長J『失くしたもの』第1章②
長J『失くしたもの』第1章②
3月5日(日)
朝目覚めると、妻の菜月(なつき)は隣のベッドでまだ寝息を立てています。私は起こさないようにそっと寝室を出て、脱衣場に行って籠の中を調べると、先に脱いだ筈の私の衣類より下に、黒い小さな固まりを見付けて手に取って広げると、見た事も無いパンティーとブラジャーでした。それも、パンティーは洗ったらしく、まだ濡れています。居ても立ってもいられず、寝室に戻って妻を起こしました。
「夕べは何時に帰ってきた?」と詰問する。
『1時頃だと思うけど、遅くなってごめんなさい。名残惜しくて。』
「嘘をつけ。1時までは俺も覚えている。それより菜月に下着集めの趣味は有ったか?」
「ごめんなさい。私の勘違いかな?2時だったかも。それより何なの?朝から変な事ばかり聞いて。下着集め?そんな趣味は有りません。」
「それなら、タンスの一番下の引き出しに入っている箱の中は何だ?それと、この下着はどうして洗った。本当に送別会だったのか?」
濡れた黒い下着を投げ付けました。妻の菜月は一瞬驚きの表情をしましたが、その後泣き出し。
『酷い。私が浮気でもしていると言いたいの?私はあなただけを見て来たのに。下着も隠していたのじゃ無くて、予備に置いて有ったのです。1枚駄目になると、あそこから1枚出して使っていました。この下着を洗ったのは、帰りの車でトイレに行きたくなり、家までもつと思ったけど、少し・・・・・・・・。もういいでしょ。あなたは私の事をそういう目で見ていたの?』
下着の件も、予備にしては今までの物とは違い派手な物ばかりで到底納得出来ませんが、浮気の確証が有った訳では無く、また、女の涙には勝てずに、後ろ髪を引かれる思いで赴任先に戻りました。
3月9日(木)
会社から戻ると、毎晩菜月の事を考えてしまいます。妻が知らない男に抱かれている姿を想像してしまい、嫉妬で狂いそうになります。私しか知らない菜月の裸を、他の男も知ってしまったのか?と思うと、今迄のように嫉妬を楽しむ余裕など有りません。無性に菜月を抱きたくなり、菜月の声を聴きたくなり、電話をしました。
「年度末で、暫らく土日のどちらかしか休めそうも無いから、今月だけ土日は菜月が来てくれないか?」
『私そちらには行きません。あなたに疑われたまま会う気になれません。』
「来月の1日まで帰れないぞ。それまで1回も来ないと言うのか?」
『お互い頭を冷やすのに、丁度いいじゃないですか?』
こんな時に1カ月も会えない苦しさから逃れたくて、まだ浮気をしていると決まった訳では無いと、自分に言い聞かせました。変なもので、これを書き出した時は無理に妻を疑おうと自分に言い聞かせていましたが、本当に浮気している可能性がある今は、逆に妻の行動を浮気では無いと否定している自分がいます。
3月11日(土)
土日のどちらかは休めると思っていましたが、今週も、来週も休めそうも有りません。来週の3連休は大学が決まった息子の引越しですが、≪友達に手伝って貰うので心配要らない。≫とメールが来ました。夜10時頃に電話をすると息子が出たので、手伝いが出来ない事を謝り、妻に代わってくれるように言うと、「仕事仲間と食事に行くと言って出かけたまま、まだ帰っていない。」と告げられます。
午前0時にもう一度電話を掛けると誰も出ません。息子の部屋には電話が無いので、眠ってしまって聞こえないのだろうとでも携帯に掛けて起こすまでもないと思いました。私達の寝室には電話が置いてあるので、帰っていれば妻は起きるはずです。妻の携帯に掛けてみると、なかなか出ません。諦めて切ろうとした時に妻の声が聞こえました。
『なに?今頃電話してくるなんて。何か有ったの?』
「いや、別に。家に掛けたのだが誰も出なかったのでな。食事会だって?」
『そう。友達と居酒屋で食事していて遅くなっちゃった。もう帰ります。』
しかし居酒屋にしてはやけに静で、微かにBGMが聞こえます。それに、電話に出た時の菜月の息遣いは可也乱れているように感じました。私は動揺して、その後何も言わずに電話を切ってしまいました。
2015/04/05
3月5日(日)
