長J『失くしたもの』第2章④ 13
長J『失くしたもの』第2章④ 13
5月22日(月)
待ち合わせ場所で私(平井慶介)が鈴木健一君の車に乗り込むと。
〚ご主人がまた連絡してくると思っていました。今度お会いしたら全て話そうと覚悟していました。〛
「そうか。実は今日、脅迫してでも聞き出そうと思っていたのだが・・・。」
〚自分の蒔いた種です。もう逃げない事にしました。奥さんの相手は野田和人です。たしか奥さんの上司だと思います。〛
〚僕は昨年、新任の教師としてこの学校へ赴任して来ました。新任なのにすぐにPTAの係にさせられ、何も分からない僕はお母さん達と上手く付き合う事ができずに悩んでいました。その時役員の1人だった野田の奥さんに優しくされ、誘われるままに関係を持ってしまいました。女の人が初めてだった僕は、彼女の身体に溺れてしまい、やがて探偵を付けられて発覚し、慰謝料も分割ですが払い終わりました。〛
〚ところが先月の初め野田に呼び出され、〔今不倫をしていて、ばれるかもしれない。俺が不倫したのもお前達のせいだ。ばれないように協力しろ。もしばれた時はお前が身代わりになれ。そうしないと学校、教育委員会、PTAに生徒の母親と不倫した教師を処分しろと言いに行く。〕そう脅されました。〛
「そうか。妻の菜月(なつき)から聞いた事にして、君の名前は出さない。ありがとう。」
私は急いで家に帰ります。
「お前の相手が分かったぞ。課長の野田だそうだな。あんなもっともらしい電話までして来やがって。なんて悪賢いやつだ。分かったからにはキッチリ責任は取ってもらう。」
『いいえ、違います。野田課長ではありません。違います。』
「まだ庇うのか?そんなにあいつが好きか?それなら明日会社に行って確かめてやる。」
『それだけは・・・お願い、それだけは止めて下さい。お願いします。お願いします。』
私は妻の泣き声を聞きながら、どう決着を付けるか考えました。
5月23日(火)
朝9時に妻の携帯から電話すると。
〔菜月どうした?不都合な事でも起こったのか?〕
「菜月?不都合な事?平井だ今から家に来い。話がある。用件は分かっているはずだ。」
〔あっ、ご主人。いえ。今から仕事で。今からは無理かと。今からは・・・。〕
「仕事?人の家庭を無茶苦茶にしておいて、仕事だと?そ、それならいい、今から俺がそちらに行く。」
誰か近くに来たのか、野田の口調が変わりました。
〔わかりました。今から御社にお伺い致します。〕
「御社?会社に行かれたらまずいのなら、すぐに来い。」
野田が来たのは午前11時を過ぎていました。部屋に入り腫れた妻の顔を見て全てを悟り、立ったまま頭を下げて謝罪しています。
「大きな会社の課長までしていて、謝り方も知らんのか?」
野田が慌てて土下座したのを見て近くに行き、蹴り倒して馬乗りになり、妻の時とは違い拳で2発殴りました。次に拳を振り上げた時、その腕に妻が両手で縋(すが)り付きます。
『あなた、もう止めて。許して下さい。どんな償いもします。何でもします。お願い、許して・・。』
野田は私が離れると、ハンカチで鼻血を拭きながら、ゆっくりと起き上がって正座しました。
「どうしてこうなった?妻が好きなのか?遊びか?」
〔私の家は家庭内別居しているようなもので、最初は相談に乗って貰っていましたが、その内に・・・。〕
「好きになったのか?お互いに好きという訳か。いいぞ、離婚してやる。今から連れて行け。ただ俺も長年親しんだ身体だ、名残惜しいので最後に1度だけさせろ。」
菜月の着衣を荒々しく剥ぎ取ろうとすると、妻は泣きながら抵抗します。それでも下着だけの格好にして野田を見ると、俯いたまま黙っていて顔を上げません。
「お前も見慣れた裸なので、あまり興奮しないかも知れないが、どうだ?いい身体だろ?40歳を過ぎているとは思えないだろ?この身体を譲るのだから安くは無いぞ。菜月、身体の中まで散々見せた間柄だろ?恥ずかしがらずに、いくらで買って貰えるか立ってよく見てもらえ!」
妻は膝を抱えて泣いています。野田も泣きそうな顔をして、
〔申しわけ御座いませんでした。許して下さい。離婚などは望んでいません。もう二度としませんので、許して下さい。〕
『あなた、ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい。』
野田は、〔明日また来ますので、今日はもう許して欲しい。〕と言い残し帰っていきました。
「俺も明日までに考えておくから、お前もよく考えろ!それと、離婚するつもりでいるが、もし離婚しない時でも、家政婦として置くつもりは無い。家政婦を抱く訳にもいかないから、女を抱きたくなったら金が掛かる。だから慰謝料は多い目に頼むな。」
私はこんな妻でも、情けない事にまだ未練があって、別れられないと思っていても、汚い言葉で強がりを言ってしまいます。別れる気は無くても、「別れる」と言って二人に対して強がる事だけが、妻を寝取られた私に残されたプライドでした。
2015/07/25
5月22日(月)
