長J『失くしたもの』第2章② 11
長J『失くしたもの』第2章② 11
5月20日(土)
私(平井慶介)は、あれからずっと妻の菜月(なつき)の事を考えていましたが、考えれば考えるほど悪い方に考えてしまいます。妻のプライベートな関係では、いい歳をして嫉妬深い男と思われないかと、ほとんど詮索した事は有りませんでしたが、今はそのような事を言っていられる心境ではなく、夜、菜月に電話を掛けました。
「身体の調子はどうだ?楽しくやっているか?紀子さんとはもう何年も会っていないから変わっただろうな。携帯で写真を撮って送ってくれないか?菜月のもカメラ付きだったよな?」
『・・・はい?・・・写真ですか?・・・分かり・・ました。』
菜月の声は相変わらず沈んでいました。数分して写メが送られてきましたが、それは、旅館の部屋らしい所で写っている、浴衣を着た妻一人の物です。浴衣姿の菜月は私が見ても色っぽく、しばらく見入っていましたが、やはり妻1人なのは納得出来ずに電話しました。
『ごめんなさい。みんなで撮ろうと思ったのですが、温泉に入ってみんなスッピンなので断られてしまって・・・ごめんなさい。』
電話を切ってからもう一度菜月の写真を見ると、画像が良く無くはっきりは見えませんが、妻は化粧をしているようです。一層不信感が募り、明日日帰りで帰る事にしました。
5月21日(日)
朝1番の新幹線で帰り、東京駅から鈴木健一君に電話をして、「先日の件で相談に乗って欲しい。」と嘘をついて来てもらう事にしました。家に着くと鈴木君は既に来ていて、車の中で待っていました。妻が彼と一緒で無い事は分かりましたが、妻が塞ぎ込んでいる訳を知っているのでは無いかと、家の中に入ってもらいました。
あの誠実だった妻が浮気をした事は今でも信じられません。その菜月が鈴木君と別れてすぐに、違う相手と浮気する事は無いと思っていましたが、色々質問しても彼の返答は弱弱しく、俯いたままなので、何か隠していると思い。私は勝負に出た。
「何か隠しているな?そうか、分かった。今までの事を教育委員会に行って話して来る。」
〚それだけは止めてください。お願いします。女手1つで育ててくれた母を失望させたくありません。お願いします。それだけは・・・。〛
「それなら話せ。妻の事で隠している事があるだろ?話してくれればそのような事はしない。」
鈴木君は泣き出してしまいます。
〚すみません。嘘をついていました。・・・私は奥さんと浮気していません。〛
「浮気していない?どういう事だ?訳が分からん。正直に話せ。」
〚実はある人に頼まれて・・・。たぶん奥さんは今その人と・・・。〛
「でもお前と妻がラブホテルに入るところも、出てくるところも興信所が写真に・・・?」
〚その人に頼まれて奥さんを迎えに行き、少ししてから私はその人の車で帰り、また朝に迎えに行って送り、その人は後から自分の車で帰りました。〛
「本当か?まだ信用出来ない。部屋のキーも受け取り、一緒にエレベーターに乗って行ったと、興信所から聞いている。」
〚奥さん1人では恥ずかしいだろうから部屋まで送って、その人が来るまで待つように言われていました。〛
「どうしてその様に手の込んだ事を?」
〚ご主人が疑い出したと奥さんが言われたそうで、探偵でも付けられていると困るからと
言って。もしもの時自分は助かるようにしたのだと思います。奥さんは、私が送り迎えをしていた本当の理由は知らないはずです。〛
「その男は誰だ?どうして教師のお前がそこまでした?」
〚その人の名前と、理由は言えません。ごめんなさい。母を悲しませてしまう。私の口から、それだけは言えません。ごめんなさい。許して下さい。〛
鈴木君が走って出て行った後、1人残された私は失望と悲しみで声を出して泣きましたが、やがて悲しみは怒りに変わりました。
2015/06/10
5月20日(土)
