長J『失くしたもの』第2章⑤ 14
長J『失くしたもの』第2章⑤ 14
第2章④ 13
5月23日(火)
「菜月(なつき)、これからどうしたい? 俺は別れたいが、お前はどうだ? お前にお願いがある。もし別れたら子供達には出来るだけ会わないで欲しい。お前のような人間にはしたく無いからな。」
私(平井慶介)は女々しいと分かっていても、子供の事まで持ち出して暗に夫婦関係を繋ぎ止めようとしました。別れたくないのは未練だけでなく、自分だけが不幸になり、また妻(菜月:なつき)が野田真人と付き合い、最悪再婚でもして幸せになる事が許せない思いもあり、本当に女々しい男です。
『離婚だけは許して下さい。家政婦でもいい、ここにいたいです。あなたが好きです。お願いします。離婚だけは・・・彼とは別れます。忘れるように努力をします。』
「忘れるように努力する? 何だそれは。もういい。」
『ごめんなさい。あなたに悪いと思いながらも、正直に話しました。もう二人では絶対に会いません。ごめんなさい。ごめんなさい。』
「お前はあいつ(野田)のどこに惹かれた? セックスか? あいつは上手いのか?」
『違います。最初、昨年の忘年会が終わってから、聞いて欲しい事があると言われて、二人で喫茶店に行きました。彼は奥様が浮気してから奥様を許せない事、それでもまだ愛していて別れる事が出来ない事を打ち明けてくれました。彼は仕事も出来、人望もあって強い人間だと思っていました。決して人前では弱みをみせません。その彼が私の前では涙まで流し、気がおかしく成ってしまいそうだから助けてくれとまで言いました。・・・その後何度か仕事が終わってから、悩みを聞いてあげる様になり、次第に関係も持つようになってしまいました。彼には以前から憧れの感情は持っていました。でもそれは愛情とは違い仕事が出来る強い男への憧れでした。でも私だけに弱みを見せてくれる彼を助けてあげたい、心がいっぱいになった時は、少しでも楽にしてあげたいと思って会っている内に・・・・。ごめんなさい。』
「それが愛情だろ?愛してしまったのだろ?そうでないと俺を裏切ってまで旅行に行くか?」
『いいえ、愛しているのはあなた1人です。旅行に誘われてから、あなたに優しくされて、自分が嫌で仕方がありませんでした。もうこの様な関係は止めなければと思いながらも、彼に会いたい誘惑に勝てず、あなたに申し訳ないと思いながらも・・・。』
妻の言う意味が私には理解出来ません。二人の男を好きになったと言うことなのか?
「会いたいという事は好きという事だろ。俺との関係はそのままで恋人にも会いたい。それが許せると思うか? あいつを助けるために俺をあいつと同じ目に合わせたと言う事は、俺より好きなんだろ? 野田とはセックスをして、俺にはさせなかったと言う事は、そういう事だろ?」
『ごめんなさい。ごめんなさい。彼を嫌いではありません。いえ、好きです。でも愛情とは違います。愛しているのはあなただけです。あなたを拒んだのも罪悪感からです。彼に抱かれた身体であなたに抱かれる事は、あなたに悪くて出来ませんでした。あなたに誘われる度に罪悪感でおかしく成りそうでした。ごめんなさい。ごめんなさい。』
「お前の話は到底理解ができん。あいつに抱かれる時に罪悪感を持つのが普通だろ。言い訳しても、結局は野田に抱かれたかっただけだろ? このまま安定した生活を送りたいが、好きな人にも抱かれたい。好きな人に抱かれた身体を、好きでも無い俺に触られたくない。そうだろ? そんなに俺を苦しめて楽しいか? 面白いか? 離婚してもお前とあいつだけは、絶対に幸せにはしない。幸せになりそうな時は、あいつを殺してでもお前を後悔させてやる。俺は絶対に許さん。」
『そんな事言わないで。ごめんなさい。殺すなんて、そんな怖い事言わないで。離婚なんて言わないでください。ごめんなさい。ごめんなさい。』
その後泣き続けていた妻(菜月)は簡単な夕食を作りますが、自分は食べませんでした。二人を別れさせる事は出来ても、気持ちまでは縛れない事に苛立ちます。
話を聞けば余計辛くなっても、私(平井慶介)は妻と話していないと本当におかしく成ってしまいそうで、少し落ち着いた妻に話し続ける。
「野田は離婚をして、お前と一緒になるつもりだったのか?」
『いえ、それはありません。私の事を好きだと言ってくれましたが、彼も愛しているのは奥様だと思います。最近になって〔妻に裏切られ悩んだが、俺も他に好きな人が出来た事で、妻との関係も良くなってきた〕と言っていましたから。』
「俺をこんな目に合わせて、自分は楽になったのか? そんな事は許さない。ぶち壊してやる。」
『お願いですから止めて下さい。私はどの様な罰も受けます。一生懸命償います。ですから・・・お願いします。お願いします。』
まだ野田を庇う妻に怒りが増しました。
「お前、あいつの事を知っているのか? 今度の事もお前と先生(鈴木健一)に罪を被せて、自分だけ助かろうとしていた卑怯な奴だぞ! そんな奴と俺を比較されるだけでも頭にくる。」
『ごめんなさい。それは知っていました。鈴木先生をまだ憎んでいて許せず利用した事も、自分は逃げようとした事も。そこが彼の弱さです。でも卑怯だと分かっていても・・・。』
妻(平井菜月:なつき)が何か熱病にでも罹っているように野田を庇い続けることに、私は理解に苦しみました。
2016/05/05
第2章④ 13
