中10〚新しい夫婦の形〛2章第5話 12
中10〚新しい夫婦の形〛2章第5話 12
その日三度目の射精を終えてからだった。もう時間は深夜2時を過ぎていた。
「なあ希美(のぞみ)、ひょっとしてこれが僕と最後の夜だと思っているんじゃないか?」
妻は“はっ”とした顔をして僕を見た。
「僕はこんなに素敵な希美を一生離さないつもりだよ。」
『でも、私は・・あなたを裏切った・・・。』
「裏切ったのかどうかは、これから僕が決めるよ。」
『それは・・どういうこと?・・・あなた・・。』
妻の希美は不思議そうに僕を見つめてそう言った。
「僕に今までのことを全て話して欲しい・・。」
そう言うと僕はもう一度妻を抱きしめた。
「明日は君休みなんだろ?僕も明日は仕事を休むよ。だから今からゆっくり今までのことを聞かせて欲しいんだ。」
そう言って僕は希美の髪を撫で付けた。妻は僕の胸の中で泣きながら『ごめんなさい・・・』と何度もつぶやいていた。
「もう泣かなくていいよ。こんなことになったのは僕のせいでもあるのかもしれない。だから…全部今までのことをありのまま話してほしい…。」
妻は赤く腫らした目を僕に見せると、『わかったわ・・。』と小さく言った。
「それと、僕は君に答えづらい質問もするかもしれないけど、正直に答えて欲しい。今後の僕たちのためにも・・。」
希美はそれを聞くと小さく頷く。しばらくすると彼女は最初の男の話を語り始めた。
『一番最初は4年前、甲府に行った時で相手は植村さんだったの・・・。』
妻は最初の男の話をそう言って言い出し始めた。植村一雅と言うのは妻より一つ上の社員で僕よりも一つ下だ。一年前に企画立案の能力を買われ、仙台のグループ会社に部長職で出向となっている。妻は入社以来一番歳の近い先輩社員ということでいろいろと親しかったようだ。
『親しいと言っても同僚としてということで、それまでは男と女を意識したことは一度もなかった。』と言う。当時植村はまだ新婚だった。しかし出産を控えた新妻は実家に里帰りしていたらしい。甲府への出張は当日に急慮決まったもので、そもそも日帰りの予定で妻と植村は出発した。
現地でのトラブルで以外と仕事が長引き、終わったのが夜の7時を回っていたと言う。甲府駅に着くと植村は突然妻の手をとって言ってきた。〚なあ、明日は休みだし、もう遅いから今日は泊まっていかないか?〛植村と二人で出張というのはそれまでにも何回かあったが、その時の植村の表情が今までのものとは違っていたとすぐに希美は感じ取ったようだった。
『主人に聞いてみないと・・・。』はすぐには返答せず植村にそう言ったらしい。その頃僕はちょうど大切なお得意様の接待だった。そんな時に妻から電話がかかってきて、「泊まればいいよ、そんなことでいちいち電話してくるな。」とそっけない返答をしたと言うが覚えていない。
希美と植村はその後海鮮料理屋に行き食事を取ったという。約一時間くらいはそれまでの仲の良い先輩と後輩だったが、お酒が進み、ふともらした植村の言葉から方向が変わっていく。
〚お前のところはもう結婚して3年たつけど子供はまだなのか?〛
『うん。あの人、今仕事が忙しいし・・それどころじゃないみたい・・。』
〚そっか、俺も嫁さん実家に帰ってるからご無沙汰なんだ。今日は寂しいもの同士で盛り上がるか?〛
妻はその時の植村のセリフをそんな風に覚えている。その後トイレにたった植村から、〚目の前のホテルの部屋が空いていたから予約を入れたよ。〛と聞かされ二人は海鮮料理屋を後にした。
ホテルに行くとロビーで植村がチェックインの手続きをしていて、フロントから渡されたキーが一つだった。『何故キーが一つなの?』と植村に訊くと、〚すまないね、部屋がいっぱいでツインしか空いていなかった。〛と、植村に告げられたと言う。躊躇しながらも希美は植村と一緒にツインの部屋に入った。その後植村は飲み物を買ってくると言って1階にあるコンビニに一人で出て行った。
その時希美は僕にもう一度電話をしたらしい。しかし、接待の二次会に居た僕は妻の着信には全く気がつかなかった。これまでに僕は妻からの着信履歴を無視したことが何度もあった。『その時に僕が電話に出ていれば、植村との情事はきっぱりと断っていました。』と妻は振り返った。
そんな寂しい気持ちのまま希美はその後『自分を女として見てくれていた植村に抱かれてしまいました。』と言った。植村はコンビニで避妊具まで購入してきていた。次の日帰ってきた妻は、僕の顔を見ることが出来なかったと言うが、僕は全然それに気がつかなかった。
その後も妻は植村との出張の際には数回身体の関係があったという。ただ植村自身も幸せな家庭を持っており、決して東京で妻を求めることはなかったという。出張の時だけの情事と割り切っていた。初めのセックスはごくノーマルなものだったようだが、回を重ねるごとに植村の要求も増えてきていて、それに応えてしまう自分に歯止めが利かなくなるようで怖くなっていた頃、植村の転勤が決まり妻は『ほっとした。』と言う。
僕は希美の髪をやさしく撫でながら、植村との一件を冷静に聞くことができた。
「やっぱり君が僕を裏切ったわけじゃないよ・・・僕も悪かったんだ・・・。」
僕は話を聞き終わってからそう言うと、妻に口付けをした。
「さあ、二人目の話を聞かせてくれ・・・。」
2015/04/29