待ち合わせ場所で私(平井慶介)が鈴木健一君の車に乗り込むと。
〚ご主人がまた連絡してくると思っていました。今度お会いしたら全て話そうと覚悟していました。〛
「そうか。実は今日、脅迫してでも聞き出そうと思っていたのだが・・・。」
〚自分の蒔いた種です。もう逃げない事にしました。奥さんの相手は野田和人です。たしか奥さんの上司だと思います。〛
〚僕は昨年、新任の教師としてこの学校へ赴任して来ました。新任なのにすぐにPTAの係にさせられ、何も分からない僕はお母さん達と上手く付き合う事ができずに悩んでいました。その時役員の1人だった野田の奥さんに優しくされ、誘われるままに関係を持ってしまいました。女の人が初めてだった僕は、彼女の身体に溺れてしまい、やがて探偵を付けられて発覚し、慰謝料も分割ですが払い終わりました。〛
〚ところが先月の初め野田に呼び出され、〔今不倫をしていて、ばれるかもしれない。俺が不倫したのもお前達のせいだ。ばれないように協力しろ。もしばれた時はお前が身代わりになれ。そうしないと学校、教育委員会、PTAに生徒の母親と不倫した教師を処分しろと言いに行く。〕そう脅されました。〛
「そうか。妻の菜月(なつき)から聞いた事にして、君の名前は出さない。ありがとう。」
私は急いで家に帰ります。
「お前の相手が分かったぞ。課長の野田だそうだな。あんなもっともらしい電話までして来やがって。なんて悪賢いやつだ。分かったからにはキッチリ責任は取ってもらう。」
『いいえ、違います。野田課長ではありません。違います。』
「まだ庇うのか?そんなにあいつが好きか?それなら明日会社に行って確かめてやる。」
『それだけは・・・お願い、それだけは止めて下さい。お願いします。お願いします。』
私は妻の泣き声を聞きながら、どう決着を付けるか考えました。
5月23日(火)
朝9時に妻の携帯から電話すると。
〔菜月どうした?不都合な事でも起こったのか?〕
「菜月?不都合な事?平井だ今から家に来い。話がある。用件は分かっているはずだ。」
〔あっ、ご主人。いえ。今から仕事で。今からは無理かと。今からは・・・。〕
「仕事?人の家庭を無茶苦茶にしておいて、仕事だと?そ、それならいい、今から俺がそちらに行く。」
誰か近くに来たのか、野田の口調が変わりました。
〔わかりました。今から御社にお伺い致します。〕
「御社?会社に行かれたらまずいのなら、すぐに来い。」
野田が来たのは午前11時を過ぎていました。部屋に入り腫れた妻の顔を見て全てを悟り、立ったまま頭を下げて謝罪しています。
「大きな会社の課長までしていて、謝り方も知らんのか?」
野田が慌てて土下座したのを見て近くに行き、蹴り倒して馬乗りになり、妻の時とは違い拳で2発殴りました。次に拳を振り上げた時、その腕に妻が両手で縋(すが)り付きます。
『あなた、もう止めて。許して下さい。どんな償いもします。何でもします。お願い、許して・・。』
野田は私が離れると、ハンカチで鼻血を拭きながら、ゆっくりと起き上がって正座しました。
「どうしてこうなった?妻が好きなのか?遊びか?」
〔私の家は家庭内別居しているようなもので、最初は相談に乗って貰っていましたが、その内に・・・。〕
「好きになったのか?お互いに好きという訳か。いいぞ、離婚してやる。今から連れて行け。ただ俺も長年親しんだ身体だ、名残惜しいので最後に1度だけさせろ。」
菜月の着衣を荒々しく剥ぎ取ろうとすると、妻は泣きながら抵抗します。それでも下着だけの格好にして野田を見ると、俯いたまま黙っていて顔を上げません。
「お前も見慣れた裸なので、あまり興奮しないかも知れないが、どうだ?いい身体だろ?40歳を過ぎているとは思えないだろ?この身体を譲るのだから安くは無いぞ。菜月、身体の中まで散々見せた間柄だろ?恥ずかしがらずに、いくらで買って貰えるか立ってよく見てもらえ!」
妻は膝を抱えて泣いています。野田も泣きそうな顔をして、
〔申しわけ御座いませんでした。許して下さい。離婚などは望んでいません。もう二度としませんので、許して下さい。〕
『あなた、ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい。』
野田は、〔明日また来ますので、今日はもう許して欲しい。〕と言い残し帰っていきました。
「俺も明日までに考えておくから、お前もよく考えろ!それと、離婚するつもりでいるが、もし離婚しない時でも、家政婦として置くつもりは無い。家政婦を抱く訳にもいかないから、女を抱きたくなったら金が掛かる。だから慰謝料は多い目に頼むな。」
私はこんな妻でも、情けない事にまだ未練があって、別れられないと思っていても、汚い言葉で強がりを言ってしまいます。別れる気は無くても、「別れる」と言って二人に対して強がる事だけが、妻を寝取られた私に残されたプライドでした。
2015/07/25
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