短Ⅱ18【封印】第6回
短Ⅱ18【封印】第6回
第5回 ←
≪滝の音が凄かった。≫
≪今から、ご飯です。≫
刻々と報告が続く。けれども、次第にメールの周期も長くなって来ました。
片岡儀一と妻(朝倉未来:みき:30歳)・・・どんな風なのか、私(朝倉省吾:しょうご:35歳)は気になって仕方ありません・・・。午後2時半ごろ・・・。1時間前にメールが届いたのが最後です・・。そんな状態で、部屋に一人でいると、いろんなことが頭をグルグルと駆け巡ります。
片岡は、女性の扱いに長け、私より何枚も上であることは明らかだ・・・。それに対して、狼
の前の羊のような妻の未来は何もされないでいるだろうか・・?未来は片岡に言いくるめら
れるのじゃないのか・・・?どう考えても・・・私が・・・それを望んでいるはずなのに、後味が悪いのは何故だ・・・。
私は、後悔と興奮の間を行ったりきたりしています。そんな状態のため、私は二日酔いが抜けたにも関わらず、自販機で買った缶ビールのプルタブを開けました。外を見ると、雨が降り出しています。しばらくすると、小降りだった雨は、やがて激しくなり、ザーッと周囲の音を掻き消しました。
雨か・・・妻の未来は大丈夫だろうか・・・。そう思いながら、気がつくと私はたった2本の缶ビールでいつのまにか眠っていました。そして、午前10時から7時間後の午後5時前に、
何の前触れもなく妻は帰ってきました。
『ただいま。』
未来の声に私は目を覚まします。
「あ、おかえり。片岡さんと一緒に帰ってきたの?」
『うん・・。』
妻は、すこし疲れていたようなので、それ以上、こちらから何かを訊けるような感じでは
ありませんでした。《嫌な目にでもあったのだろうか?・・・》と、そんなことを思わせます。
『ちょっと、お風呂に行ってくるね。』
未来はそういい残して、部屋を出て行きました。今日の事を訊きだすにしても、妻には整理する時間が必要なのだと私は待つことにしました。
未来は、温泉から戻ってきても、しばらく無言でいました。そして・・・。
『話さなきゃ、駄目かな?』
はにかみながら、見上げるように、私の顔を見ました。
「嫌ならいいけど・・・。」
一瞬の間のあと、妻は決心して、旅館を出てからどこへ行ったのかを順を追いながら話し出しました。今日あった出来事を、再び、流れに沿って追体験するかのように・・・。まず、妻と片岡は、タクシーに乗って5分のところにある滝を見に行ったそうです。
タクシーの中で、未来は、片岡さんの傍にいながら、詰められない心理的な距離があって、戸惑っていたと言いました。最初のメール(≪滝の音が凄かった。≫)は、その戸惑うバツの悪さから、私にメールでもしたのでしょう・・・。そして、滝を見終えた後は、今来た道
を戻り、旅館を通り過ぎて、山間の店で食事をしたそうです。それで、その頃には、打ち解けて、腕をさえ組んでいたというのです。
腕を組んだということに、私は驚いて、聞き直してしまいました。『すこし・・・ふざけてだよ・・・だって・・・。』と未来はうつむき加減で、申し訳なさそうにいいます。『それは、片岡さんの女性の扱いのうまさのせいだよ。』と、私に話しました。片岡さんのエスコートの上手さ、妻を持ち上げる言葉の数々・・・。そうされると、『まるで女優にでもなったかのような気持ちになったわ。』といいます。
また、褒め言葉の数々は、片岡が発すると、明らかに嘘くさい言葉も、嘘では聞こえなくなっていったそうです。妻は、分かっていても、嬉しくなったそうです。私(朝倉省吾:しょうご:35歳)はこんなに未来をウキウキさせる男性がいるのだなと思ったのです。
そういうことに免疫が少ない妻(朝倉未来:みき:30歳)にとっては、やや刺激的だったのじゃないだろうか・・・話を聞きながら、ちょっと不安になりました。ただ、そういう状況に持っていったのは、私のせいでもありますが・・・。
2015/12/20
第5回 ←
≪滝の音が凄かった。≫