朝目覚めると、妻の菜月(なつき)は隣のベッドでまだ寝息を立てています。私は起こさないようにそっと寝室を出て、脱衣場に行って籠の中を調べると、先に脱いだ筈の私の衣類より下に、黒い小さな固まりを見付けて手に取って広げると、見た事も無いパンティーとブラジャーでした。それも、パンティーは洗ったらしく、まだ濡れています。居ても立ってもいられず、寝室に戻って妻を起こしました。
「夕べは何時に帰ってきた?」と詰問する。
『1時頃だと思うけど、遅くなってごめんなさい。名残惜しくて。』
「嘘をつけ。1時までは俺も覚えている。それより菜月に下着集めの趣味は有ったか?」
「ごめんなさい。私の勘違いかな?2時だったかも。それより何なの?朝から変な事ばかり聞いて。下着集め?そんな趣味は有りません。」
「それなら、タンスの一番下の引き出しに入っている箱の中は何だ?それと、この下着はどうして洗った。本当に送別会だったのか?」
濡れた黒い下着を投げ付けました。妻の菜月は一瞬驚きの表情をしましたが、その後泣き出し。
『酷い。私が浮気でもしていると言いたいの?私はあなただけを見て来たのに。下着も隠していたのじゃ無くて、予備に置いて有ったのです。1枚駄目になると、あそこから1枚出して使っていました。この下着を洗ったのは、帰りの車でトイレに行きたくなり、家までもつと思ったけど、少し・・・・・・・・。もういいでしょ。あなたは私の事をそういう目で見ていたの?』
下着の件も、予備にしては今までの物とは違い派手な物ばかりで到底納得出来ませんが、浮気の確証が有った訳では無く、また、女の涙には勝てずに、後ろ髪を引かれる思いで赴任先に戻りました。
3月9日(木)
会社から戻ると、毎晩菜月の事を考えてしまいます。妻が知らない男に抱かれている姿を想像してしまい、嫉妬で狂いそうになります。私しか知らない菜月の裸を、他の男も知ってしまったのか?と思うと、今迄のように嫉妬を楽しむ余裕など有りません。無性に菜月を抱きたくなり、菜月の声を聴きたくなり、電話をしました。
「年度末で、暫らく土日のどちらかしか休めそうも無いから、今月だけ土日は菜月が来てくれないか?」
『私そちらには行きません。あなたに疑われたまま会う気になれません。』
「来月の1日まで帰れないぞ。それまで1回も来ないと言うのか?」
『お互い頭を冷やすのに、丁度いいじゃないですか?』
こんな時に1カ月も会えない苦しさから逃れたくて、まだ浮気をしていると決まった訳では無いと、自分に言い聞かせました。変なもので、これを書き出した時は無理に妻を疑おうと自分に言い聞かせていましたが、本当に浮気している可能性がある今は、逆に妻の行動を浮気では無いと否定している自分がいます。
3月11日(土)
土日のどちらかは休めると思っていましたが、今週も、来週も休めそうも有りません。来週の3連休は大学が決まった息子の引越しですが、≪友達に手伝って貰うので心配要らない。≫とメールが来ました。夜10時頃に電話をすると息子が出たので、手伝いが出来ない事を謝り、妻に代わってくれるように言うと、「仕事仲間と食事に行くと言って出かけたまま、まだ帰っていない。」と告げられます。
午前0時にもう一度電話を掛けると誰も出ません。息子の部屋には電話が無いので、眠ってしまって聞こえないのだろうとでも携帯に掛けて起こすまでもないと思いました。私達の寝室には電話が置いてあるので、帰っていれば妻は起きるはずです。妻の携帯に掛けてみると、なかなか出ません。諦めて切ろうとした時に妻の声が聞こえました。
『なに?今頃電話してくるなんて。何か有ったの?』
「いや、別に。家に掛けたのだが誰も出なかったのでな。食事会だって?」
『そう。友達と居酒屋で食事していて遅くなっちゃった。もう帰ります。』
しかし居酒屋にしてはやけに静で、微かにBGMが聞こえます。それに、電話に出た時の菜月の息遣いは可也乱れているように感じました。私は動揺して、その後何も言わずに電話を切ってしまいました。
2015/04/05
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