私(平井慶介)は、あれからずっと妻の菜月(なつき)の事を考えていましたが、考えれば考えるほど悪い方に考えてしまいます。妻のプライベートな関係では、いい歳をして嫉妬深い男と思われないかと、ほとんど詮索した事は有りませんでしたが、今はそのような事を言っていられる心境ではなく、夜、菜月に電話を掛けました。
「身体の調子はどうだ?楽しくやっているか?紀子さんとはもう何年も会っていないから変わっただろうな。携帯で写真を撮って送ってくれないか?菜月のもカメラ付きだったよな?」
『・・・はい?・・・写真ですか?・・・分かり・・ました。』
菜月の声は相変わらず沈んでいました。数分して写メが送られてきましたが、それは、旅館の部屋らしい所で写っている、浴衣を着た妻一人の物です。浴衣姿の菜月は私が見ても色っぽく、しばらく見入っていましたが、やはり妻1人なのは納得出来ずに電話しました。
『ごめんなさい。みんなで撮ろうと思ったのですが、温泉に入ってみんなスッピンなので断られてしまって・・・ごめんなさい。』
電話を切ってからもう一度菜月の写真を見ると、画像が良く無くはっきりは見えませんが、妻は化粧をしているようです。一層不信感が募り、明日日帰りで帰る事にしました。
5月21日(日)
朝1番の新幹線で帰り、東京駅から鈴木健一君に電話をして、「先日の件で相談に乗って欲しい。」と嘘をついて来てもらう事にしました。家に着くと鈴木君は既に来ていて、車の中で待っていました。妻が彼と一緒で無い事は分かりましたが、妻が塞ぎ込んでいる訳を知っているのでは無いかと、家の中に入ってもらいました。
あの誠実だった妻が浮気をした事は今でも信じられません。その菜月が鈴木君と別れてすぐに、違う相手と浮気する事は無いと思っていましたが、色々質問しても彼の返答は弱弱しく、俯いたままなので、何か隠していると思い。私は勝負に出た。
「何か隠しているな?そうか、分かった。今までの事を教育委員会に行って話して来る。」
〚それだけは止めてください。お願いします。女手1つで育ててくれた母を失望させたくありません。お願いします。それだけは・・・。〛
「それなら話せ。妻の事で隠している事があるだろ?話してくれればそのような事はしない。」
鈴木君は泣き出してしまいます。
〚すみません。嘘をついていました。・・・私は奥さんと浮気していません。〛
「浮気していない?どういう事だ?訳が分からん。正直に話せ。」
〚実はある人に頼まれて・・・。たぶん奥さんは今その人と・・・。〛
「でもお前と妻がラブホテルに入るところも、出てくるところも興信所が写真に・・・?」
〚その人に頼まれて奥さんを迎えに行き、少ししてから私はその人の車で帰り、また朝に迎えに行って送り、その人は後から自分の車で帰りました。〛
「本当か?まだ信用出来ない。部屋のキーも受け取り、一緒にエレベーターに乗って行ったと、興信所から聞いている。」
〚奥さん1人では恥ずかしいだろうから部屋まで送って、その人が来るまで待つように言われていました。〛
「どうしてその様に手の込んだ事を?」
〚ご主人が疑い出したと奥さんが言われたそうで、探偵でも付けられていると困るからと
言って。もしもの時自分は助かるようにしたのだと思います。奥さんは、私が送り迎えをしていた本当の理由は知らないはずです。〛
「その男は誰だ?どうして教師のお前がそこまでした?」
〚その人の名前と、理由は言えません。ごめんなさい。母を悲しませてしまう。私の口から、それだけは言えません。ごめんなさい。許して下さい。〛
鈴木君が走って出て行った後、1人残された私は失望と悲しみで声を出して泣きましたが、やがて悲しみは怒りに変わりました。
2015/06/10
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