中6〖不倫の代償〗第2章1話 09
中6〖不倫の代償〗第2章1話 09
カウンターを含め15席程度の店内は、既に2、3席を残し満員状態、三嶋雅美さんと私(篠田隆弘)は入店してから10分位は取り留めの無い話をしていると、店のドアが開き女性が一人入ってきました。
〚宏美!〛
〖お姉ちゃん!〗
「あっ深田(宏美)さんじゃないですか。」
〚知っているんですか妹を?〛
「仕事の関係で、ちょっと。」
驚いたことに、私も面識のある女性だったのです。そして、三嶋(旧姓:深田)雅美さんの妹だったのです。小さな市ですが、偶然というものは恐ろしいものです。宏美さんは同じ系列の販売店に勤める、いわば私の同業者でした。
その後もう一人女性が入って来ましたが、それは妹さんの連れでした。連れの女性は、三嶋さんとはかなり親しいようで、私たちのテーブルに座った瞬間から何の抵抗も無く会話をしていて、私は必然的に妹の宏美さんと話をするしかなかった。元々、今日の目的は済んでおり、宏美さんとの会話は新鮮味を感じることが出来たのも事実である。
彼女とは、店舗も近いと言うことからメーカーのイベントなどでも度々話す機会があったため、飲みながら話をしていると、杓子定規な話からプライベートの話に移行するには、時間を必要とはしなかった。宏美さんが妻の千遥(ちはる)と私の関係に微妙な役割を持ってくるのは、それから間もなくの事でした。
会話も弾み時間を忘れて、宏美さんと飲み続けていた。〚篠田さん、そろそろ、お開きにしませんか?〛私はかなり飲みすぎていたようでしたが、三嶋さんの問いかけに返事をして、マスターに会計を済ませ店を出ました、三人に挨拶をして少し歩き始めた時、不覚にも吐き気を覚え道路脇で戻してしまいました。
私の吐き気も治まったころ、背中を摩る手に気づき、「すみません。」と振り返るとそこには、今別れたばかりの宏美さんが、中腰の彼女は眉尻を下げて私の顔を覗き込んでいます。宏美さんは、後ろから私の肘を掴むように支えてくれて、深夜喫茶に連れて行ってくれました。
〖少し酔いを覚まして。〗
「すみません、少し楽になりました、すみません。」
時計を見ながら答える私、宏美さんが頼んでくれたらしいコーヒーがテーブルの上に差し出されました。それで私はまた、「すみません。」を連呼していました。私は若い女性に醜態を見せてしまったことが恥ずかしいのです。
水を一気に飲み干し、コーヒーに手を伸ばし一口啜ると、すぐに皿にカップを戻しました。
元々とコーヒーは好んで飲む方で無かった私は、コーヒーの熱さも手伝って、そのカップをまた手にすることは無かった。それでも水を3杯程飲んだころには、多少酔いも冷めて来た。
〖顔色が良くなってきましたね。〗
「助かりました。すみません。」と、また私は謝っている。
〖そろそろ帰りましょうか?〗
その時の私には、一回り近く年の違う宏美さんに醜態をさらしたという思いから、まともに顔を上げることが出来ません。通りに出てタクシーを待つ間、正気を取り戻し始めた私は、宏美さんに丁寧に感謝の意を伝えると、〖篠田さん、気にしないで下さい、詳しいことは知りませんが、辛い気持ちは良くわかります。〗
宏美さんと飲んでいる間、私は妻の不貞に関する事を知らず知らずに話していたのかも知れません、いや誰かに聞いてもらいたく、間接的に伝えていたのかも知れません。空車が一台停まりました。宏美さんを先に乗せます。その発車間際に、タクシーのウインドーが下がり宏美さんが言葉を掛けてくれました。
〖頑張ってください、私で良ければいつでもお付き合いします。〗と云ってくれる。
「ありがとう。」
タクシーは走り去り、深々と頭を下げた私の目から涙がこぼれ落ちた。
2015/05/30