5月23日(火)
「菜月(なつき)、これからどうしたい? 俺は別れたいが、お前はどうだ? お前にお願いがある。もし別れたら子供達には出来るだけ会わないで欲しい。お前のような人間にはしたく無いからな。」
私(平井慶介)は女々しいと分かっていても、子供の事まで持ち出して暗に夫婦関係を繋ぎ止めようとしました。別れたくないのは未練だけでなく、自分だけが不幸になり、また妻(菜月:なつき)が野田真人と付き合い、最悪再婚でもして幸せになる事が許せない思いもあり、本当に女々しい男です。
『離婚だけは許して下さい。家政婦でもいい、ここにいたいです。あなたが好きです。お願いします。離婚だけは・・・彼とは別れます。忘れるように努力をします。』
「忘れるように努力する? 何だそれは。もういい。」
『ごめんなさい。あなたに悪いと思いながらも、正直に話しました。もう二人では絶対に会いません。ごめんなさい。ごめんなさい。』
「お前はあいつ(野田)のどこに惹かれた? セックスか? あいつは上手いのか?」
『違います。最初、昨年の忘年会が終わってから、聞いて欲しい事があると言われて、二人で喫茶店に行きました。彼は奥様が浮気してから奥様を許せない事、それでもまだ愛していて別れる事が出来ない事を打ち明けてくれました。彼は仕事も出来、人望もあって強い人間だと思っていました。決して人前では弱みをみせません。その彼が私の前では涙まで流し、気がおかしく成ってしまいそうだから助けてくれとまで言いました。・・・その後何度か仕事が終わってから、悩みを聞いてあげる様になり、次第に関係も持つようになってしまいました。彼には以前から憧れの感情は持っていました。でもそれは愛情とは違い仕事が出来る強い男への憧れでした。でも私だけに弱みを見せてくれる彼を助けてあげたい、心がいっぱいになった時は、少しでも楽にしてあげたいと思って会っている内に・・・・。ごめんなさい。』
「それが愛情だろ?愛してしまったのだろ?そうでないと俺を裏切ってまで旅行に行くか?」
『いいえ、愛しているのはあなた1人です。旅行に誘われてから、あなたに優しくされて、自分が嫌で仕方がありませんでした。もうこの様な関係は止めなければと思いながらも、彼に会いたい誘惑に勝てず、あなたに申し訳ないと思いながらも・・・。』
妻の言う意味が私には理解出来ません。二人の男を好きになったと言うことなのか?
「会いたいという事は好きという事だろ。俺との関係はそのままで恋人にも会いたい。それが許せると思うか? あいつを助けるために俺をあいつと同じ目に合わせたと言う事は、俺より好きなんだろ? 野田とはセックスをして、俺にはさせなかったと言う事は、そういう事だろ?」
『ごめんなさい。ごめんなさい。彼を嫌いではありません。いえ、好きです。でも愛情とは違います。愛しているのはあなただけです。あなたを拒んだのも罪悪感からです。彼に抱かれた身体であなたに抱かれる事は、あなたに悪くて出来ませんでした。あなたに誘われる度に罪悪感でおかしく成りそうでした。ごめんなさい。ごめんなさい。』
「お前の話は到底理解ができん。あいつに抱かれる時に罪悪感を持つのが普通だろ。言い訳しても、結局は野田に抱かれたかっただけだろ? このまま安定した生活を送りたいが、好きな人にも抱かれたい。好きな人に抱かれた身体を、好きでも無い俺に触られたくない。そうだろ? そんなに俺を苦しめて楽しいか? 面白いか? 離婚してもお前とあいつだけは、絶対に幸せにはしない。幸せになりそうな時は、あいつを殺してでもお前を後悔させてやる。俺は絶対に許さん。」
『そんな事言わないで。ごめんなさい。殺すなんて、そんな怖い事言わないで。離婚なんて言わないでください。ごめんなさい。ごめんなさい。』
その後泣き続けていた妻(菜月)は簡単な夕食を作りますが、自分は食べませんでした。二人を別れさせる事は出来ても、気持ちまでは縛れない事に苛立ちます。
話を聞けば余計辛くなっても、私(平井慶介)は妻と話していないと本当におかしく成ってしまいそうで、少し落ち着いた妻に話し続ける。
「野田は離婚をして、お前と一緒になるつもりだったのか?」
『いえ、それはありません。私の事を好きだと言ってくれましたが、彼も愛しているのは奥様だと思います。最近になって〔妻に裏切られ悩んだが、俺も他に好きな人が出来た事で、妻との関係も良くなってきた〕と言っていましたから。』
「俺をこんな目に合わせて、自分は楽になったのか? そんな事は許さない。ぶち壊してやる。」
『お願いですから止めて下さい。私はどの様な罰も受けます。一生懸命償います。ですから・・・お願いします。お願いします。』
まだ野田を庇う妻に怒りが増しました。
「お前、あいつの事を知っているのか? 今度の事もお前と先生(鈴木健一)に罪を被せて、自分だけ助かろうとしていた卑怯な奴だぞ! そんな奴と俺を比較されるだけでも頭にくる。」
『ごめんなさい。それは知っていました。鈴木先生をまだ憎んでいて許せず利用した事も、自分は逃げようとした事も。そこが彼の弱さです。でも卑怯だと分かっていても・・・。』
妻(平井菜月:なつき)が何か熱病にでも罹っているように野田を庇い続けることに、私は理解に苦しみました。
2016/05/05
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