その日三度目の射精を終えてからだった。もう時間は深夜2時を過ぎていた。
「なあ希美(のぞみ)、ひょっとしてこれが僕と最後の夜だと思っているんじゃないか?」
妻は“はっ”とした顔をして僕を見た。
「僕はこんなに素敵な希美を一生離さないつもりだよ。」
『でも、私は・・あなたを裏切った・・・。』
「裏切ったのかどうかは、これから僕が決めるよ。」
『それは・・どういうこと?・・・あなた・・。』
妻の希美は不思議そうに僕を見つめてそう言った。
「僕に今までのことを全て話して欲しい・・。」
そう言うと僕はもう一度妻を抱きしめた。
「明日は君休みなんだろ?僕も明日は仕事を休むよ。だから今からゆっくり今までのことを聞かせて欲しいんだ。」
そう言って僕は希美の髪を撫で付けた。妻は僕の胸の中で泣きながら『ごめんなさい・・・』と何度もつぶやいていた。
「もう泣かなくていいよ。こんなことになったのは僕のせいでもあるのかもしれない。だから…全部今までのことをありのまま話してほしい…。」
妻は赤く腫らした目を僕に見せると、『わかったわ・・。』と小さく言った。
「それと、僕は君に答えづらい質問もするかもしれないけど、正直に答えて欲しい。今後の僕たちのためにも・・。」
希美はそれを聞くと小さく頷く。しばらくすると彼女は最初の男の話を語り始めた。
『一番最初は4年前、甲府に行った時で相手は植村さんだったの・・・。』
妻は最初の男の話をそう言って言い出し始めた。植村一雅と言うのは妻より一つ上の社員で僕よりも一つ下だ。一年前に企画立案の能力を買われ、仙台のグループ会社に部長職で出向となっている。妻は入社以来一番歳の近い先輩社員ということでいろいろと親しかったようだ。
『親しいと言っても同僚としてということで、それまでは男と女を意識したことは一度もなかった。』と言う。当時植村はまだ新婚だった。しかし出産を控えた新妻は実家に里帰りしていたらしい。甲府への出張は当日に急慮決まったもので、そもそも日帰りの予定で妻と植村は出発した。
現地でのトラブルで以外と仕事が長引き、終わったのが夜の7時を回っていたと言う。甲府駅に着くと植村は突然妻の手をとって言ってきた。〚なあ、明日は休みだし、もう遅いから今日は泊まっていかないか?〛植村と二人で出張というのはそれまでにも何回かあったが、その時の植村の表情が今までのものとは違っていたとすぐに希美は感じ取ったようだった。
『主人に聞いてみないと・・・。』はすぐには返答せず植村にそう言ったらしい。その頃僕はちょうど大切なお得意様の接待だった。そんな時に妻から電話がかかってきて、「泊まればいいよ、そんなことでいちいち電話してくるな。」とそっけない返答をしたと言うが覚えていない。
希美と植村はその後海鮮料理屋に行き食事を取ったという。約一時間くらいはそれまでの仲の良い先輩と後輩だったが、お酒が進み、ふともらした植村の言葉から方向が変わっていく。
〚お前のところはもう結婚して3年たつけど子供はまだなのか?〛
『うん。あの人、今仕事が忙しいし・・それどころじゃないみたい・・。』
〚そっか、俺も嫁さん実家に帰ってるからご無沙汰なんだ。今日は寂しいもの同士で盛り上がるか?〛
妻はその時の植村のセリフをそんな風に覚えている。その後トイレにたった植村から、〚目の前のホテルの部屋が空いていたから予約を入れたよ。〛と聞かされ二人は海鮮料理屋を後にした。
ホテルに行くとロビーで植村がチェックインの手続きをしていて、フロントから渡されたキーが一つだった。『何故キーが一つなの?』と植村に訊くと、〚すまないね、部屋がいっぱいでツインしか空いていなかった。〛と、植村に告げられたと言う。躊躇しながらも希美は植村と一緒にツインの部屋に入った。その後植村は飲み物を買ってくると言って1階にあるコンビニに一人で出て行った。
その時希美は僕にもう一度電話をしたらしい。しかし、接待の二次会に居た僕は妻の着信には全く気がつかなかった。これまでに僕は妻からの着信履歴を無視したことが何度もあった。『その時に僕が電話に出ていれば、植村との情事はきっぱりと断っていました。』と妻は振り返った。
そんな寂しい気持ちのまま希美はその後『自分を女として見てくれていた植村に抱かれてしまいました。』と言った。植村はコンビニで避妊具まで購入してきていた。次の日帰ってきた妻は、僕の顔を見ることが出来なかったと言うが、僕は全然それに気がつかなかった。
その後も妻は植村との出張の際には数回身体の関係があったという。ただ植村自身も幸せな家庭を持っており、決して東京で妻を求めることはなかったという。出張の時だけの情事と割り切っていた。初めのセックスはごくノーマルなものだったようだが、回を重ねるごとに植村の要求も増えてきていて、それに応えてしまう自分に歯止めが利かなくなるようで怖くなっていた頃、植村の転勤が決まり妻は『ほっとした。』と言う。
僕は希美の髪をやさしく撫でながら、植村との一件を冷静に聞くことができた。
「やっぱり君が僕を裏切ったわけじゃないよ・・・僕も悪かったんだ・・・。」
僕は話を聞き終わってからそう言うと、妻に口付けをした。
「さあ、二人目の話を聞かせてくれ・・・。」
2015/04/29
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