壊れかけた二人 第14章
≪第14章≫
続いて詩織の本音を知ることが出来た話です。ここからはエロい話は無いです。途中まで二人のセックスを見た後、流石に少し凹んで不安な気持ちが募っていた自分は、ルール違反とわかりつつも、詩織のスマートフォンやPCを覗いてしまいました。
別に翔太との浮気や密会を疑ったわけじゃない。ただ詩織の本音を探りたいと思ってしまったのです。詩織なりの気遣いなのでしょうが、詩織は俺に対しては、『翔太の方が気持ち良い』ということを、はっきりと明言しません。あくまで「そうかもしれなけど・・・でも~」と俺を慮(おもんばか)った言葉を掛けてくれます。
それはそれで勿論有り難いし、愛情があるからこそなのでしょうが、詩織自身が翔太とのプレイについて、本当のところ、どう思っているのかを知りたかったのです。
スマートフォン電話もPCも、どちらもロックやパスワードをかけておらず俺に対して隠すという意識は詩織にはありません。スマートフォンはいつも適当にその辺に転がっている。PCも「ちょっと貸して」といえば、二つ返事でOKをしてくれます。
スマートフォンの電話帳や履歴とメールの履歴を詩織が入浴中に見てしまいました。結果として何も無かったのです。翔太の電話番号も無かったし、そもそも男の番号が皆無と言って良いほど少なかったのです。あっても身内くらいしかない。吃驚(びっくり)したのは待受画像が、俺の写真だったことだ。
あと不可解に思ったのは、着信拒否に登録している番号が妙に多かったことだ。そのなかの一つに見覚えのある番号が有った。それは清水先輩の番号だったから、もしかしたらその番号群は、元彼だったり、しつこく誘ってきた男だったのかもしれません。そして、メールや着信記録にも、何の問題もありませんでした。
それでPCの方なのですが、これはこの間、詩織が実家に帰っていた時に見てしまいました。日記と
かつけてないかと思ったのですが、そういうのは無くて、 ただメールを開くと、送信先や受信元が≪桜≫という方ばかりで、適当にその人からのメールを開いてみると
≪大変ですね。頑張ってください。また感想聞かせてくださいね。≫みたいな文で、明らかにDM(ダイレクトメール)とかじゃなくて、知人とのやり取りみたいな感じだったので、そもそもPCでメールなんてする必要あるのか?と訝(いぶか)しげに思いました。
その返信の元になった、詩織が《桜さん》という人に送ったメールを見たら、≪今日またSとします。しかも遂に夫に見られちゃうかも。やだなぁ~≫といった文章です。明らかに、プレイに関して、他人とメールで話し合っている内容でした。
俺はそれを見た瞬間、鼓動が速まりました。履歴を遡っていくと、どうも桜さんは詩織と似たような境遇の人妻さんで、お互いにメールで相談しあっているようだったのです。
ただ実際の知人ではないようで、最初の桜さんからのメールは、≪拓海ラブさんですか?先ほどの掲示板での件の者です。メールは届いているでしょうか?≫そのメールはなかなか同じ性癖を持つ者としては興味深いものでした。
≪私の夫は、『ネトラセ』『鬱勃起』みたいです。このような性癖があると,夫自身に聞かされました。私自身初めて耳にする言葉で、ネットで調べてみたのですが、
それは『愛する妻(恋人)を,他人に抱かれたりすることに性的興奮を覚える。大切な人を奪われたら鬱になるのは当たり前です。 しかし鬱状態に陥っているのになぜか性的興奮が止まらない。 この現象の説明には"疲れマラ"みたく種の保存の危機に際する性欲向上が説得力あります。ただこれでは説明つかないNTRパターンもあるし、科学的にメカニズムが解明されている訳ではないので未だ謎が多い部分です。』だそうです。
最初は驚きましたが、そのようなものは自分自身でどうしようもないのだろうなと思いました。
夫のことを理解したいのですが、私は浮気する気もありませんし、一体どうしたものやら・・・と悩んでいます。
夫曰く、『浮気はいいけど,本気にはならないで』だそうです。性的欲求なのですよね?。夫にそのような欲望を我慢してもらう方がいいのでしょうか?それとも、私じゃ合わないってことになりますか?浮気しないなら、しないで嬉しいとも言っていますが、その内飽きそうな気がして不安です。嫉妬心で、燃え上がる気持ちは私にもわかりますが。≫
