長J『失くしたもの』第2章① 10
長J『失くしたもの』第2章① 10
5月14日(日)
昨夜の妻(菜月)は夕食の片付けが終わると『今日は疲れた。』と言い、お風呂に入るとほとんど話らしい話もしないで、謝りながらベッドに入って寝てしまいました。今朝起きてからも、私(平井慶介)の持ち帰った衣類を洗濯したりしていて、私と同じ部屋には一緒にいないので、話どころか顔も見せません。
昼食の時、やっと菜月(なつき)と話が出来たのですが、私の話には上の空でやはり元気が有りません。
「大丈夫か?凄く疲れているみたいだな。」
『大丈夫です。少し疲れているだけですから。それよりも・・・あなたに・・・お話が・・。やはりいいです。ごめんなさい。』
「なんだ?言い掛けて気持ちの悪い。もう、大抵の事では驚かないから言ってみろ!」
『このような事をしてしまって言い辛かったので、諦めていたのですが、今度の土曜日に温泉で私の行っていた女子高のクラス会があるのです。このような事をしてしまい断ったのですが、昨日、紀子から電話があって、〚菜月が行かないなら面白く無いのでわたし(紀子)も行かないと言われて・・・まだ間に合うから一緒に行こう。〛と言われて・・・いいえ。ごめんなさい。今の私は行ける立場ではありませんでした。忘れてください。・・・ごめんなさい。』
そう言われると、私は逆に寛大なところを見せてしまい。
「俺も知っている親友の紀子さんだろ?行ってくればいいじゃないか。菜月も疲れているようだし、気分転換になるだろ?行って来いよ。」
『いいの?ありがとう。ごめんんなさい。』菜月は一瞬だけほっとした顔になります。
妻はこの事が気になっていて、気持ちが沈んでいたのだと思いましたが、本当に疲れているのか、私が行く事を許してもなお元気がありませんでした。その後も、私と目を合わさない事が気になりました。
5月17日(水)
今日は少し早く帰れたので妻に電話をしましたが、やはり菜月は元気が無く。
「どうした?一度医者にでも見てもらった方が良くないか?」
『大丈夫です。仕事の事で少し悩みがあって・・・それで少し・・・ごめんなさい。』
「それならいいが、クラス会は大丈夫か?行けるのか?」
『はい・・・行けます・・・身体はどうもありません。ありがとう・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・心配掛けて・・・ごめんなさい・・・。』と最後は涙声。
「なんだ?泣いているのか?」
『あなたが優しいから・・・ご、ごめんなさい・・・。』
妻の菜月が泣いた訳は本当に優しくされたからでは無くて、何か私に隠し事をしている罪悪感から泣いたような気がしてなりません。電話をして余計に心配になりました。
5月19日(金)
まさかとは思いましたが、鈴木健一君の携帯に電話してしまいました。
「君に聞きたい事があるので明日の夜会えないか?」
〚その節はすみませんでした。何か・・・。〛
「いや。今回の事とは関係が無いのだが、君の勤めている中学に偶然知人の子供が通っていて、その子の事で相談したい事が・・・。」
〚虐めか何かですか?それなら明日でも明後日でもいつでもご都合の良い時間を言って下さい。〛
「・・・いや、やめておく。まだ知人に頼まれた訳ではないので、はっきりしてからにするよ。」
鈴木君に話した事は勿論全部嘘です。また妻の菜月を疑い出していた私は、もしかすると彼と温泉に行くのでは無いかと思い、鈴木君の反応を見たかっただけですが、彼の返答から、明日妻と会う事は無いと確信をしました。
2015/06/02
5月14日(日)
昨夜の妻(菜月)は夕食の片付けが終わると『今日は疲れた。』と言い、お風呂に入るとほとんど話らしい話もしないで、謝りながらベッドに入って寝てしまいました。今朝起きてからも、私(平井慶介)の持ち帰った衣類を洗濯したりしていて、私と同じ部屋には一緒にいないので、話どころか顔も見せません。
昼食の時、やっと菜月(なつき)と話が出来たのですが、私の話には上の空でやはり元気が有りません。
「大丈夫か?凄く疲れているみたいだな。」
『大丈夫です。少し疲れているだけですから。それよりも・・・あなたに・・・お話が・・。やはりいいです。ごめんなさい。』
「なんだ?言い掛けて気持ちの悪い。もう、大抵の事では驚かないから言ってみろ!」
『このような事をしてしまって言い辛かったので、諦めていたのですが、今度の土曜日に温泉で私の行っていた女子高のクラス会があるのです。このような事をしてしまい断ったのですが、昨日、紀子から電話があって、〚菜月が行かないなら面白く無いのでわたし(紀子)も行かないと言われて・・・まだ間に合うから一緒に行こう。〛と言われて・・・いいえ。ごめんなさい。今の私は行ける立場ではありませんでした。忘れてください。・・・ごめんなさい。』
そう言われると、私は逆に寛大なところを見せてしまい。
「俺も知っている親友の紀子さんだろ?行ってくればいいじゃないか。菜月も疲れているようだし、気分転換になるだろ?行って来いよ。」
『いいの?ありがとう。ごめんんなさい。』菜月は一瞬だけほっとした顔になります。
妻はこの事が気になっていて、気持ちが沈んでいたのだと思いましたが、本当に疲れているのか、私が行く事を許してもなお元気がありませんでした。その後も、私と目を合わさない事が気になりました。
5月17日(水)
今日は少し早く帰れたので妻に電話をしましたが、やはり菜月は元気が無く。
「どうした?一度医者にでも見てもらった方が良くないか?」
『大丈夫です。仕事の事で少し悩みがあって・・・それで少し・・・ごめんなさい。』
「それならいいが、クラス会は大丈夫か?行けるのか?」
『はい・・・行けます・・・身体はどうもありません。ありがとう・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・心配掛けて・・・ごめんなさい・・・。』と最後は涙声。
「なんだ?泣いているのか?」
『あなたが優しいから・・・ご、ごめんなさい・・・。』
妻の菜月が泣いた訳は本当に優しくされたからでは無くて、何か私に隠し事をしている罪悪感から泣いたような気がしてなりません。電話をして余計に心配になりました。
5月19日(金)
まさかとは思いましたが、鈴木健一君の携帯に電話してしまいました。
「君に聞きたい事があるので明日の夜会えないか?」
〚その節はすみませんでした。何か・・・。〛
「いや。今回の事とは関係が無いのだが、君の勤めている中学に偶然知人の子供が通っていて、その子の事で相談したい事が・・・。」
〚虐めか何かですか?それなら明日でも明後日でもいつでもご都合の良い時間を言って下さい。〛
「・・・いや、やめておく。まだ知人に頼まれた訳ではないので、はっきりしてからにするよ。」
鈴木君に話した事は勿論全部嘘です。また妻の菜月を疑い出していた私は、もしかすると彼と温泉に行くのでは無いかと思い、鈴木君の反応を見たかっただけですが、彼の返答から、明日妻と会う事は無いと確信をしました。
2015/06/02
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