中Ⅱ9〖戻るべき場所〗その3
中Ⅱ9〖戻るべき場所〗その3
その2
それからは週に2〜3回のペースで電話をするようになりました。大学の行き帰りにほんの数分だったり、講義のあいまにちょっかいを出してみたりする。瀬戸口真帆(まほ:28歳)さんは暇を持て余しているのか、いつも元気に明るく俺(平河宏太:こうた:20歳)の相手をしてくれました。
電話はほとんど俺の方からしていましたが、初めて真帆さんのほうから電話がかかってくる。そのときは本当に嬉しかった。《ホレちゃいけない、この人に本気になっちゃいけない》と頭ではわかっていてもドンドン真帆さんに夢中になっていく自分がいます。
俺は極力例のスーパーに買い物に行かないようにしていました。《なぜなら会ったら最後、もう理性を保ってはいられないんじゃないか》と思っていたからです。実は、けっこう御近所に住んでいることも知っていましたが、「会いたい」という一言だけは言わずに いました。
真帆さんも『私ちょっぴり不倫な気分よ♪』なんて冗談っぽく言っていたこともありますが、どこかしら一線引いたところがあり、決してその線を自分から越えてくるような女性ではありません。暇な時に、気が向いた時に、気ままにお互いのことを話したりする。ただそれだけの関係だったのです。ただ俺はカウンターパンチが怖くて、まるでアウトボクシングのように、ある一定の距離を保っていました。
そんなある日のこと、いとものような会話で「専業主婦っていうくらいだから、料理なんておてのものなんだよね? でも真帆さん不器用そうだなぁー。」という揶揄(やゆ)する一言をきっかけに、俺達は急激に接近戦での打ち合いに転じます。
『ちょっとちょっと専業主婦馬鹿にしないでよっ!』って真帆さんの左ストレートが うなりをあげて飛んできます。「俺なんて片手で卵割れるからね。」と軽いジャブから、「俺が切ったら千キャベツが万キャベツになるよ。」とフックで応戦。すると『あはは。それはちょっと見てみたいねぇー』って鉄壁のディフェンスがわずかに崩れた感じがしました。
「真帆さんの手料理を食べてみたいなぁ…。」
これが的確に真帆さんのハートをヒットしたのかどうかはわかりませんが、少しだけ真帆さんに変化が現れます。
『貧乏学生、ちゃんと美味しいもの食べてるの?』
“貧乏学生”(実際にそうだが・・)なんて言われたけど親しみを込めた言い方で嬉しかった。
「食べてないなぁ。美味しいもの食べたいなぁ。」
その言葉は真帆さんを食べたいという意味合いも含んでいたのですが、本人はまったく気付かずシリアスモードに入っていました。
『栄養のバランスとかは大丈夫なの? なんか心配だなぁ…。』
「大丈夫だよ。けっこう自炊とかもするんだよ。」
『だからその自炊が心配なんだってば! 外食のほうがマシってこともあるしね。』
「どういう意味ですかっ!?」
『そういう意味ですが(笑)』
このときの会話は、まるで昔から良く知っている間柄のようにボケやツッコミが決まり楽しいものになった。
2016/04/23
その2
それからは週に2〜3回のペースで電話をするようになりました。大学の行き帰りにほんの数分だったり、講義のあいまにちょっかいを出してみたりする。瀬戸口真帆(まほ:28歳)さんは暇を持て余しているのか、いつも元気に明るく俺(平河宏太:こうた:20歳)の相手をしてくれました。
電話はほとんど俺の方からしていましたが、初めて真帆さんのほうから電話がかかってくる。そのときは本当に嬉しかった。《ホレちゃいけない、この人に本気になっちゃいけない》と頭ではわかっていてもドンドン真帆さんに夢中になっていく自分がいます。
俺は極力例のスーパーに買い物に行かないようにしていました。《なぜなら会ったら最後、もう理性を保ってはいられないんじゃないか》と思っていたからです。実は、けっこう御近所に住んでいることも知っていましたが、「会いたい」という一言だけは言わずに いました。
真帆さんも『私ちょっぴり不倫な気分よ♪』なんて冗談っぽく言っていたこともありますが、どこかしら一線引いたところがあり、決してその線を自分から越えてくるような女性ではありません。暇な時に、気が向いた時に、気ままにお互いのことを話したりする。ただそれだけの関係だったのです。ただ俺はカウンターパンチが怖くて、まるでアウトボクシングのように、ある一定の距離を保っていました。
そんなある日のこと、いとものような会話で「専業主婦っていうくらいだから、料理なんておてのものなんだよね? でも真帆さん不器用そうだなぁー。」という揶揄(やゆ)する一言をきっかけに、俺達は急激に接近戦での打ち合いに転じます。
『ちょっとちょっと専業主婦馬鹿にしないでよっ!』って真帆さんの左ストレートが うなりをあげて飛んできます。「俺なんて片手で卵割れるからね。」と軽いジャブから、「俺が切ったら千キャベツが万キャベツになるよ。」とフックで応戦。すると『あはは。それはちょっと見てみたいねぇー』って鉄壁のディフェンスがわずかに崩れた感じがしました。
「真帆さんの手料理を食べてみたいなぁ…。」
これが的確に真帆さんのハートをヒットしたのかどうかはわかりませんが、少しだけ真帆さんに変化が現れます。
『貧乏学生、ちゃんと美味しいもの食べてるの?』
“貧乏学生”(実際にそうだが・・)なんて言われたけど親しみを込めた言い方で嬉しかった。
「食べてないなぁ。美味しいもの食べたいなぁ。」
その言葉は真帆さんを食べたいという意味合いも含んでいたのですが、本人はまったく気付かずシリアスモードに入っていました。
『栄養のバランスとかは大丈夫なの? なんか心配だなぁ…。』
「大丈夫だよ。けっこう自炊とかもするんだよ。」
『だからその自炊が心配なんだってば! 外食のほうがマシってこともあるしね。』
「どういう意味ですかっ!?」
『そういう意味ですが(笑)』
このときの会話は、まるで昔から良く知っている間柄のようにボケやツッコミが決まり楽しいものになった。
2016/04/23
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