といった感じで、どうもどこかのサイトで知り合ったのかどうなのか、その辺の経緯は、他のメールのやり取りを見ても全くわかりませんでした。とにかくそのメールのやり取りが始まったのは、俺が詩織に対して、スワップやそういうプレイに興味があることを打ち明けた一カ月後くらいから続いていてもう半年以上も続いていた。
最初のメールで桜さんと詩織は簡単に自己紹介をしていました。ただ教えあっているのは自分の置かれている状況だけで、本名などの情報は今でも一切教え合っていないみたいです。但し、詩織のHN(ハンドルネーム)は“たっくんラブ”でした。どんな場所でそのHNを使っていたのかは知りませんが、正直自分の詩織ながら痛いと思いつつもまぁ嬉しくもありました。
桜さんは32歳の専業主婦で旦那さんも同い年。旦那さんにスワップを持ちかけられて、困っている。そして当時の詩織も似たような状況で、詩織も桜さんも、お互いの気持ちを話し合っているようでした
≪「こんなの、友人にも相談できないので助かります(笑)」≫
≪『こっちも同じです(笑)』≫
という二人のやり取り(以降『』が詩織です)
≪「詩織さん(勿論本当はHNを使ってますが、以後詩織で統一します)のお相手はどんな方なんですか?」≫
≪『昔の同僚で、夫とは共通の知人です。夫とは仲が良いです』≫
≪「安心はできますけど、知り合いは諸刃の剣ですよね。」≫
≪『そうですね。ただ正直、同僚時代の私は彼があまり好きではなかったので、やはり微妙な気分です。明確に嫌いというほどでもないのですが、少なくとも好感は持てない感じの男性です。いかにも女性に
対して軽薄そうな人です。夫の友人なので、一応それなりに対応していますが。』≫
(この事実には、正直に言えばかなりビックリした。そんな臆面を今まで見せたことが無かったからだ)
≪『でも、そっちの方が良いのかもしれないと思うこともあります。肉体だけの関係で、万が一にも夫以外の男性に情を移すなんて、考えたくもありませんから』≫と詩織のメールは続いていた。
この辺のやり取りは、翔太との初プレイがまだの頃だった。
そしてその時期のメールのやり取りはまだまだあって、特に詩織と桜さんが共通して、話を盛り上げていたのが、
≪「本当に自分は夫に愛されているのだろうか?」≫という疑問と
≪「倦怠期であることは間違いないので、刺激が欲しくないと言えば嘘になる。」≫
という葛藤でした。
まず、前者からですが、桜さんとのメールのやり取りで、
≪『最悪な事をしてしまいました。夫のスマートフォンを勝手に覗いてしまいました。言い訳にもなりませんが、今度プレイが始まりそうで不安だったのです。幸い浮気の匂いなどはありませんでしたし、それどころか、ちゃんと愛されているんだな、と再確認できて嬉しかったのですが、罪悪感で胸が押しつぶされそうです。』≫とあった。
詩織がそういうことをしていたのを全く知らなかったけど、今まさに自分が同じことをしていたので、怒る気にはなれなかった。愛情を再確認した云々は、以前、俺が友人に『うちの詩織自慢』みたいな、お惚気メールを送ったことがありました。多分そのメールを見られたのだと思います。
とにかく詩織と桜さんは、スワップで興奮する男の性、みたいなものを感情では複雑な気持ちを持ちながら、理屈のうえでは理解していったようです。
そして後者ですが、今でこそ週3回は確実な夜の生活ですが当時は月に数度でした。桜さんの方も似た感じだったらしく、≪「浮気してみたいとか思ったことあります?」≫と詩織に質問を投げかけていた。≪『それは無いです。ただ、なんて言ったら良いかわからないんですけど、寂しいなって思うことはあります。もう夫婦で恋愛とかしないのかなって。今でも夫は大好きですけど、たまにはドキドキしたいなって思ってしまいます。ただやっぱり、浮気ということは絶対したくないですね。』≫
そして迎えた翔太との初プレイ後のメールを見てみる。≪『ついに昨晩Sとセックスをしちゃいました。やばいです。まだドキドキが止まりません。』≫ちなみにメールの送信、受信時間は昼間ばかりだったから、誇張半分に聞いても、やはり初プレイのショックは次の日まで尾を引くくらい大きかったみたい。
