中Ⅱ9〖戻るべき場所〗その2
中Ⅱ9〖戻るべき場所〗その2
その1
その夜、とうとう俺(平河宏太:こうた:20歳)のほうから電話を掛けてみた。しかしながら、携帯の留守番電話サービスです。何を吹き込めばいいのかもわからず、「あ、あの、携帯にそちらの番号で着信が入っていたので掛けてみました。」と素直に伝言を残した。そして次の日、ついに謎の番号の相手と電話が繋がる。大学へ行こうと身支度を整えていた俺のポケットの中で、スマホがブルブルと振動をする。『あー! やっと繋がったー!』第一声はこんな感じで、想像していたよりも明るい声だった。
電話の主は、もちろんあの主婦です。このときの電話は5分〜10分?もっと短かったかもしれません。とりあえずお互いに名乗りあい、俺は「まだ大学生でコレから講義です。」と伝え、突然こんな手紙を渡したことを何度も謝っていたような気がします。
でも、「こうして電話をもらったことがとても嬉しく、天にも昇る気持ちです。」ということもしっかりと伝え、「今度はこちらから電話してもいいですか?」と訊ねてみました。すると瀬戸口真帆(まほ)=彼女の名前=さんは、『平日、子供を幼稚園に送り届け、帰ってくるまでのあいだなら、たぶん電話に出られます。』って返事が返ってきます。『電話待っています』とは言われていないけれど、かけてもイイってことだと勝手に解釈しました。
勇気を奮って、次の週の月曜日に電話をしてみました。さすがに週末は旦那さんが在宅しているのではないかと思ったので、月曜日まで我慢をしたのです。プルルルルル、『はい瀬戸口です。』とワンコールで出てくれる。真帆さんの可愛らしい声。なんでも、『なんとなく電話がかかってきそうな気がしていたので、エプロンのポケットにスマホを入れたまま洗濯物を干していました。』とのこと。
年上(年齢は8つ上で28歳)なので真帆さんと、“さん付け”で呼ぶことにします。真帆さんは俺を宏太君と呼んでくれました。
『見た目は幼いけど、結構おばさんなんだよー。がっかりしたでしょ? それにしても今時の若いコは積極的なんだねぇー。ちょっと驚いた。』
「いえ、誰にでも積極的にアタックするわけではなく、真帆さんだから・・・メモを渡したんですよ。」
しどろもどろになりながらも必死になってそう伝えます。胸の内では《オイオイ俺はなにを焦っているんだよ》、と思いました。だけど『お世辞でも嬉しいなぁー!』って、真帆さんは笑ってくれます。
結局1時間近くの会話となりました。結婚して6年目。旦那(瀬戸口衛:まもる)さんとは幼なじみで、生まれたときから一緒にいるみたいな感じだそうです。だから恋愛対象としてなんて見ることなんかまったく無かったのに、ある時、真帆さんが大失恋をしたのをきっかけに急接近して、『アレヨアレヨという間に結婚、出産、専業主婦でございます。』って半生をコンパクトに語ってくれました。『何のとりえも無い女なんですよー。』と謙遜したが、《いやいや、そのオッパイがあれば他にはなにも要りません。》などとは口が避けても言えませんでした。
2016/04/14
その1
その夜、とうとう俺(平河宏太:こうた:20歳)のほうから電話を掛けてみた。しかしながら、携帯の留守番電話サービスです。何を吹き込めばいいのかもわからず、「あ、あの、携帯にそちらの番号で着信が入っていたので掛けてみました。」と素直に伝言を残した。そして次の日、ついに謎の番号の相手と電話が繋がる。大学へ行こうと身支度を整えていた俺のポケットの中で、スマホがブルブルと振動をする。『あー! やっと繋がったー!』第一声はこんな感じで、想像していたよりも明るい声だった。
電話の主は、もちろんあの主婦です。このときの電話は5分〜10分?もっと短かったかもしれません。とりあえずお互いに名乗りあい、俺は「まだ大学生でコレから講義です。」と伝え、突然こんな手紙を渡したことを何度も謝っていたような気がします。
でも、「こうして電話をもらったことがとても嬉しく、天にも昇る気持ちです。」ということもしっかりと伝え、「今度はこちらから電話してもいいですか?」と訊ねてみました。すると瀬戸口真帆(まほ)=彼女の名前=さんは、『平日、子供を幼稚園に送り届け、帰ってくるまでのあいだなら、たぶん電話に出られます。』って返事が返ってきます。『電話待っています』とは言われていないけれど、かけてもイイってことだと勝手に解釈しました。
勇気を奮って、次の週の月曜日に電話をしてみました。さすがに週末は旦那さんが在宅しているのではないかと思ったので、月曜日まで我慢をしたのです。プルルルルル、『はい瀬戸口です。』とワンコールで出てくれる。真帆さんの可愛らしい声。なんでも、『なんとなく電話がかかってきそうな気がしていたので、エプロンのポケットにスマホを入れたまま洗濯物を干していました。』とのこと。
年上(年齢は8つ上で28歳)なので真帆さんと、“さん付け”で呼ぶことにします。真帆さんは俺を宏太君と呼んでくれました。
『見た目は幼いけど、結構おばさんなんだよー。がっかりしたでしょ? それにしても今時の若いコは積極的なんだねぇー。ちょっと驚いた。』
「いえ、誰にでも積極的にアタックするわけではなく、真帆さんだから・・・メモを渡したんですよ。」
しどろもどろになりながらも必死になってそう伝えます。胸の内では《オイオイ俺はなにを焦っているんだよ》、と思いました。だけど『お世辞でも嬉しいなぁー!』って、真帆さんは笑ってくれます。
結局1時間近くの会話となりました。結婚して6年目。旦那(瀬戸口衛:まもる)さんとは幼なじみで、生まれたときから一緒にいるみたいな感じだそうです。だから恋愛対象としてなんて見ることなんかまったく無かったのに、ある時、真帆さんが大失恋をしたのをきっかけに急接近して、『アレヨアレヨという間に結婚、出産、専業主婦でございます。』って半生をコンパクトに語ってくれました。『何のとりえも無い女なんですよー。』と謙遜したが、《いやいや、そのオッパイがあれば他にはなにも要りません。》などとは口が避けても言えませんでした。
2016/04/14
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