長J『失くしたもの』第1章③
長J『失くしたもの』第1章③
3月25日(土)
31日まで掛かると思った仕事も、ようやく昨日で片付きました。あれからの私は地獄の日々で、仕事で疲れていても、マンションに帰ると菜月(なつき)の事を考えてしまい、深夜まで寝付けないのです。心身ともに疲労困憊していましたが、休みになった事を告げずに赴任先を発ち、家に着いたのは夜10時を過ぎていました。息子は既に1人暮らしをしていて、妻の菜月が1人で待っているはずの家は留守だったで、合鍵で開けて入ると、疲れから食事も摂らずに眠ってしまいました。
3月26日(日)
目が覚めたのは午前6時でした。しかし妻の菜月はまだ帰っておらず、コーヒーを煎れて、トーストと目玉焼きを食べていると、暫らくして帰って来た妻は私が居る事に驚き、何も言わない私に必死で言い訳を始めました。
『友達に、相談に乗って欲しい事が有るから家に来て欲しいと頼まれて、話が長くなってしまったので、帰っても誰もいないのなら泊まっていってと言われたので泊めてもらったの。帰れるのなら連絡してくれれば早く帰って来たのに。ごめんなさい。』
そう言い終ると返事もしない私を残して、慌ててシャワーを浴びに行きました。
私は気付かれないようにバスルームに行き、いきなりドアを開けると、物音に気付いた菜月は両手で前を隠した格好で、背を向けてしゃがみ込んでいて、真っ赤なパンティーだけがシャワーに打たれています。
『あなた。急に何なの?恥ずかしいから出て行って・・・。』
「下着を洗っていたのか?また少し漏らしたのか?それにしても見た事も無い派手なパンティーだな。」
妻は無言で俯いていました。キッチンに戻って冷めたコーヒーを温め直して飲んでいると、バスルームから戻ってきた菜月は、また一生懸命言い訳を始めました。
『あのね本当は、気分転換になるから時々色々な派手な下着を穿いていたのだけど、こんなのを着けている事を知られると、いくら夫婦でも恥ずかしいから隠してあったの。それで、あなたに見つからない内に洗濯して隠そうと思って。この前は嘘をついてごめんね。』
私は菜月の浮気を確信しました。嫉妬心は復讐心に変わり、意外と冷静な事が自分でも不思議でした。ただ、復讐しようにも、相手が分からず証拠も無いのでは誤魔化されるだけです。「もう分かった。菜月を信じるよ。それより2人だけだから今からどうだ?」その気にはなれないのに、妻の反応を見るために言うと。
『ごめんね。こんな日中は嫌なの。誰かお客さんが来るかも知れないし、落ち着かなくて。』想像どおりの答えです。『来週は私が行くからその時ね。』この前までは、もう行きたくないと怒っていたのに、やはり後ろめたいのか、優しい口調の妻に戻っていました。
2015/04/12
3月25日(土)
31日まで掛かると思った仕事も、ようやく昨日で片付きました。あれからの私は地獄の日々で、仕事で疲れていても、マンションに帰ると菜月(なつき)の事を考えてしまい、深夜まで寝付けないのです。心身ともに疲労困憊していましたが、休みになった事を告げずに赴任先を発ち、家に着いたのは夜10時を過ぎていました。息子は既に1人暮らしをしていて、妻の菜月が1人で待っているはずの家は留守だったで、合鍵で開けて入ると、疲れから食事も摂らずに眠ってしまいました。
3月26日(日)
目が覚めたのは午前6時でした。しかし妻の菜月はまだ帰っておらず、コーヒーを煎れて、トーストと目玉焼きを食べていると、暫らくして帰って来た妻は私が居る事に驚き、何も言わない私に必死で言い訳を始めました。
『友達に、相談に乗って欲しい事が有るから家に来て欲しいと頼まれて、話が長くなってしまったので、帰っても誰もいないのなら泊まっていってと言われたので泊めてもらったの。帰れるのなら連絡してくれれば早く帰って来たのに。ごめんなさい。』
そう言い終ると返事もしない私を残して、慌ててシャワーを浴びに行きました。
私は気付かれないようにバスルームに行き、いきなりドアを開けると、物音に気付いた菜月は両手で前を隠した格好で、背を向けてしゃがみ込んでいて、真っ赤なパンティーだけがシャワーに打たれています。
『あなた。急に何なの?恥ずかしいから出て行って・・・。』
「下着を洗っていたのか?また少し漏らしたのか?それにしても見た事も無い派手なパンティーだな。」
妻は無言で俯いていました。キッチンに戻って冷めたコーヒーを温め直して飲んでいると、バスルームから戻ってきた菜月は、また一生懸命言い訳を始めました。
『あのね本当は、気分転換になるから時々色々な派手な下着を穿いていたのだけど、こんなのを着けている事を知られると、いくら夫婦でも恥ずかしいから隠してあったの。それで、あなたに見つからない内に洗濯して隠そうと思って。この前は嘘をついてごめんね。』
私は菜月の浮気を確信しました。嫉妬心は復讐心に変わり、意外と冷静な事が自分でも不思議でした。ただ、復讐しようにも、相手が分からず証拠も無いのでは誤魔化されるだけです。「もう分かった。菜月を信じるよ。それより2人だけだから今からどうだ?」その気にはなれないのに、妻の反応を見るために言うと。
『ごめんね。こんな日中は嫌なの。誰かお客さんが来るかも知れないし、落ち着かなくて。』想像どおりの答えです。『来週は私が行くからその時ね。』この前までは、もう行きたくないと怒っていたのに、やはり後ろめたいのか、優しい口調の妻に戻っていました。
2015/04/12
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