中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第一章その4
中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第一章その4
心の中に燻り続ける邪な想いを我慢できなくなった私(山下一雄:やました・かずお:49歳)は、それから数日経ったある夜、妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)にそのことを切り出します。
こうして、実行に向けての第一歩を踏み出してしまうと、頭の中だけで思い描いていた絵空事がより現実味をおびてきて、妖しい胸の震えを覚えました。
「あれから、しばらく経つんだけど・・また、俺の我儘を聞き入れてほしいんだ。」
このようなことを妻にもちかける私の態度も、何かしら命令口調になっていることに、自分では気づきません。
『えぇ~?・・わたし、今、仕事がとても忙しいの。すぐには無理よ。でも、もう、そろそろ、そんなこと言われるんじゃないかって思ってたわ。』
「いや、いつでもいいんだ。ただ、前もって、おまえの許しを得ておこうと思って・・・仕事が一区切りついた時でいいから、頼むよ。」
『わたし達の約束通りって、こと・・? 仕様がないわ。だって、『今後のことは、あなた次第よ』って、言っちゃったんだから・・・それでも、ちょっと、早すぎるんじゃない?』
「そんなこと、ないだろ?? この前は、おまえ一人で愉しんできたからな。」
妻の芳恵は、そんなに深く思い悩む様子もなく、意外にあっさりと私の申し出を受け入れてくれた。こんな風に素直に受け入れたということは、『あなたが、無理言ったから・・・』なんて、後で、言い訳や申し開きをするつもりもないのでしょう。しかし、いとも簡単に私の願いが通ったことを思うと、何だか、気抜けしたような 淋しいような・・・複雑な気分になってきます。
これまで妻に対して、色々な無理難題を持ちかけ、結果的にそのことを受け入れさせてきました。夫の求めに対する妻の態度も、私以外の男に抱かれる前までは、頑なに首を横に振っていたものですが、夫婦の一線を越えてよく似た体験を重ねているうちに、段々と、私の求めを拒むことも少なくなってきました。
《想像する限りだが、私との交わりでは味わえなかった官能の記憶が体の奥深くに刻み込まれ、そのうち、他人に体を開く慄(おのの)きが薄らいでいって、彼女の倫理観が歪(ゆが)んでしまったのかもしれない・・・。》
「随分とすんなり、聞き入れてくれたところを見ると、おまえもあの時、『今夜のこと、記念にとっておきます。』って、言ったほどだから、時々は、そのことを思い出して体が疼(うず)くこともあるんだろ?」
『あなたほどじゃないと思うけど、たまには・・ね。』
「篠田(学)と、昼風呂に入って・・・そそり立ったもので、突きあげられた時のことか?」
『どうして、そんなイヤらしい言い方するの? あなた、この頃、変よ。
昔は、そんな言い方しなかったのに・・・ 何だか、変わったみたい。』
「こんなことを続けていると、変わってくるのは・・・お互い様だろ? でも、これから先も俺達ずっと一緒なんだから、本音で答えてくれてもいいじゃないか?」
『篠田さんと一緒に、お風呂に入った時のこと・・? だって、実際にあったことでしょ? 正直言うと、たまに思い出すことはあるわ。』
「あの時、『今日は、だめっ!』って、答える気にはならなかったのか?」
『そんなの無理よ。だって、昨夜抱かれた男性と今日も一緒なんだなぁと思うと、すごく幸せな気分になってきて・・・それに、〔もう一度、抱かせていただけませんか?〕って、あんな風に優しく言われると、どんな女の人でも、そうなっても構わないと思ってしまうわ。』
「それじゃ、いよいよという時は、もう 堪らなかっただろう?」
『う・・・・ん、何だか、体がじ~んとしてきちゃって、それで、行き場を失ってびくびくしてる感じかな? 頭がぼ~ぅとなってきて、夢中で彼の背中を抱きしめていたわ。』
《そうか・・・それほどまでに、よかったのか? 心を開いた男性と二人っきりで性戯に浸(ひた)る悦び・・・そうなっても構わないと私が了承したことだから、それを非難することはできないが、胸がうち震えるような悦びは、夫が傍にいないからこそ感じられる邪淫の悦びなのだろう。》
妻が、本来 夫に言い難いようなことを、気恥ずかしさを捨てて語ってくれると、夫婦の情が細やかに通ってきます。 第一章その5に続く
