中6〖不倫の代償〗第1章4話
中6〖不倫の代償〗第1章4話
当日の朝私はいつもの時間に家を出て、妻の会社の最寄り駅の公衆トイレの影から千遥(ちはる)の到着を待つ。この時点では、また素行調査の域は脱していないが、8時45分頃に着いた電車から妻が降りてきてからは、ただの挙動不審の男になっていた。
日帰りの添乗なので、妻の千遥(ちはる)は軽装で荷物も手提げのバック1つだけ。駅から真っ直ぐ南に歩き、2目の信号を渡って左に曲がって200メートルほど行ったところに妻の会社がある。
時計を見て歩き出した千遥は、会社の方向へ歩き出したが、1つ目の信号を左に曲がり、目貫通りの一本手前の道路に入ったのでした。その道路は一方通行で、角から私が覗く50メートル程向こうでしょうか、一台のグレーの高級国産車がこちらを向いて止まっており、千遥がその車に乗り込みました。
車はおそらく数秒後には、私の居るこの交差点を通過していくだろう、そう思ったとき、重圧に押しつぶされそうになりながら、車内の構成を瞬時に想像していました。得意先の役員が数名、それに妻が同行で車の大きさから多くても5名位、まさか二人だけということは無いようにと願う自分も居ました。
考えているうちに、耳に車のエンジン音が聞こえて、その車はスピード落とし左折して行きます。そのとき車の中には、妻が助手席に一人、後部座席には誰も居らず、運転席には私の心のどこかで、そうはあってほしくない人間の顔がありました。そうです、やっぱり勝谷です。
左折しようと減速した車の助手席では、千遥が前髪で顔を隠すような仕草して俯いています。自分の顔を他人に見られたくないという行動に他ならない。一瞬私は吐き気を覚え、何故かは分かりませんが次の瞬間、冷や汗と同時に歩道の上にしゃがみ込んでいました。その日曜日を境に、私はより確信に迫ろうとするのではなく、逆に妻を自分から遠ざけるようになって行ったのです。
時折、通る人たちの冷たい視線を感じながらも、しばらくの間動けずにいた私は、体の自由が戻ると朝近くの駐車場に止めてあった車まで着くと、鉛のような重さを感じる体を、投げ出すように運転席に着いた。
しばらくそのままの状態が続き、その間に何本のタバコを吸ったのであろうか、手にしていた箱にはもう一本も残っていなかった。駐車場を出た私は、すぐ隣のタバコ屋の前に車を止めると、店先の販売機には目もくれず、店の中に入りあのタバコを注文していた。
おつりを受け取るとき、手からこぼれる小銭の感覚に気づきはしたが、しゃがみ込んで拾い上げる気力もない私は其のまま車へ向かった。後ろからタバコ屋の店員の呼び止める声がしたが、振り返ることもなく車に乗り込み走らせていた。
タバコ屋を出てから何分経ったであろうか、私の車は港の防波堤の所に移動していた。 最初私は思考のないマネキンのように海の方を身動きもしないで見つめているだけでしたが、時間が経つにつれて数時間前のあの光景が脳裏に蘇(よみがえ)りましたが、思考回路に命令を与えても、考えの整理がつきません。
その時、車の後ろのほうから子供の声が聞こえたような気がして、ルームミラーで声の主を探してみる。ミラーの端からその主は現れた、年のころは4才位だろうか、補助輪の付いた自転車を必死にこいでいた。
その自転車がミラーの反対側に消えるころ、両親らしき二人連れが、満面の笑みを浮かべその子に視線を送っている姿が、目に入って来る。次の瞬間私の目からは涙が溢れていたが嗚咽(おえつ)することもなく、両頬に一本の線として流れているだけでした。
2015/03/10
当日の朝私はいつもの時間に家を出て、妻の会社の最寄り駅の公衆トイレの影から千遥(ちはる)の到着を待つ。この時点では、また素行調査の域は脱していないが、8時45分頃に着いた電車から妻が降りてきてからは、ただの挙動不審の男になっていた。
日帰りの添乗なので、妻の千遥(ちはる)は軽装で荷物も手提げのバック1つだけ。駅から真っ直ぐ南に歩き、2目の信号を渡って左に曲がって200メートルほど行ったところに妻の会社がある。
時計を見て歩き出した千遥は、会社の方向へ歩き出したが、1つ目の信号を左に曲がり、目貫通りの一本手前の道路に入ったのでした。その道路は一方通行で、角から私が覗く50メートル程向こうでしょうか、一台のグレーの高級国産車がこちらを向いて止まっており、千遥がその車に乗り込みました。
車はおそらく数秒後には、私の居るこの交差点を通過していくだろう、そう思ったとき、重圧に押しつぶされそうになりながら、車内の構成を瞬時に想像していました。得意先の役員が数名、それに妻が同行で車の大きさから多くても5名位、まさか二人だけということは無いようにと願う自分も居ました。
考えているうちに、耳に車のエンジン音が聞こえて、その車はスピード落とし左折して行きます。そのとき車の中には、妻が助手席に一人、後部座席には誰も居らず、運転席には私の心のどこかで、そうはあってほしくない人間の顔がありました。そうです、やっぱり勝谷です。
左折しようと減速した車の助手席では、千遥が前髪で顔を隠すような仕草して俯いています。自分の顔を他人に見られたくないという行動に他ならない。一瞬私は吐き気を覚え、何故かは分かりませんが次の瞬間、冷や汗と同時に歩道の上にしゃがみ込んでいました。その日曜日を境に、私はより確信に迫ろうとするのではなく、逆に妻を自分から遠ざけるようになって行ったのです。
時折、通る人たちの冷たい視線を感じながらも、しばらくの間動けずにいた私は、体の自由が戻ると朝近くの駐車場に止めてあった車まで着くと、鉛のような重さを感じる体を、投げ出すように運転席に着いた。
しばらくそのままの状態が続き、その間に何本のタバコを吸ったのであろうか、手にしていた箱にはもう一本も残っていなかった。駐車場を出た私は、すぐ隣のタバコ屋の前に車を止めると、店先の販売機には目もくれず、店の中に入りあのタバコを注文していた。
おつりを受け取るとき、手からこぼれる小銭の感覚に気づきはしたが、しゃがみ込んで拾い上げる気力もない私は其のまま車へ向かった。後ろからタバコ屋の店員の呼び止める声がしたが、振り返ることもなく車に乗り込み走らせていた。
タバコ屋を出てから何分経ったであろうか、私の車は港の防波堤の所に移動していた。 最初私は思考のないマネキンのように海の方を身動きもしないで見つめているだけでしたが、時間が経つにつれて数時間前のあの光景が脳裏に蘇(よみがえ)りましたが、思考回路に命令を与えても、考えの整理がつきません。
その時、車の後ろのほうから子供の声が聞こえたような気がして、ルームミラーで声の主を探してみる。ミラーの端からその主は現れた、年のころは4才位だろうか、補助輪の付いた自転車を必死にこいでいた。
その自転車がミラーの反対側に消えるころ、両親らしき二人連れが、満面の笑みを浮かべその子に視線を送っている姿が、目に入って来る。次の瞬間私の目からは涙が溢れていたが嗚咽(おえつ)することもなく、両頬に一本の線として流れているだけでした。
2015/03/10
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