中Ⅱ1〔叔父と妻・・そして私〕第3話
中Ⅱ1〔叔父と妻・・そして私〕第3話
第2話
翌日、妻(村上直美:むらかみ・なおみ:36歳)は前日に叔父(村上二郎:むらかみ・じろう:60歳)から受け取った金の振込みに朝から出ていました。私(村上正俊:むらかみ・まさとし:38歳)は会社で相変わらずの残務処理に追われ、時間はお昼を回っています。妻の仕事も一息つく頃だろうと思って、昼飯に誘うために携帯を鳴らしました。直美はすぐに携帯に出て、『振込みは終わったわ。』と、少し声をはずませています。妻も毎日気苦労が耐えず、そんな風に「かわいいなぁ。」と思うような話し方も表情も、しばらくご無沙汰でした。
直美とは大学時代にサークルで知り合ってから、ずっと一緒です。大学2年生の時に学内のミスコンテストに、エントリーされた事だけが妻の唯一の自慢です(あくまでもエントリーしただけなのですが…)。でも、私にとっては一番かわいい女性でした。子供に恵まれなかった事もあり、妻への愛しさは昔と変わらないのです。
妻を近くのファミレスに誘いました。まだ先が真っ暗な事には変わりないのですが、とりあえずの金策ができた事で少し気持ちが楽になっていました。お昼をだいぶ過ぎ、遅めのランチを妻と摂ります。そこに直美の携帯が鳴り、妻は慌てた様子で『ちょっとごめんなさい。』と、出入口の方に歩いて行きます。姿は見えなくなりました。
5分くらい経ったと思います。妻が戻って来ました。心なしか、電話に立つ前より疲れた表情をしています。それで私は心配になり、「どうかしたの?」と声を掛けると、急に笑顔を作った妻は、『叔父(村上二郎)さんが残りの金を用意したから取りに来いと言っているので、わたしが行ってくるね…。』と言います。
予想以上に早く金を用意してくれた事のお礼も言わなければならないので、「私が叔父の家に行くよ。」と言いましたが、妻の直美が『あなたは会社でやる事がいっぱいでしょ?いいの、わたしが行ってくるから…。』って、そう言い終わらないうちに立ち上がり、出入口の方に向かってしまいます。そして私は一人残されて飲みかけのコーヒーを飲み干し、会社へ戻りました。
今から考えれば、その時点で不自然な事や、不審な点はありました。叔父から妻への直接
の電話、私に有無を言わさないような態度で、一人叔父の家へ赴く妻の直美…でも、その
時は“金策”のことしか考えていませんでした。
私は会社に戻り、残務処理に加えてその日の朝、急に辞表を出した従業員に代わって工場の機械も稼働させなければなりません。それから、一段落つくと時計は夕方6時をまわっていました。しかし、私はまだ妻が帰って来ず、連絡すら無い事にやっと気付きました。
それで私は妻の携帯を鳴らします…でも何コールしても出る気配は無く、ついに心配になり叔父の自宅に電話を掛けてみましたが数コールの後、留守電になってしまいました。《直美の身になにかあったのだろうか?…》漠然とした不安がよぎり、私は迎えに行こうと車に乗り込みます。
その時、私の携帯が鳴り、それは妻からの着信でした。「どうかした!?」と問う私に、妻は『…どうもしないよ…お金受け取ったので、今から帰るね。あなたは先に家に帰っていて。』と、冷めたような、気の抜けたような声です。そんな妻の声を聞いたのは、結婚生活の中でその時が初めてだったと思います…。
妻からの電話の後、私は自宅へ帰り妻の直美を待ちました。程なくして帰ってきましたが電話での気の抜けた声そのままに、妻は疲れたような表情をしています。「どうした?具合でも悪いのか?」と問い掛けると、直美が俯いたまま首を横に振り、『大丈夫よ…ちょっと疲れただけ…。これがお金ね、300万円入っているわ。残りの200万円は明日用意するって、大事な話もあるから、あなたも一緒に取りに来てって言われた…。』
妻の直美は金の入った封筒を私に渡します。不覚にも、その時にはそれ以上妻の事を気に掛ける事は無く、次の金策と今後の自分達の身の振り方で頭がいっぱいになっていました。 第4話に続く
2016/01/02
第2話
