中10〚新しい夫婦の形〛3章第3話 19
中10〚新しい夫婦の形〛3章第3話 19
僕(益岡健人)は金曜日の夜、園部君を目黒の居酒屋に誘った。《おひさしぶりです。》と彼が挨拶し、僕も「忙しいだろうに、ありがとう。」と応えた。本社企画部の園部祐太君は独身で今年28歳になる。色黒で背が高く、整った顔つきをしているが、現在は特定の彼女はいないようだ。以前に聞いたが、園部君は妻の希美(のぞみ)に若干の好意を抱いている。
僕は、この園部君が友人の須藤とトイレで妻の噂話をしているのを偶然にも聞いてしまった。噂話というのは、妻が出張中に同僚などと情事を重ねているということだった。その後、僕はこの園部君や須藤と共に噂話の真相をつかもうとしたが結局証拠をつかむことは出来なかったが、僕は妻の口から真実を聞き出すことが出来た。
しかし、一番最初に噂話を吹聴した佐々岡(これは僕より一つ上の先輩社員だが)はともかく、園部君と須藤は事の真相をいまだ知らない。もちろん僕は園部君に希美から聞いたことを話す気など少しもない。ただその後妻の会社での態度について知りたかったので園部君を飲みに誘った。
「まあ、堅くならないで、今日は二人でくつろいで飲もう。」園部君は僕に弱みを握られているので、僕の前ではいつも緊張した顔つきになる。しかし、飲み始めて30分もすると、すっかり二人ともリラックスしてきた。僕はなにげなく妻の様子を園部君に訊いてみた。
「妻(希美)の様子があれから変わったって、どういうことなんだ?」
〚僕の思い過ごしなのかもしれませんが、なんとなくそんな気がして・・・自宅では奥さんの様子は変わりないですか?〛
逆に園部君の方から妻の様子をうかがってきた。僕はこれに対してどう答えようかと一瞬迷った。
「いや、特に何も変わらないけど。」
平静を装って僕はそう園部君に答えた。その後ぼくたちは居酒屋で飲みながら当たり障りのない会話をした。
〚なんとなく、益岡さんも雰囲気が変わりましたね。〛
「えっ、どういうこと?」
〚この前までは奥さんのことになると、目の色を変えていたのに、今日の益岡さんはとても涼しい顔をしている。〛
「そうかな・・まあ、少し心境の変化はあったかな。」
〚どんな変化があったんですか?〛
すかさず園部君が突っ込んだ質問をしてくる。僕は予想の範囲内だったので、ひるむことなく園部君に答えた。
「この前までは妻が浮気をしたんじゃないかと、とても気になって自分を見失っていた。」
〚それは仕方ないですよ。〛
「でも、考え方を変えたんだ。」
〚考え方?〛
「そう、僕は妻を愛している。だから、妻の過去にたとえ何があったとしても、それをすべて受け入れようって。」
〚つまりそれは、浮気をしていても許すということですか?〛
「許すとか許さないとかじゃないんだ。妻も一人の人間で女だから、もしも仮に何かの事情で間違いを犯してしまったとしても、それらをひっくるめて妻を愛そうと思ったのさ。」
そう言うと園部君は言葉に詰まったようにぼくを見つめていた。
「考え方を変えると、不思議と夫婦仲までもが良くなってね。涼しい顔をしているというのはそこからきているのかもしれないな。」
僕は園部君の隣で余裕の表情でそう言うと、ジョッキのおかわりを店員に告げた。
その後僕たちは居酒屋で妻に関していろんな話をして時間をすごした。内容は当然当たり障りのない内容だったが、僕の知らない職場での希美のことを聞くのもとても興味深かった。
2015/06/02
僕(益岡健人)は金曜日の夜、園部君を目黒の居酒屋に誘った。《おひさしぶりです。》と彼が挨拶し、僕も「忙しいだろうに、ありがとう。」と応えた。本社企画部の園部祐太君は独身で今年28歳になる。色黒で背が高く、整った顔つきをしているが、現在は特定の彼女はいないようだ。以前に聞いたが、園部君は妻の希美(のぞみ)に若干の好意を抱いている。
僕は、この園部君が友人の須藤とトイレで妻の噂話をしているのを偶然にも聞いてしまった。噂話というのは、妻が出張中に同僚などと情事を重ねているということだった。その後、僕はこの園部君や須藤と共に噂話の真相をつかもうとしたが結局証拠をつかむことは出来なかったが、僕は妻の口から真実を聞き出すことが出来た。
しかし、一番最初に噂話を吹聴した佐々岡(これは僕より一つ上の先輩社員だが)はともかく、園部君と須藤は事の真相をいまだ知らない。もちろん僕は園部君に希美から聞いたことを話す気など少しもない。ただその後妻の会社での態度について知りたかったので園部君を飲みに誘った。
「まあ、堅くならないで、今日は二人でくつろいで飲もう。」園部君は僕に弱みを握られているので、僕の前ではいつも緊張した顔つきになる。しかし、飲み始めて30分もすると、すっかり二人ともリラックスしてきた。僕はなにげなく妻の様子を園部君に訊いてみた。
「妻(希美)の様子があれから変わったって、どういうことなんだ?」
〚僕の思い過ごしなのかもしれませんが、なんとなくそんな気がして・・・自宅では奥さんの様子は変わりないですか?〛
逆に園部君の方から妻の様子をうかがってきた。僕はこれに対してどう答えようかと一瞬迷った。
「いや、特に何も変わらないけど。」
平静を装って僕はそう園部君に答えた。その後ぼくたちは居酒屋で飲みながら当たり障りのない会話をした。
〚なんとなく、益岡さんも雰囲気が変わりましたね。〛
「えっ、どういうこと?」
〚この前までは奥さんのことになると、目の色を変えていたのに、今日の益岡さんはとても涼しい顔をしている。〛
「そうかな・・まあ、少し心境の変化はあったかな。」
〚どんな変化があったんですか?〛
すかさず園部君が突っ込んだ質問をしてくる。僕は予想の範囲内だったので、ひるむことなく園部君に答えた。
「この前までは妻が浮気をしたんじゃないかと、とても気になって自分を見失っていた。」
〚それは仕方ないですよ。〛
「でも、考え方を変えたんだ。」
〚考え方?〛
「そう、僕は妻を愛している。だから、妻の過去にたとえ何があったとしても、それをすべて受け入れようって。」
〚つまりそれは、浮気をしていても許すということですか?〛
「許すとか許さないとかじゃないんだ。妻も一人の人間で女だから、もしも仮に何かの事情で間違いを犯してしまったとしても、それらをひっくるめて妻を愛そうと思ったのさ。」
そう言うと園部君は言葉に詰まったようにぼくを見つめていた。
「考え方を変えると、不思議と夫婦仲までもが良くなってね。涼しい顔をしているというのはそこからきているのかもしれないな。」
僕は園部君の隣で余裕の表情でそう言うと、ジョッキのおかわりを店員に告げた。
その後僕たちは居酒屋で妻に関していろんな話をして時間をすごした。内容は当然当たり障りのない内容だったが、僕の知らない職場での希美のことを聞くのもとても興味深かった。
2015/06/02
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