≪「今後の参考にしたいので、非良ければ詳細や感想をお聞かせ願いたいです。」≫
桜さんは、まだ初スワップをしていないようだった。
≪『とにかく、なんだか物凄いことをしちゃったなって、もうそれだけしか言えません(笑)』≫
それから翔太とのプレイを何度か重ねた時期の、桜さんからのメール
≪「私の方も、そろそろ話がまとまってきたようです。教えて欲しいのですが、愛情が移ってしまったりとかは大丈夫でしょうか?私の方は、夫が他の女性と関係を持つことにもなるので特にしています。≫
≪『それは結局人によるとしか言えないかもしれませんが、少なくとも私は全然大丈夫です。完全に割り切って出来ています。ただやはり、Sとの相性は最高なので、セックスしている最中は夢中になってしまいますが(笑)』≫
≪「夢中というと、普通に旦那さんとするようなセックスをしてしまうという意味ですか?」≫
≪『正直それ以上だと思います。最近気付いたのですが、背徳感とか罪悪感とか、あと私の場合は〔こんな奴に~〕っていう屈辱感でやばいです。(笑)簡単に気持ち良くさせられちゃうんですが、むかついて仕方ありません。(笑)ただそれを抜きにしても、単純に身体の相性が抜群なんだと思います。
あとSは、やはり女性関係が多かったのか、セックスがやたらと上手いです。そこがまたむかつきます。≫
≪「本当に嫌いなんですね(笑)でも正直セックスだけなら、Sさんですか?」≫
≪『悔しいけど、そうだと思います。Sにも自分にも、腹が立ちます。』≫
≪「それって、旦那さんに対して失望とかしないのでしょうか?私はそれを危惧しています。夫婦間に溝とか出来たりしないのでしょうか?」≫
≪『不思議と全くしません。正直、Sとした後の夫とのセックスは、物足りないと感じることも度々ありますが、けっして不満に思ったりすることはありません。むしろ夫への愛おしさが増すばかりです。自分でもよくわかりませんが、Sとのプレイの存在は、夫との間の大きな潤滑油になっていると思います。≫
≪「でもセックスしている最中は、Sさんに夢中なんですよね?(笑)」≫
≪『最初はやっぱり罪悪感が強いですよ。前戯の時とかは、夫に申し訳ないという気持ちで一杯になっています。早く終わらせて、夫と二人きりになりたいと心の底から強く思います。でも挿入されると駄目ですね。(笑)Sのセックスは少し卑怯だと思います。』≫
≪「そんなに相性が良いのですか?(笑)羨(うらや)ましいです。やはり、あそこの問題ですか?」≫
≪『夫より少しだけ大きいみたいです。あんまり変わらないかな?あとやっぱり堅さと形が大事なんだなって思いました。(笑)なんだかHな話でごめんなさい。普段はこういう話は嫌いなんですけど』≫
≪「大丈夫ですよ。そういう相談をし合いたくてメル友になったわけですから、女同士はっちゃけていきましょう。(笑)」≫
≪『そうですね。(笑)まぁ正直に言うと、Sとセックスしたすぐ後に夫とすると、《あれ?入ってるの?》と思うこともしばしばあります。(笑)』≫
≪「え~、それはなんか嫌ですね。でもそれでも、旦那さんへの失望は無いんですか?」≫
≪『変ですかね?全く無いんです。(笑)むしろこっちが申し訳ない気持ちで一杯になります。』≫
≪「終わった直後はどうなんですか?やはり余韻はしばらく残るものなんでしょうか?」≫
≪『一時間くらいですかね。正直セックスしている最中は、もうラブラブって言っても良いくらいだと思います。それくらい気持ち良くしてくれるのですが、同時にむかつきもするんですけど、それで終わった後も、しばらくはそんな感じが残るんです。でもやっぱり余韻というのは精々一時間くらいですね。夫とセックスして、そのあと夫とお風呂に入っているころには、もうSの存在は完全に頭から消えています(笑)』≫
≪『それが、やっぱり自分は、この人のものなんだって安心できる時間ですね。所詮身体だけの関係なんて、そんなものだと思いました。次の日の朝くらいになると、Sへの嫌悪感が倍増する感じです。
むかついて仕方ない感じになります。(笑)』≫