≪今から、ご飯です。≫
刻々と報告が続く。けれども、次第にメールの周期も長くなって来ました。
片岡儀一と妻(朝倉未来:みき:30歳)・・・どんな風なのか、私(朝倉省吾:しょうご:35歳)は気になって仕方ありません・・・。午後2時半ごろ・・・。1時間前にメールが届いたのが最後です・・。そんな状態で、部屋に一人でいると、いろんなことが頭をグルグルと駆け巡ります。
片岡は、女性の扱いに長け、私より何枚も上であることは明らかだ・・・。それに対して、狼
の前の羊のような妻の未来は何もされないでいるだろうか・・?未来は片岡に言いくるめら
れるのじゃないのか・・・?どう考えても・・・私が・・・それを望んでいるはずなのに、後味が悪いのは何故だ・・・。
私は、後悔と興奮の間を行ったりきたりしています。そんな状態のため、私は二日酔いが抜けたにも関わらず、自販機で買った缶ビールのプルタブを開けました。外を見ると、雨が降り出しています。しばらくすると、小降りだった雨は、やがて激しくなり、ザーッと周囲の音を掻き消しました。
雨か・・・妻の未来は大丈夫だろうか・・・。そう思いながら、気がつくと私はたった2本の缶ビールでいつのまにか眠っていました。そして、午前10時から7時間後の午後5時前に、
何の前触れもなく妻は帰ってきました。
『ただいま。』
未来の声に私は目を覚まします。
「あ、おかえり。片岡さんと一緒に帰ってきたの?」
『うん・・。』
妻は、すこし疲れていたようなので、それ以上、こちらから何かを訊けるような感じでは
ありませんでした。《嫌な目にでもあったのだろうか?・・・》と、そんなことを思わせます。
『ちょっと、お風呂に行ってくるね。』
未来はそういい残して、部屋を出て行きました。今日の事を訊きだすにしても、妻には整理する時間が必要なのだと私は待つことにしました。
未来は、温泉から戻ってきても、しばらく無言でいました。そして・・・。
『話さなきゃ、駄目かな?』
はにかみながら、見上げるように、私の顔を見ました。
「嫌ならいいけど・・・。」
一瞬の間のあと、妻は決心して、旅館を出てからどこへ行ったのかを順を追いながら話し出しました。今日あった出来事を、再び、流れに沿って追体験するかのように・・・。まず、妻と片岡は、タクシーに乗って5分のところにある滝を見に行ったそうです。
タクシーの中で、未来は、片岡さんの傍にいながら、詰められない心理的な距離があって、戸惑っていたと言いました。最初のメール(≪滝の音が凄かった。≫)は、その戸惑うバツの悪さから、私にメールでもしたのでしょう・・・。そして、滝を見終えた後は、今来た道
を戻り、旅館を通り過ぎて、山間の店で食事をしたそうです。それで、その頃には、打ち解けて、腕をさえ組んでいたというのです。
腕を組んだということに、私は驚いて、聞き直してしまいました。『すこし・・・ふざけてだよ・・・だって・・・。』と未来はうつむき加減で、申し訳なさそうにいいます。『それは、片岡さんの女性の扱いのうまさのせいだよ。』と、私に話しました。片岡さんのエスコートの上手さ、妻を持ち上げる言葉の数々・・・。そうされると、『まるで女優にでもなったかのような気持ちになったわ。』といいます。
また、褒め言葉の数々は、片岡が発すると、明らかに嘘くさい言葉も、嘘では聞こえなくなっていったそうです。妻は、分かっていても、嬉しくなったそうです。私(朝倉省吾:しょうご:35歳)はこんなに未来をウキウキさせる男性がいるのだなと思ったのです。
そういうことに免疫が少ない妻(朝倉未来:みき:30歳)にとっては、やや刺激的だったのじゃないだろうか・・・話を聞きながら、ちょっと不安になりました。ただ、そういう状況に持っていったのは、私のせいでもありますが・・・。
2015/12/20
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