中6〖不倫の代償〗第1章6話
中6〖不倫の代償〗第1章6話
『珍しいね、仕事早かったんだ。』
「あぁ、たまたま仕事が早く終わったから、遅かったな、義母さんに聞いたけど、道路込んでいたんだって、それにしても随分掛かったな!」私(篠田隆弘)が答える。
よく見ると、妻の千遥(ちはる)はアルコールが入っているのか、頬が少し赤らんでいるように私には見えた。クローゼットを開け着替えを始めた妻が後ろ向きのまま、聞いてもいない一日の行動を説明し始める。千遥が説明し始めてすぐに、私の心の何処か片隅に有った小さな希望がもろくも崩れ去った。
『一日中バスに揺られて疲れちゃった。』
「バスで行ったのか?」
『そう、お客さんの会社の送迎バスで、事務所に迎えに来てもらってね!』
顔が青ざめていくのが自分で解ります。それでも妻は、クローゼットの方を向いたまま、子供に物語を読み聞かすような口調で話を続けました。
『旅なれた人たちだから、下見というより、飲み会みたいなものね。一応、予定の場所は見たんだけど、帰りのドライブインで、宴会になっちゃって、出るのが遅くなったら、渋滞に巻き込まれちゃって。』
何も知らない、以前の私ならば、「大変だったな。ご苦労様。」の一言ぐらい言っていたのでしょうが・・・。
「それで君も飲んできたのか?顔が赤いぞ、酒が強いお前が顔に出るんだから、随分飲んだんだな?」
『お得意さんだもの、進められれば多少飲むわよ!』
「コンパニオンじゃあるまいし、顔に出るくらい飲まなくても。」
言葉に棘のある口調になり、エスカレートする自分を抑えきれなくなり始めていました。その時パジャマに着替えた妻の千遥が、こちらを振り向き、謝罪した。
『ごめんなさい、これから気を付けるわ。』
そう言われると、私も次の言葉を飲み込むしかありません。
鏡台に座り、化粧を落とした妻はベッドに入ってきた、その時、窓に置いたタバコに気づき、
『どうしたの、このタバコ?』
「なんとなく、吸いたくなって。それより・・。」
『ごめんなさい、今日は疲れたからお先に眠るね。』
「風呂は入らないのか?」
『明日シャワー浴びるわ、お休みなさい。」
アルコールの勢いも手伝ってか、妻の千遥はすぐに寝息を立てて眠ってしまう。寝息を立てる妻に体を寄せみると、自分もさっきガラムを吸った為か、識別はしにくいがタバコのにおいと、微かでは有るが石鹸の匂いがした。一日バスで揺られて働いて来た人間が、昨日の夜の石鹸の匂いを維持できるはずも無く、風呂に入らずにすむ理由は、私にとって想像する必要も無かった。
2015/05/18
『珍しいね、仕事早かったんだ。』
「あぁ、たまたま仕事が早く終わったから、遅かったな、義母さんに聞いたけど、道路込んでいたんだって、それにしても随分掛かったな!」私(篠田隆弘)が答える。
よく見ると、妻の千遥(ちはる)はアルコールが入っているのか、頬が少し赤らんでいるように私には見えた。クローゼットを開け着替えを始めた妻が後ろ向きのまま、聞いてもいない一日の行動を説明し始める。千遥が説明し始めてすぐに、私の心の何処か片隅に有った小さな希望がもろくも崩れ去った。
『一日中バスに揺られて疲れちゃった。』
「バスで行ったのか?」
『そう、お客さんの会社の送迎バスで、事務所に迎えに来てもらってね!』
顔が青ざめていくのが自分で解ります。それでも妻は、クローゼットの方を向いたまま、子供に物語を読み聞かすような口調で話を続けました。
『旅なれた人たちだから、下見というより、飲み会みたいなものね。一応、予定の場所は見たんだけど、帰りのドライブインで、宴会になっちゃって、出るのが遅くなったら、渋滞に巻き込まれちゃって。』
何も知らない、以前の私ならば、「大変だったな。ご苦労様。」の一言ぐらい言っていたのでしょうが・・・。
「それで君も飲んできたのか?顔が赤いぞ、酒が強いお前が顔に出るんだから、随分飲んだんだな?」
『お得意さんだもの、進められれば多少飲むわよ!』
「コンパニオンじゃあるまいし、顔に出るくらい飲まなくても。」
言葉に棘のある口調になり、エスカレートする自分を抑えきれなくなり始めていました。その時パジャマに着替えた妻の千遥が、こちらを振り向き、謝罪した。
『ごめんなさい、これから気を付けるわ。』
そう言われると、私も次の言葉を飲み込むしかありません。
鏡台に座り、化粧を落とした妻はベッドに入ってきた、その時、窓に置いたタバコに気づき、
『どうしたの、このタバコ?』
「なんとなく、吸いたくなって。それより・・。」
『ごめんなさい、今日は疲れたからお先に眠るね。』
「風呂は入らないのか?」
『明日シャワー浴びるわ、お休みなさい。」
アルコールの勢いも手伝ってか、妻の千遥はすぐに寝息を立てて眠ってしまう。寝息を立てる妻に体を寄せみると、自分もさっきガラムを吸った為か、識別はしにくいがタバコのにおいと、微かでは有るが石鹸の匂いがした。一日バスで揺られて働いて来た人間が、昨日の夜の石鹸の匂いを維持できるはずも無く、風呂に入らずにすむ理由は、私にとって想像する必要も無かった。
2015/05/18
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