≪『以前はどちらかといえば嫌い、だったんですが、今でははっきりと嫌いですね。Sのことは。とにかくウザいんですよ。それとは反比例して、やはり夫のことは心から愛しているんだと実感します。だからこそ、Sとのセックスで気持ち良くなることが夫に対して余計に申し訳なくて・・・』≫
≪「でもそれが興奮する一因になってしまっている、ってことでしょうか?難しいですね。」≫
≪『そうかも知れません。でも情が移るってことは、やっぱり隠れて会ってでもしないと無いと思いますよ。どうしても割り切った感じになりますから。≫
≪「隠れて会いたいなんて思ってしまうことありますか?自分や旦那がそうなってしまわないか心配です」≫
≪『私の場合は100%無いですね。確実にSとはベッドの中だけです。』≫
≪「なんだか、それだけ夢中だと、Sさんにコンドームを外したいとか言われたら詩織さんOKしちゃいそうですね?(笑)」≫
≪『セックスしている時に言われたらちゃんと断れるか心配ですね。(笑)ピル飲んでなかったら絶対NGです。』≫
こんなメールのやり取りが続いて、そしてようやく桜さんも初スワップを経験したらしい。
≪「本当やばい、としか言えないですね(笑)」≫
≪『お気持ちは十分わかります(笑)』≫
≪「でもね、詩織さんが言っていた通り、情が移ったりとかは無さそうな感じで一先ず安心です。あと
確かに、夫への愛情は増すばかりですね。(笑)」≫
≪『新婚みたいになりますよね。(笑)でも桜さんは私とは違って、旦那さんが他の女性としているわけですよね?その辺はどうなのでしょうか?』≫
≪「最初はそのことがやはり苦しいし、辛かったです。でもだからこそ、“夫もしているのだから~”と割り切って出来ました。逆に詩織さんの方が辛くないですか?」≫
≪『確かにそう感じる事が多いです。私だけなので夫に対して申し訳ないと思います。でも夫が他の女性とするのなんて、考えただけでも泣きそうになってしまいます。それは、あまりに自分勝手ですよね。』≫
こんなやり取りをしていたこともあり、俺はスワッピングの事も今後考えた方が良いのかな、と思いました。
あとドキっとしたのがこんなやり取りのところ
≪「詩織さんのところは、今後もSさんとのプレイを続けるのですか?」≫
≪『わかりませんけど、夫はしばらく続けたいみたいです。』≫
≪「詩織さん自身はどう思っているのですか?」≫
≪『正直なところ、Sとのセックスが楽しみで仕方ない、という部分はあります。Sに嫌悪感を抱いているのも、夫を愛しているのも偽りのない本心なのですが・・・』≫
≪「Sさんとは本当に身体の相性が良いんですね。(笑)それだけ嫌っているのに、身体が求めてしまうのは凄いことだと思いますよ。」≫
≪『本当に腹が立つのですけどね。なんでこんな人に気持ち良くさせられるのだろって。勿論自分に対してですけど。身体の相性ってあるんですね。でもだからこそ、たまには自分でブレーキを利かせるようにしています。Sとのセックス中は、ついうっかり“好き”って言っちゃいそうになるくらい気持ちが良いです。(笑)勿論それは快感による勢いだけだし、本心でも何でもないし、意地でも絶対言わないです。それでもセックスが終わると、またちゃんと嫌いになれるから不思議です(笑)』≫
≪「うわ凄いですね。それは旦那さんも嫉妬するんじゃないですか?」≫
≪『こんなプレイをしていて嫉妬されると嬉しくないですか?安心するっていうか。』≫
≪「わかります。私の場合、それが目的になっていたりします。」≫
そしてまた後日に、こんなやり取りがあった。
≪「私は結果的には、スワッピングをやって良かったと思っています。詩織さんはどうですか?」≫
≪『正直わかりません。ただ、良かったと思える部分は、Sとのセックスの気持ち良かったとかそういう事では無いのです。夫との夫婦生活が改善されたことが、何よりの良い結果だと思っています。
あくまでも夫婦生活のアクセントの為だけの行為ということを忘れたくはないですね。』≫
≪「でもそれだけ相性が良いと、いつかプレイが終わったあとも、Sさんの事を身体がなかなか忘れてくれないかもしれませんね。(笑)」≫
≪『うわ~、それは嫌ですね(笑)さっさと忘れて欲しいです。今でもちゃんと毎回夫が忘れさせてくれていますから。(照)』≫
