名E〖幸せを求めて〗 第17回
名E〖幸せを求めて〗 第17回
3カ月を過ぎると胸もふくよかになり、妻の体が母親になる準備を始めていました。お腹の子供に良くないから…ということでセックスは、全くさせてもらえなくなりましたが、相変わらず妻の美月は手で私を翻弄しながら慰めてくれます。美月は菊池がいなくなっても自らの指で充分な満足を得ているようです。真夜中の、秘密の一人遊びの音も頻繁になりました。これも相変わらず私は気づかないフリをしてあげていました。
しかし妊娠5カ月に入る頃、悲劇が起こりました。義父が病気で入院してしまったのです。下手をすると命に関わる大病で、すっかり気弱になった義父は生まれてくる子供が男の子であるようにと、そのことばかり気にするようになり、妻のかかっている医師が義父の懇意にしていた人物であったため、とうとうお腹の子供の性別を無理やり聞き出してしまったのです。
子供は女の子でした。そして錯乱していた義父は、私たちに堕胎を命じました。義父の口から我が子が女であることを告げられ、堕胎を命じられた私たちは大変なショックを受けます。もちろん生まれてくる子供が男であれ、女であれ私たちの愛情に変わりはありません。考え直すようにお願いしましたが、完全に自分を見失っている義父は断固中絶するようにと言って聞き入れてもらえません。
私たちは「とにかく考えさせてください。返事を保留にしてくれないでしょうか、」と、なんとかその場しのぎでごまかしましたが、義父をどうすることもできず頭を抱えながら日々だけが過ぎて行きました。
そんなある日、仕事中に私の携帯が鳴りました。自宅からの着信ですが、すぐに切れてしまいました。胸騒ぎを覚えた私はすぐにかけなおしますが誰も出ません。美月の携帯にもかかりません。職場の上司に早退を告げて、急いで自宅に向かいました。誰もいない部屋のテーブルに書き置きが1枚あります。
男の字で、《病院(産科婦人科)に行っているので心配しないよう。》に、だけ書いてありました。それで私は急いで病院に向かいました。病院に着くと、待合室で三人の背広の男に囲まれた妻の美月がべそをかいて(今にも泣きだしそうな顔になる)います。
男たちを無視して妻のそばに行くと、『無理やり中絶手術を受けさせるために連れて来られた。』と言うではありませんか。私は看護師と男達に、「自分は夫であり妻に堕胎をさせるつもりはない。」と怒鳴りつけるように告げると強引に妻を連れて帰宅しました。
危ういところで強制堕胎を免れた妻の美月は家に着くなり私の胸の中で大声をあげて泣きじゃくりました。怒りに震える私は少しして妻の手を引きタクシーに乗り込むと義父の入院している病院へと急ぎました。
病室に入ると、怒り狂って怒鳴り込む私よりも、嗚咽をあげて泣きじゃくる美月を見て義父はショックを受けたようです。どうやら強制堕胎は義父の部下たちの勝手な行動だということが、見舞いに来ていた会社の者の調べですぐにわかりました。病ですっかり気弱になった義父がうわごとでまで男の子でなくては認められないと言い続けているのをみかねての行動だったそうです。
このまま流産してしまうのではないかというほどの嗚咽をあげる妻の姿に、義父はいきなり自分の腕から点滴を引きぬくと、美月と私の足元に土下座をすると、泣きながらわびてくれました。思えば、義父も女の子(美月)一人しか子供を授からず、過去に相当辛い思いをしてきたに違いありません。そして私たちの結婚および結婚生活に一族からの非難の
類がまったく届いて来ないのは、きっと義父が影で必死に守ってくれていたのでしょう。
そんな辛い思いの連続が、錯乱した義父の心の隙に黒い影を入り込ませてしまったのでしょうか?傲慢で誇り高い男が涙を流して土下座をしている…。私は自分こそ詫びたいほどの気持ちで義父を許すしかありませんでした。
2015/01/28
