中11 〖家庭教師の誤算 第10回〗
中11 〖家庭教師の誤算 第10回〗
だから、香澄(かすみ)と二人きりになっても彼女は自習を続け、僕はマンガや雑誌を読ませてもらって、お茶を飲みながら雑談をしては帰っていった。けれど、そんな雑談の中で香澄は少しずつ自分のことを話してくれるようになった。
「香澄ちゃん、ホントは勉強できるんだよね?」
香澄は謙遜もせずに、はっきりと頷いて見せる。
「どうして、出来ないふりをしているの?」
『だって、親に変に期待をさせない方がいいでしょう?』
「えっ、どういうこと?」
『だって、勉強したいって思ったことないし、いつまでもできるとも思っていないから。』
おかしな理屈だと思ったが、もっと訊ねたいことがあった。
「最初に会った時、香澄ちゃん、すごい不良少女のフリをしていたよね。」
香澄はこれにも頷く。
「どっちが本当の香澄ちゃんなの?」
『どっちって?』
「あの時の香澄ちゃんと今の香澄ちゃん。」
『ああ、それはどっちもだよ。』(不思議系少女ダナ・・・)
「どういうこと?」
『先生、問題解いていないのに、質問多いよ。』
香澄はそう言って、悪戯っぽく笑うと話をはぐらかす。僕が困った顔をすると、香澄は『いいけどね。』と呟いて言葉を継いだ。
『どっちかというと今の私だけど、ちょっと先生の反応を見たかったんだ。』
「僕を試したってこと?」
『試したわけじゃないけど、先生のリアクションが見たかったの。』
「どうして?」
『どうしてって・・・。』
香澄は更に何かを言いかけたが、思い直したようにこう言った。
『ナイショ。』
しばらく沈黙が流れて、香澄は自習を続けている。
『ほんとはね・・。』
香澄の声で読んでいた雑誌から目を上げると、香澄は僕に背中を向けたまま続けた。
『最初は悪い印象で、だんだん印象が良くなって行ったら、少しは先生が私に興味を持ってくれるかなって・・・。』
変わった娘であることはわかっていたが、かなり屈折しているように思えた。しかし、香澄の思惑通りに、僕の香澄に対する気持ちは加速度的に高まっていく。
「でも、人は第一印象が大事だって言うよ。」
『うん、でも普通にしていたら先生が振り向いてくれるわけないモン。』
僕は嬉しくて、香澄の背後に立つと両手を香澄の頭にやって旋毛の所に軽くキスをした。シャンプーのいい香りが僕の鼻腔をくすぐった。
《・・・あれ?でも、あの時初めて会ったのに、何でそんな対策してたんだ?家庭教師なら誰でも良かったのか?》そう疑問が湧いたけど、しばらくしたら忘れてしまう。それからの僕たちはストイックなほどにプラトニックだった。それでも、たまに帰り際に香澄が抱きついてくることがあって、そのときは熱いキスを交わしたりしたけど、それだけだった。
2015/04/16
だから、香澄(かすみ)と二人きりになっても彼女は自習を続け、僕はマンガや雑誌を読ませてもらって、お茶を飲みながら雑談をしては帰っていった。けれど、そんな雑談の中で香澄は少しずつ自分のことを話してくれるようになった。
「香澄ちゃん、ホントは勉強できるんだよね?」
香澄は謙遜もせずに、はっきりと頷いて見せる。
「どうして、出来ないふりをしているの?」
『だって、親に変に期待をさせない方がいいでしょう?』
「えっ、どういうこと?」
『だって、勉強したいって思ったことないし、いつまでもできるとも思っていないから。』
おかしな理屈だと思ったが、もっと訊ねたいことがあった。
「最初に会った時、香澄ちゃん、すごい不良少女のフリをしていたよね。」
香澄はこれにも頷く。
「どっちが本当の香澄ちゃんなの?」
『どっちって?』
「あの時の香澄ちゃんと今の香澄ちゃん。」
『ああ、それはどっちもだよ。』(不思議系少女ダナ・・・)
「どういうこと?」
『先生、問題解いていないのに、質問多いよ。』
香澄はそう言って、悪戯っぽく笑うと話をはぐらかす。僕が困った顔をすると、香澄は『いいけどね。』と呟いて言葉を継いだ。
『どっちかというと今の私だけど、ちょっと先生の反応を見たかったんだ。』
「僕を試したってこと?」
『試したわけじゃないけど、先生のリアクションが見たかったの。』
「どうして?」
『どうしてって・・・。』
香澄は更に何かを言いかけたが、思い直したようにこう言った。
『ナイショ。』
しばらく沈黙が流れて、香澄は自習を続けている。
『ほんとはね・・。』
香澄の声で読んでいた雑誌から目を上げると、香澄は僕に背中を向けたまま続けた。
『最初は悪い印象で、だんだん印象が良くなって行ったら、少しは先生が私に興味を持ってくれるかなって・・・。』
変わった娘であることはわかっていたが、かなり屈折しているように思えた。しかし、香澄の思惑通りに、僕の香澄に対する気持ちは加速度的に高まっていく。
「でも、人は第一印象が大事だって言うよ。」
『うん、でも普通にしていたら先生が振り向いてくれるわけないモン。』
僕は嬉しくて、香澄の背後に立つと両手を香澄の頭にやって旋毛の所に軽くキスをした。シャンプーのいい香りが僕の鼻腔をくすぐった。
《・・・あれ?でも、あの時初めて会ったのに、何でそんな対策してたんだ?家庭教師なら誰でも良かったのか?》そう疑問が湧いたけど、しばらくしたら忘れてしまう。それからの僕たちはストイックなほどにプラトニックだった。それでも、たまに帰り際に香澄が抱きついてくることがあって、そのときは熱いキスを交わしたりしたけど、それだけだった。
2015/04/16
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