そして最近の話に戻ります。俺はスマートフォンを勝手に見てしまった事については自分から謝りました。すると詩織も、昔同じように覗いてしまったと謝ってきました。それに関しては、お互い様とノーサイドで終わらせました。
『あたしが浮気すると思ったの?』と、何故かニヤニヤと嬉しそうな詩織。俺は「翔太に取られるんじゃないかと不安だった」と、神妙な感じで正直に話す。詩織はお腹抱えて大爆笑をする。そして『・・・ね?・・わたし・・たっくんの赤ちゃんほしい・・・』と、潤んだ瞳で艶かしく囁いてきたから、俺も「いっぱい産ますからな」と、お姫様だっこで詩織を寝室に運ぶ。
勿論今はピルを飲んでいるから、絶対に無理なんだけど、あくまでお互いの気持ちを確認しあうという意味での会話と行為だった。ただ俺はPCメールの事は言っていません。なぜなら今後もこのプレイの保険として活用したいからです。勿論その秘密に関して罪悪感はありますが、とりあえず今後は、翔太とはしばらくお休みして別のプレイも考慮しようかと思っています。
続いて詩織の本音を知ることが出来た話です。ここからはエロい話は無いです。途中まで二人のセックスを見た後、流石に少し凹んで不安な気持ちが募っていた自分は、ルール違反とわかりつつも、詩織のスマートフォンやPCを覗いてしまいました。
別に翔太との浮気や密会を疑ったわけじゃない。ただ詩織の本音を探りたいと思ってしまったのです。詩織なりの気遣いなのでしょうが、詩織は俺に対しては、『翔太の方が気持ち良い』ということを、はっきりと明言しません。あくまで「そうかもしれなけど・・・でも~」と俺を慮(おもんばか)った言葉を掛けてくれます。
それはそれで勿論有り難いし、愛情があるからこそなのでしょうが、詩織自身が翔太とのプレイについて、本当のところ、どう思っているのかを知りたかったのです。
スマートフォン電話もPCも、どちらもロックやパスワードをかけておらず俺に対して隠すという意識は詩織にはありません。スマートフォンはいつも適当にその辺に転がっている。PCも「ちょっと貸して」といえば、二つ返事でOKをしてくれます。
スマートフォンの電話帳や履歴とメールの履歴を詩織が入浴中に見てしまいました。結果として何も無かったのです。翔太の電話番号も無かったし、そもそも男の番号が皆無と言って良いほど少なかったのです。あっても身内くらいしかない。吃驚(びっくり)したのは待受画像が、俺の写真だったことだ。
あと不可解に思ったのは、着信拒否に登録している番号が妙に多かったことだ。そのなかの一つに見覚えのある番号が有った。それは清水先輩の番号だったから、もしかしたらその番号群は、元彼だったり、しつこく誘ってきた男だったのかもしれません。そして、メールや着信記録にも、何の問題もありませんでした。
それでPCの方なのですが、これはこの間、詩織が実家に帰っていた時に見てしまいました。日記と
かつけてないかと思ったのですが、そういうのは無くて、 ただメールを開くと、送信先や受信元が≪桜≫という方ばかりで、適当にその人からのメールを開いてみると
≪大変ですね。頑張ってください。また感想聞かせてくださいね。≫みたいな文で、明らかにDM(ダイレクトメール)とかじゃなくて、知人とのやり取りみたいな感じだったので、そもそもPCでメールなんてする必要あるのか?と訝(いぶか)しげに思いました。
その返信の元になった、詩織が《桜さん》という人に送ったメールを見たら、≪今日またSとします。しかも遂に夫に見られちゃうかも。やだなぁ~≫といった文章です。明らかに、プレイに関して、他人とメールで話し合っている内容でした。
俺はそれを見た瞬間、鼓動が速まりました。履歴を遡っていくと、どうも桜さんは詩織と似たような境遇の人妻さんで、お互いにメールで相談しあっているようだったのです。
ただ実際の知人ではないようで、最初の桜さんからのメールは、≪拓海ラブさんですか?先ほどの掲示板での件の者です。メールは届いているでしょうか?≫そのメールはなかなか同じ性癖を持つ者としては興味深いものでした。
≪私の夫は、『ネトラセ』『鬱勃起』みたいです。このような性癖があると,夫自身に聞かされました。私自身初めて耳にする言葉で、ネットで調べてみたのですが、