翌日、妻(村上直美:むらかみ・なおみ:36歳)は前日に叔父(村上二郎:むらかみ・じろう:60歳)から受け取った金の振込みに朝から出ていました。私(村上正俊:むらかみ・まさとし:38歳)は会社で相変わらずの残務処理に追われ、時間はお昼を回っています。妻の仕事も一息つく頃だろうと思って、昼飯に誘うために携帯を鳴らしました。直美はすぐに携帯に出て、『振込みは終わったわ。』と、少し声をはずませています。妻も毎日気苦労が耐えず、そんな風に「かわいいなぁ。」と思うような話し方も表情も、しばらくご無沙汰でした。
直美とは大学時代にサークルで知り合ってから、ずっと一緒です。大学2年生の時に学内のミスコンテストに、エントリーされた事だけが妻の唯一の自慢です(あくまでもエントリーしただけなのですが…)。でも、私にとっては一番かわいい女性でした。子供に恵まれなかった事もあり、妻への愛しさは昔と変わらないのです。
妻を近くのファミレスに誘いました。まだ先が真っ暗な事には変わりないのですが、とりあえずの金策ができた事で少し気持ちが楽になっていました。お昼をだいぶ過ぎ、遅めのランチを妻と摂ります。そこに直美の携帯が鳴り、妻は慌てた様子で『ちょっとごめんなさい。』と、出入口の方に歩いて行きます。姿は見えなくなりました。
5分くらい経ったと思います。妻が戻って来ました。心なしか、電話に立つ前より疲れた表情をしています。それで私は心配になり、「どうかしたの?」と声を掛けると、急に笑顔を作った妻は、『叔父(村上二郎)さんが残りの金を用意したから取りに来いと言っているので、わたしが行ってくるね…。』と言います。
予想以上に早く金を用意してくれた事のお礼も言わなければならないので、「私が叔父の家に行くよ。」と言いましたが、妻の直美が『あなたは会社でやる事がいっぱいでしょ?いいの、わたしが行ってくるから…。』って、そう言い終わらないうちに立ち上がり、出入口の方に向かってしまいます。そして私は一人残されて飲みかけのコーヒーを飲み干し、会社へ戻りました。
今から考えれば、その時点で不自然な事や、不審な点はありました。叔父から妻への直接
の電話、私に有無を言わさないような態度で、一人叔父の家へ赴く妻の直美…でも、その
時は“金策”のことしか考えていませんでした。
私は会社に戻り、残務処理に加えてその日の朝、急に辞表を出した従業員に代わって工場の機械も稼働させなければなりません。それから、一段落つくと時計は夕方6時をまわっていました。しかし、私はまだ妻が帰って来ず、連絡すら無い事にやっと気付きました。
それで私は妻の携帯を鳴らします…でも何コールしても出る気配は無く、ついに心配になり叔父の自宅に電話を掛けてみましたが数コールの後、留守電になってしまいました。《直美の身になにかあったのだろうか?…》漠然とした不安がよぎり、私は迎えに行こうと車に乗り込みます。
その時、私の携帯が鳴り、それは妻からの着信でした。「どうかした!?」と問う私に、妻は『…どうもしないよ…お金受け取ったので、今から帰るね。あなたは先に家に帰っていて。』と、冷めたような、気の抜けたような声です。そんな妻の声を聞いたのは、結婚生活の中でその時が初めてだったと思います…。
妻からの電話の後、私は自宅へ帰り妻の直美を待ちました。程なくして帰ってきましたが電話での気の抜けた声そのままに、妻は疲れたような表情をしています。「どうした?具合でも悪いのか?」と問い掛けると、直美が俯いたまま首を横に振り、『大丈夫よ…ちょっと疲れただけ…。これがお金ね、300万円入っているわ。残りの200万円は明日用意するって、大事な話もあるから、あなたも一緒に取りに来てって言われた…。』
妻の直美は金の入った封筒を私に渡します。不覚にも、その時にはそれ以上妻の事を気に掛ける事は無く、次の金策と今後の自分達の身の振り方で頭がいっぱいになっていました。 第4話に続く
2016/01/02
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