長G〖救いの手を〗第31回
長G〖救いの手を〗第31回
第30回 2018/08/29
酔い潰れ眠る妻(高坂彩矢:こうさか・あや:32歳)を、寝室に抱きかかえるようにして運んだ私(高坂正文:こうさか・まさふみ:37歳)は、カラカラに渇いた喉を潤す為に、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、喉を鳴らしながら一気に飲み干しました。
「フゥ・・・。」
ドカッとソファに座り込み一心地ついた私でしたが、瞼には妻の変貌したヴァギナが焼き付き、鼻腔の奥には、あの目眩がする程に濃厚な、牝のフェロモン臭が染み付いたままです。
《もう彩矢は私の手の届かない場所に居るのかも知れない・・・。》
一心地ついた気の緩みなのでしょうか?それとも脳裏に残る先程までの妻の姿、鼻腔に染み付いた匂いが、妻の情事をより鮮明に想像させたからなのでしょうか?私は不覚にも涙が零れ落ちていました。感情が高ぶりを抑えきれなくて慟哭するような鳴咽を漏らす訳でも無く、無表情な頬を、只、只、涙だけがとめどなく伝わって行きます。
時計を見ると既に時刻は23時を回っていました。私は無様に流れる涙を拭い、テーブルの上に置いたボイスレコーダーに目をやります。
《きっと、残酷な結果になるのだろうな・・・。》
それが分かっているのに聞かずにおれない私は、イヤホンを耳に嵌め、折れつつある心に鞭を入れるようにしてボイスレコーダーの再生ボタンを押したのでした。
折れそうになっている心に鞭を入れるようにしてボイスレコーダーの再生ボタンを押した私でした。そして、イヤホンからは、いきなりの妻の声が聞こえてきます。
『ごめんね・・・。‥今、出掛けたわ・・・。うん・・・。今降りて行くね・・・。』
彩矢の慌ただしく出掛ける様子が伝わって来ました。
カツ‥ッ‥、カツ‥ッカツ‥ッ‥ カツ‥ッ‥、パンプスがマンションの廊下を打つ音が響きます。やがて低く唸るようなエレベーターの下降する音が聞こえて、ぐもったような停止する音・・・。エレベーターの扉が開きました。パパァァー‥ンッ‥ッ‥。、その瞬間、イヤホン越しに鼓膜を裂くように響くクラクションの音がします。私には、自宅マンションの地下駐車場で目撃した驚愕のシーンが鮮明に思い出されていました。
ガチャッ‥ッ‥ バタン‥ッ・・・。高級外車の助手席側のドアの閉開する音。
〔おはよう‥。〕
聞き覚えのある望月(淳也:もちづき・じゅんや:46歳)統括部長の声がした。
『うん‥おはよう‥ごめんね‥遅くなっちゃったね‥。』
〔いいよ気にしなくても‥さて行くか‥。〕
地下駐車場にタイヤの鳴る音がして、望月の高級外車は発進したようだ。
第32回へ続く
2018/08/30
第30回 2018/08/29
酔い潰れ眠る妻(高坂彩矢:こうさか・あや:32歳)を、寝室に抱きかかえるようにして運んだ私(高坂正文:こうさか・まさふみ:37歳)は、カラカラに渇いた喉を潤す為に、冷蔵庫から冷えた缶ビールを取り出し、喉を鳴らしながら一気に飲み干しました。
「フゥ・・・。」
ドカッとソファに座り込み一心地ついた私でしたが、瞼には妻の変貌したヴァギナが焼き付き、鼻腔の奥には、あの目眩がする程に濃厚な、牝のフェロモン臭が染み付いたままです。
《もう彩矢は私の手の届かない場所に居るのかも知れない・・・。》
一心地ついた気の緩みなのでしょうか?それとも脳裏に残る先程までの妻の姿、鼻腔に染み付いた匂いが、妻の情事をより鮮明に想像させたからなのでしょうか?私は不覚にも涙が零れ落ちていました。感情が高ぶりを抑えきれなくて慟哭するような鳴咽を漏らす訳でも無く、無表情な頬を、只、只、涙だけがとめどなく伝わって行きます。
時計を見ると既に時刻は23時を回っていました。私は無様に流れる涙を拭い、テーブルの上に置いたボイスレコーダーに目をやります。
《きっと、残酷な結果になるのだろうな・・・。》
それが分かっているのに聞かずにおれない私は、イヤホンを耳に嵌め、折れつつある心に鞭を入れるようにしてボイスレコーダーの再生ボタンを押したのでした。
折れそうになっている心に鞭を入れるようにしてボイスレコーダーの再生ボタンを押した私でした。そして、イヤホンからは、いきなりの妻の声が聞こえてきます。
『ごめんね・・・。‥今、出掛けたわ・・・。うん・・・。今降りて行くね・・・。』
彩矢の慌ただしく出掛ける様子が伝わって来ました。
カツ‥ッ‥、カツ‥ッカツ‥ッ‥ カツ‥ッ‥、パンプスがマンションの廊下を打つ音が響きます。やがて低く唸るようなエレベーターの下降する音が聞こえて、ぐもったような停止する音・・・。エレベーターの扉が開きました。パパァァー‥ンッ‥ッ‥。、その瞬間、イヤホン越しに鼓膜を裂くように響くクラクションの音がします。私には、自宅マンションの地下駐車場で目撃した驚愕のシーンが鮮明に思い出されていました。
ガチャッ‥ッ‥ バタン‥ッ・・・。高級外車の助手席側のドアの閉開する音。
〔おはよう‥。〕
聞き覚えのある望月(淳也:もちづき・じゅんや:46歳)統括部長の声がした。
『うん‥おはよう‥ごめんね‥遅くなっちゃったね‥。』
〔いいよ気にしなくても‥さて行くか‥。〕
地下駐車場にタイヤの鳴る音がして、望月の高級外車は発進したようだ。
第32回へ続く
2018/08/30
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