あかね:24歳)におもむろに言われます。『こないだわたしに「浮気して来い」と、言ってたよね? あれ、本気?』私(義家真一:よしいえ・しんいち:35歳)は心の内では動揺しながらも、真剣に、言葉を選びながら答えました。「茜音への愛情に変わりはない。ただお前の事が不憫なだけだ、たかがセックスで気分が紛れるのなら俺は寧ろ嬉しいんだ。」
それを茜音は黙って聞いていましたが、ふと寂しそうに笑うと、『貴方の気持ちは分かったけど、私はそんな事はしたくない。絶対にね。』って。そして、この話は何と無く禁句になり、その後から話題に出ることはありませんでした。
それから暫く経ちましたが、私のEDは一向に改善の兆しはない。それに焦る事で更に悪い方向に、という負のスパイラルに陥っていました。医者からは、[肉体的なものではなく、精神的なもの、恐らく流産させてしまった事が遠因である。]と言われます。だが、本人にその自覚が無いだけに出口の見えないトンネルに入った気分でした。
妻に対しての罪悪感も日増しに募っていったのでしょうか、意識せざるとも茜音への接し方にも無意識に変化していたようです。『そんなに自分を卑下しなくても。』『貴方への愛情は何ら変わらないって言ってるでしょ?』『だから貴方は貴方のままでいいんだからね。』類の事をよく言われるようになりました。自分の不甲斐なさから妻の顔色ばかり伺っていたのでしょう。溜息交じりに言われた時など、本当に悲しい気分になりました。
そして八月、蒸し暑いある日です。出先から直帰した私が家に着いたのは午後五時過ぎ。こんな早い時間に帰宅した事はありませんでしたが、夕方になっても三十度を下回らない蒸し暑さに、茜音に連絡することなく家のドアを開けました。
すると、妻の楽しそうな声が聞こえます。誰かと話しているようでした。私は靴を脱いで中に入った時、妻の声が浴室の方から聞こえる事に気付き、そして浴室のドアを開けてしまいました。
目に飛び込んできたのは、スマートフォンを耳に当ててバスタオルを身体に巻いた妻の姿です。茜音は私の存在にまさに飛び上がらんほどに驚き、『ゴメン。』って一言謝るとそこのドアを閉めてしまいました。一瞬、何が起きたのか理解出来ませんでしたが、その時の妻の顔は一生忘れないと思います。
茜音はドアの向こうで密やかな声で電話の人物に謝罪をして切ったようでした。『今日早いですね。連絡してくれればいいのに。』って言って出てきた妻は、既にいつもの妻でした。
「こんな早い時間からシャワー浴びていたの?」
『ええっ、今日暑過ぎて汗かいちゃったから・・・。』
「ふーん。」
そんなとりとめのない会話だったと思います。 VOL.4へ続く
2017/06/21
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