3カ月を過ぎると胸もふくよかになり、妻の体が母親になる準備を始めていました。お腹の子供に良くないから…ということでセックスは、全くさせてもらえなくなりましたが、相変わらず妻の美月は手で私を翻弄しながら慰めてくれます。美月は菊池がいなくなっても自らの指で充分な満足を得ているようです。真夜中の、秘密の一人遊びの音も頻繁になりました。これも相変わらず私は気づかないフリをしてあげていました。
しかし妊娠5カ月に入る頃、悲劇が起こりました。義父が病気で入院してしまったのです。下手をすると命に関わる大病で、すっかり気弱になった義父は生まれてくる子供が男の子であるようにと、そのことばかり気にするようになり、妻のかかっている医師が義父の懇意にしていた人物であったため、とうとうお腹の子供の性別を無理やり聞き出してしまったのです。
子供は女の子でした。そして錯乱していた義父は、私たちに堕胎を命じました。義父の口から我が子が女であることを告げられ、堕胎を命じられた私たちは大変なショックを受けます。もちろん生まれてくる子供が男であれ、女であれ私たちの愛情に変わりはありません。考え直すようにお願いしましたが、完全に自分を見失っている義父は断固中絶するようにと言って聞き入れてもらえません。
私たちは「とにかく考えさせてください。返事を保留にしてくれないでしょうか、」と、なんとかその場しのぎでごまかしましたが、義父をどうすることもできず頭を抱えながら日々だけが過ぎて行きました。
そんなある日、仕事中に私の携帯が鳴りました。自宅からの着信ですが、すぐに切れてしまいました。胸騒ぎを覚えた私はすぐにかけなおしますが誰も出ません。美月の携帯にもかかりません。職場の上司に早退を告げて、急いで自宅に向かいました。誰もいない部屋のテーブルに書き置きが1枚あります。
男の字で、《病院(産科婦人科)に行っているので心配しないよう。》に、だけ書いてありました。それで私は急いで病院に向かいました。病院に着くと、待合室で三人の背広の男に囲まれた妻の美月がべそをかいて(今にも泣きだしそうな顔になる)います。
男たちを無視して妻のそばに行くと、『無理やり中絶手術を受けさせるために連れて来られた。』と言うではありませんか。私は看護師と男達に、「自分は夫であり妻に堕胎をさせるつもりはない。」と怒鳴りつけるように告げると強引に妻を連れて帰宅しました。
危ういところで強制堕胎を免れた妻の美月は家に着くなり私の胸の中で大声をあげて泣きじゃくりました。怒りに震える私は少しして妻の手を引きタクシーに乗り込むと義父の入院している病院へと急ぎました。
病室に入ると、怒り狂って怒鳴り込む私よりも、嗚咽をあげて泣きじゃくる美月を見て義父はショックを受けたようです。どうやら強制堕胎は義父の部下たちの勝手な行動だということが、見舞いに来ていた会社の者の調べですぐにわかりました。病ですっかり気弱になった義父がうわごとでまで男の子でなくては認められないと言い続けているのをみかねての行動だったそうです。
このまま流産してしまうのではないかというほどの嗚咽をあげる妻の姿に、義父はいきなり自分の腕から点滴を引きぬくと、美月と私の足元に土下座をすると、泣きながらわびてくれました。思えば、義父も女の子(美月)一人しか子供を授からず、過去に相当辛い思いをしてきたに違いありません。そして私たちの結婚および結婚生活に一族からの非難の
類がまったく届いて来ないのは、きっと義父が影で必死に守ってくれていたのでしょう。
そんな辛い思いの連続が、錯乱した義父の心の隙に黒い影を入り込ませてしまったのでしょうか?傲慢で誇り高い男が涙を流して土下座をしている…。私は自分こそ詫びたいほどの気持ちで義父を許すしかありませんでした。
2015/01/28
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