2017/01/06
心の中に燻り続ける邪な想いを我慢できなくなった私(山下一雄:やました・かずお:49歳)は、それから数日経ったある夜、妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)にそのことを切り出します。
こうして、実行に向けての第一歩を踏み出してしまうと、頭の中だけで思い描いていた絵空事がより現実味をおびてきて、妖しい胸の震えを覚えました。
「あれから、しばらく経つんだけど・・また、俺の我儘を聞き入れてほしいんだ。」
このようなことを妻にもちかける私の態度も、何かしら命令口調になっていることに、自分では気づきません。
『えぇ~?・・わたし、今、仕事がとても忙しいの。すぐには無理よ。でも、もう、そろそろ、そんなこと言われるんじゃないかって思ってたわ。』
「いや、いつでもいいんだ。ただ、前もって、おまえの許しを得ておこうと思って・・・仕事が一区切りついた時でいいから、頼むよ。」
『わたし達の約束通りって、こと・・? 仕様がないわ。だって、『今後のことは、あなた次第よ』って、言っちゃったんだから・・・それでも、ちょっと、早すぎるんじゃない?』
「そんなこと、ないだろ?? この前は、おまえ一人で愉しんできたからな。」
妻の芳恵は、そんなに深く思い悩む様子もなく、意外にあっさりと私の申し出を受け入れてくれた。こんな風に素直に受け入れたということは、『あなたが、無理言ったから・・・』なんて、後で、言い訳や申し開きをするつもりもないのでしょう。しかし、いとも簡単に私の願いが通ったことを思うと、何だか、気抜けしたような 淋しいような・・・複雑な気分になってきます。
これまで妻に対して、色々な無理難題を持ちかけ、結果的にそのことを受け入れさせてきました。夫の求めに対する妻の態度も、私以外の男に抱かれる前までは、頑なに首を横に振っていたものですが、夫婦の一線を越えてよく似た体験を重ねているうちに、段々と、私の求めを拒むことも少なくなってきました。
《想像する限りだが、私との交わりでは味わえなかった官能の記憶が体の奥深くに刻み込まれ、そのうち、他人に体を開く慄(おのの)きが薄らいでいって、彼女の倫理観が歪(ゆが)んでしまったのかもしれない・・・。》
「随分とすんなり、聞き入れてくれたところを見ると、おまえもあの時、『今夜のこと、記念にとっておきます。』って、言ったほどだから、時々は、そのことを思い出して体が疼(うず)くこともあるんだろ?」
『あなたほどじゃないと思うけど、たまには・・ね。』
「篠田(学)と、昼風呂に入って・・・そそり立ったもので、突きあげられた時のことか?」
『どうして、そんなイヤらしい言い方するの? あなた、この頃、変よ。
昔は、そんな言い方しなかったのに・・・ 何だか、変わったみたい。』
「こんなことを続けていると、変わってくるのは・・・お互い様だろ? でも、これから先も俺達ずっと一緒なんだから、本音で答えてくれてもいいじゃないか?」
『篠田さんと一緒に、お風呂に入った時のこと・・? だって、実際にあったことでしょ? 正直言うと、たまに思い出すことはあるわ。』
「あの時、『今日は、だめっ!』って、答える気にはならなかったのか?」
『そんなの無理よ。だって、昨夜抱かれた男性と今日も一緒なんだなぁと思うと、すごく幸せな気分になってきて・・・それに、〔もう一度、抱かせていただけませんか?〕って、あんな風に優しく言われると、どんな女の人でも、そうなっても構わないと思ってしまうわ。』
「それじゃ、いよいよという時は、もう 堪らなかっただろう?」
『う・・・・ん、何だか、体がじ~んとしてきちゃって、それで、行き場を失ってびくびくしてる感じかな? 頭がぼ~ぅとなってきて、夢中で彼の背中を抱きしめていたわ。』
《そうか・・・それほどまでに、よかったのか? 心を開いた男性と二人っきりで性戯に浸(ひた)る悦び・・・そうなっても構わないと私が了承したことだから、それを非難することはできないが、胸がうち震えるような悦びは、夫が傍にいないからこそ感じられる邪淫の悦びなのだろう。》
妻が、本来 夫に言い難いようなことを、気恥ずかしさを捨てて語ってくれると、夫婦の情が細やかに通ってきます。 第一章その5に続く
2017/01/06
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