カウンターを含め15席程度の店内は、既に2、3席を残し満員状態、三嶋雅美さんと私(篠田隆弘)は入店してから10分位は取り留めの無い話をしていると、店のドアが開き女性が一人入ってきました。
〚宏美!〛
〖お姉ちゃん!〗
「あっ深田(宏美)さんじゃないですか。」
〚知っているんですか妹を?〛
「仕事の関係で、ちょっと。」
驚いたことに、私も面識のある女性だったのです。そして、三嶋(旧姓:深田)雅美さんの妹だったのです。小さな市ですが、偶然というものは恐ろしいものです。宏美さんは同じ系列の販売店に勤める、いわば私の同業者でした。
その後もう一人女性が入って来ましたが、それは妹さんの連れでした。連れの女性は、三嶋さんとはかなり親しいようで、私たちのテーブルに座った瞬間から何の抵抗も無く会話をしていて、私は必然的に妹の宏美さんと話をするしかなかった。元々、今日の目的は済んでおり、宏美さんとの会話は新鮮味を感じることが出来たのも事実である。
彼女とは、店舗も近いと言うことからメーカーのイベントなどでも度々話す機会があったため、飲みながら話をしていると、杓子定規な話からプライベートの話に移行するには、時間を必要とはしなかった。宏美さんが妻の千遥(ちはる)と私の関係に微妙な役割を持ってくるのは、それから間もなくの事でした。
会話も弾み時間を忘れて、宏美さんと飲み続けていた。〚篠田さん、そろそろ、お開きにしませんか?〛私はかなり飲みすぎていたようでしたが、三嶋さんの問いかけに返事をして、マスターに会計を済ませ店を出ました、三人に挨拶をして少し歩き始めた時、不覚にも吐き気を覚え道路脇で戻してしまいました。
私の吐き気も治まったころ、背中を摩る手に気づき、「すみません。」と振り返るとそこには、今別れたばかりの宏美さんが、中腰の彼女は眉尻を下げて私の顔を覗き込んでいます。宏美さんは、後ろから私の肘を掴むように支えてくれて、深夜喫茶に連れて行ってくれました。
〖少し酔いを覚まして。〗
「すみません、少し楽になりました、すみません。」
時計を見ながら答える私、宏美さんが頼んでくれたらしいコーヒーがテーブルの上に差し出されました。それで私はまた、「すみません。」を連呼していました。私は若い女性に醜態を見せてしまったことが恥ずかしいのです。
水を一気に飲み干し、コーヒーに手を伸ばし一口啜ると、すぐに皿にカップを戻しました。
元々とコーヒーは好んで飲む方で無かった私は、コーヒーの熱さも手伝って、そのカップをまた手にすることは無かった。それでも水を3杯程飲んだころには、多少酔いも冷めて来た。
〖顔色が良くなってきましたね。〗
「助かりました。すみません。」と、また私は謝っている。
〖そろそろ帰りましょうか?〗
その時の私には、一回り近く年の違う宏美さんに醜態をさらしたという思いから、まともに顔を上げることが出来ません。通りに出てタクシーを待つ間、正気を取り戻し始めた私は、宏美さんに丁寧に感謝の意を伝えると、〖篠田さん、気にしないで下さい、詳しいことは知りませんが、辛い気持ちは良くわかります。〗
宏美さんと飲んでいる間、私は妻の不貞に関する事を知らず知らずに話していたのかも知れません、いや誰かに聞いてもらいたく、間接的に伝えていたのかも知れません。空車が一台停まりました。宏美さんを先に乗せます。その発車間際に、タクシーのウインドーが下がり宏美さんが言葉を掛けてくれました。
〖頑張ってください、私で良ければいつでもお付き合いします。〗と云ってくれる。
「ありがとう。」
タクシーは走り去り、深々と頭を下げた私の目から涙がこぼれ落ちた。
2015/05/30
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