短Ⅳ15〚情婦〛第12話
妻(服部有紀子:はっとり・ゆきこ:37歳)には席を外させて、私(服部則之:はっとり・のりゆき:41歳)と石井卓司(いしい・たくじ:41歳)で話を続ける。石井の転勤先の自然環境、取引先の名物社長の悪口、今の若者のだらしなさ、いろんな話で盛り上がった。有紀子もキッチンから時々口を挟んだりする。石井が持参したワインも残り少なくなったころに私がこう言った。
「俺ワイン買ってくるよ。」
〔え? もうなくなったの。だったらそろそろ失礼するよ、今日はありがとう。〕
「何言ってるんだ。まだいいだろう。俺が買ってくるから。」
『だったら私が・・・。』
「いや、もう遅いから俺が行ってくる、君はこっちきて相手してくれ。」
それは私からの合図だった。有紀子は洗い終わった皿を拭く手を思わず止める。私が本気だったということを知って驚いたのか、怖じ気づいたのか、どちらでもいい。このあと2人がどうなろうと2人に任せるしかない。私としては2人が昔の話にけりをつけ、最後の思い出にセックスをしてもらいたいと期待していた。
《しかし、律儀な石井が私の家の中で妻を抱くだろうか? 妻にしても、石井を目の前にして、本当に抱いてくれと言えるだろうか?》私の妄想の中では、2人が激しいセックスをしているシーンを何度も見てきたが、果たしてそれが現実にどう動いていくのかは全く別の問題だ。そう簡単に2人の間の空白が埋まるわけがない。やはり現実的には私の妄想実現は難しいだろう。
冷静にそう考えてみると、私の中の別の自分が「ほっ」と胸をなで下ろした。ところが、その途端、さっきまで固く勃起していたものがみるみる萎えていくのが分かるた。やはりだめだ。それじゃ興奮できない。今よりもっと妻を愛するためにも、今日はなんとしても有紀子を石井に抱かせたかった。石井に妻を抱かせ、妻の体の中に精液が注がれ、あとで脚を開いて確認をする。たしかに有紀子が私以外の男に抱かれたということを。
そして、妻が私以外の男と何をしたのか一つひとつ聞き出し、私の記憶にとどめる。《石井に抱かれてどのくらい感じたのか? 石井のは私のよりどのくらい大きかったのか? 全部聞き出したい。聞き出して嫉妬し、激しく妻を抱きたい。》私はそう思っていた。
席を立つとき、私は石井に言う。
「有紀子はまだ君とのことを引きずっている。俺は妻から連絡があるまで戻らない。あとは有紀子の願いを聞いてやってくれ。俺も了承済みだから大丈夫だ。」
〔おい、ちょっと待てよ。なんだそれ・・・。〕
石井は言いかけたが、私は玄関に向かって行き靴を履いた。 第13話へ
20190222
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