中K〖歩美と剛司 第34話〗
第33話 20181216
少しの沈黙の後、剛司(たけし:27歳)は鞄から封筒を取り出す。〔おれさ、遥人も歩美ちゃんも大好きなんだ。これからも一生仲良く付き合いたいと思っているんだよ。〕A4サイズが半分に折りたたまれた封筒をテーブルに置いた。〔お前は楽観的過ぎなんだよ。おれだって男だ。お前に止めてもらわないと、自信持てない事もある・・・・。〕
僕(遥人:はると:27歳)は背筋がザワっとする。変な汗が背骨を伝っていくような気がした。
〔とにかく、歩美(あゆみ:24歳)ちゃんのいないところでこれを見てくれ。情けない話だけど、おれはお前に助けて欲しいのかも・・。〕
剛司はそう言って一枚のDVDケースを置いて部屋を出て行く。
何と無く中身は察しがついた。明るくいつものノリで渡されたなら、ひょっとすると喜んで勃起させていたかもしれない。しかし、剛司のあの思い詰めたような表情で渡されると、正直勃起どころでは無かった。デスクに戻っても仕事に集中出来ない。当初は出張先のビジホで見ようかとも考えたけど、とてもそれまで精神的に持ちそうもない。
僕はいつもより相当早く会社を出てその足で漫画喫茶に向かった。個室でヘッドホンを掛けて一切の音からシャットダウンされた世界に入り混むと、何故か震える手でPCにDVDをセットする。大きく深呼吸してから中を開いた。動画は三つ入っている。一本目、剛司の寝室のベッド横からの映像。誰も居ない部屋に歩美が一人で入って来た。そしてベッドの上に無造作に広げられている剛司のジャケットを慣れた手つきでハンガーに掛け、そこ
に腰掛ける。
少しうな垂れるように座る歩美の表情は見えないが、少なくとも楽しんでいるようには見えず、寧ろ落ち込んでさえいるような佇まい。外から帰ってきた感じですぐに剛司が現れて、被っていたキャップを歩美の頭に無造作に被せ、隣に腰掛けて肩に手を回した。歩美は俯いたままだけど、肩に掛けられた剛司の手を握り、ゆっくり顔を向ける。そしてどちらともなく唇を合わせた。
少し歩美に戸惑いが見られるけど、この自然な流れは恋人同士の雰囲気である。僕は想定よりも二人はかなり親密な感じになっていて早速凹み始めた。しかもキスしながらお互いの服を脱がし始めるのだが、その時の歩美の手際の良さにも驚かされる。少なくとも僕は歩美に服を脱がされた事もないし、脱がせてもらおうとした事もない。歩美は本来始終受け身であって、最近でこそ剛司に抱かれる事によって僅かに積極性も出てきた、位にしか思っていなかった。 第35話につづく
20190610
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