長J『失くしたもの』第1章⑧
長J『失くしたもの』第1章⑧
4月22日(土)
今日の午後、鈴木健一と話し合うために妻の菜月(なつき)と朝早く赴任先を発ち、午前中に家に着きました。妻を家に残して、私(平井慶介)1人で鈴木の家に行くつもりでしたが、彼から電話があって、〚謝罪に行きたい。〛と申し出がありました。私は彼が言うように、謝罪する方が来るのが礼儀だと思い、提案を受け入れました。
午後1時位に鈴木はやって来ましたが、私が上がるように言っても、土間で土下座をしたまま顔も上げません。どうにか部屋に通しても、妻の菜月とは目を合わせる事も無く、また土下座をして謝罪の言葉を繰り返しています。妻も彼と目を合わせる事も無いのですが、時々心配そうな目で、彼の方を見る事はありました。
私は彼が少しでも逆らったり、逆切れしたりした時は勤務している学校へも行き、徹底的にやるつもりでしたが、私がどんなに罵声を浴びせても、その度に謝罪する姿を見ていて、彼の事を許さなければ仕方が無いのかと思い始めていました。
〚お金で済む問題とは思っていませんが、ここに百万預かってきました。もう二度と連絡もとりません。会う事もしません。約束しますのでどうか今回の事はこれで許して下さい。お願いします。誓約書も書きます。お願いします。〛
「預かってきた?」
〚いいえ、違います。緊張していて言い間違いました。すみません。〛
教師になって1、2年で百万円は、楽な金額では無いと思い、誠実さも少し分かって、彼を許さなければ仕方ないと思いました。
4月23日(日)
許したと言っても、やはり妻と彼の事が気になり、今日も朝から質問ばかりしていました。
「どうして俺とはキスすら拒んだ?」
『ごめんなさい。どんな理由があっても私の身体は汚れてしまいました。こんな身体では申し訳なくて。あなたに悪くて・・・それで・・・。』
菜月は質問する度に泣いて謝りましたが、気になる事は全て聞いて、早く忘れるように努力しようと思います。
4月29日(土・祝)
今日は祭日(昭和の日)ですが、赴任先のマンションに1人でいます。自宅には連休後半の5月2日(火)の夜に戻るつもりです。結局、妻の菜月には、勤めを続けさせる事にしました。仕事を続けさせる事は、経済的な理由も有りましたが、妻の精神的な事も考えて、今までの生活に戻るのが1番良いと判断したからです。あの時は興奮して、「子供や両親に全て話す。」と言いましたが、それをしてしまっては妻の居場所が無くなり、本当に死んでしまい兼ねないのと思ったからです。
昼ごろ自宅へ電話をしましたが、妻は出なかったので携帯に電話すると、そこは浮気していた時に聞こえていたのと同じBGMが聞こえています。
「今何処にいる?また会っているのじゃ無いだろうな?」
『違います。連絡したとおり今日は仕事です。今昼休みで近くの喫茶店にみんなで来ています。本当です。信じてください。信用出来ないのなら、今課長と代わります。』
「いや。そこまではいい。」
自分が休みだったので、妻が休日出勤なのを忘れていました。それでも念の為に鈴木から聞いておいた携帯に電話すると、〚今日は子供達の部活を看ている。〛と言われ、確かに子供達の声も聞こえていました。妻を1人残してきても、妻の様子とあの男の態度を見る限り、接触を持つ事は無いと信じている積もりでしたが、まだ日が浅いせいか完全には信用出来ないでいます。
2015/05/25
4月22日(土)
今日の午後、鈴木健一と話し合うために妻の菜月(なつき)と朝早く赴任先を発ち、午前中に家に着きました。妻を家に残して、私(平井慶介)1人で鈴木の家に行くつもりでしたが、彼から電話があって、〚謝罪に行きたい。〛と申し出がありました。私は彼が言うように、謝罪する方が来るのが礼儀だと思い、提案を受け入れました。
午後1時位に鈴木はやって来ましたが、私が上がるように言っても、土間で土下座をしたまま顔も上げません。どうにか部屋に通しても、妻の菜月とは目を合わせる事も無く、また土下座をして謝罪の言葉を繰り返しています。妻も彼と目を合わせる事も無いのですが、時々心配そうな目で、彼の方を見る事はありました。
私は彼が少しでも逆らったり、逆切れしたりした時は勤務している学校へも行き、徹底的にやるつもりでしたが、私がどんなに罵声を浴びせても、その度に謝罪する姿を見ていて、彼の事を許さなければ仕方が無いのかと思い始めていました。
〚お金で済む問題とは思っていませんが、ここに百万預かってきました。もう二度と連絡もとりません。会う事もしません。約束しますのでどうか今回の事はこれで許して下さい。お願いします。誓約書も書きます。お願いします。〛
「預かってきた?」
〚いいえ、違います。緊張していて言い間違いました。すみません。〛
教師になって1、2年で百万円は、楽な金額では無いと思い、誠実さも少し分かって、彼を許さなければ仕方ないと思いました。
4月23日(日)
許したと言っても、やはり妻と彼の事が気になり、今日も朝から質問ばかりしていました。
「どうして俺とはキスすら拒んだ?」
『ごめんなさい。どんな理由があっても私の身体は汚れてしまいました。こんな身体では申し訳なくて。あなたに悪くて・・・それで・・・。』
菜月は質問する度に泣いて謝りましたが、気になる事は全て聞いて、早く忘れるように努力しようと思います。
4月29日(土・祝)
今日は祭日(昭和の日)ですが、赴任先のマンションに1人でいます。自宅には連休後半の5月2日(火)の夜に戻るつもりです。結局、妻の菜月には、勤めを続けさせる事にしました。仕事を続けさせる事は、経済的な理由も有りましたが、妻の精神的な事も考えて、今までの生活に戻るのが1番良いと判断したからです。あの時は興奮して、「子供や両親に全て話す。」と言いましたが、それをしてしまっては妻の居場所が無くなり、本当に死んでしまい兼ねないのと思ったからです。
昼ごろ自宅へ電話をしましたが、妻は出なかったので携帯に電話すると、そこは浮気していた時に聞こえていたのと同じBGMが聞こえています。
「今何処にいる?また会っているのじゃ無いだろうな?」
『違います。連絡したとおり今日は仕事です。今昼休みで近くの喫茶店にみんなで来ています。本当です。信じてください。信用出来ないのなら、今課長と代わります。』
「いや。そこまではいい。」
自分が休みだったので、妻が休日出勤なのを忘れていました。それでも念の為に鈴木から聞いておいた携帯に電話すると、〚今日は子供達の部活を看ている。〛と言われ、確かに子供達の声も聞こえていました。妻を1人残してきても、妻の様子とあの男の態度を見る限り、接触を持つ事は無いと信じている積もりでしたが、まだ日が浅いせいか完全には信用出来ないでいます。
2015/05/25
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