それは『愛する妻(恋人)を,他人に抱かれたりすることに性的興奮を覚える。大切な人を奪われたら鬱になるのは当たり前です。 しかし鬱状態に陥っているのになぜか性的興奮が止まらない。 この現象の説明には"疲れマラ"みたく種の保存の危機に際する性欲向上が説得力あります。ただこれでは説明つかないNTRパターンもあるし、科学的にメカニズムが解明されている訳ではないので未だ謎が多い部分です。』だそうです。
最初は驚きましたが、そのようなものは自分自身でどうしようもないのだろうなと思いました。
夫のことを理解したいのですが、私は浮気する気もありませんし、一体どうしたものやら・・・と悩んでいます。
夫曰く、『浮気はいいけど,本気にはならないで』だそうです。性的欲求なのですよね?。夫にそのような欲望を我慢してもらう方がいいのでしょうか?それとも、私じゃ合わないってことになりますか?浮気しないなら、しないで嬉しいとも言っていますが、その内飽きそうな気がして不安です。嫉妬心で、燃え上がる気持ちは私にもわかりますが。≫
といった感じで、どうもどこかのサイトで知り合ったのかどうなのか、その辺の経緯は、他のメールのやり取りを見ても全くわかりませんでした。とにかくそのメールのやり取りが始まったのは、俺が詩織に対して、スワップやそういうプレイに興味があることを打ち明けた一カ月後くらいから続いていてもう半年以上も続いていた。
最初のメールで桜さんと詩織は簡単に自己紹介をしていました。ただ教えあっているのは自分の置かれている状況だけで、本名などの情報は今でも一切教え合っていないみたいです。但し、詩織のHN(ハンドルネーム)は“たっくんラブ”でした。どんな場所でそのHNを使っていたのかは知りませんが、正直自分の詩織ながら痛いと思いつつもまぁ嬉しくもありました。
桜さんは32歳の専業主婦で旦那さんも同い年。旦那さんにスワップを持ちかけられて、困っている。そして当時の詩織も似たような状況で、詩織も桜さんも、お互いの気持ちを話し合っているようでした
≪「こんなの、友人にも相談できないので助かります(笑)」≫
≪『こっちも同じです(笑)』≫
という二人のやり取り(以降『』が詩織です)
≪「詩織さん(勿論本当はHNを使ってますが、以後詩織で統一します)のお相手はどんな方なんですか?」≫
≪『昔の同僚で、夫とは共通の知人です。夫とは仲が良いです』≫
≪「安心はできますけど、知り合いは諸刃の剣ですよね。」≫
≪『そうですね。ただ正直、同僚時代の私は彼があまり好きではなかったので、やはり微妙な気分です。明確に嫌いというほどでもないのですが、少なくとも好感は持てない感じの男性です。いかにも女性に
対して軽薄そうな人です。夫の友人なので、一応それなりに対応していますが。』≫
(この事実には、正直に言えばかなりビックリした。そんな臆面を今まで見せたことが無かったからだ)
≪『でも、そっちの方が良いのかもしれないと思うこともあります。肉体だけの関係で、万が一にも夫以外の男性に情を移すなんて、考えたくもありませんから』≫と詩織のメールは続いていた。
この辺のやり取りは、翔太との初プレイがまだの頃だった。
そしてその時期のメールのやり取りはまだまだあって、特に詩織と桜さんが共通して、話を盛り上げていたのが、
≪「本当に自分は夫に愛されているのだろうか?」≫という疑問と
≪「倦怠期であることは間違いないので、刺激が欲しくないと言えば嘘になる。」≫
という葛藤でした。
まず、前者からですが、桜さんとのメールのやり取りで、
≪『最悪な事をしてしまいました。夫のスマートフォンを勝手に覗いてしまいました。言い訳にもなりませんが、今度プレイが始まりそうで不安だったのです。幸い浮気の匂いなどはありませんでしたし、それどころか、ちゃんと愛されているんだな、と再確認できて嬉しかったのですが、罪悪感で胸が押しつぶされそうです。』≫とあった。
詩織がそういうことをしていたのを全く知らなかったけど、今まさに自分が同じことをしていたので、怒る気にはなれなかった。愛情を再確認した云々は、以前、俺が友人に『うちの詩織自慢』みたいな、お惚気メールを送ったことがありました。多分そのメールを見られたのだと思います。
とにかく詩織と桜さんは、スワップで興奮する男の性、みたいなものを感情では複雑な気持ちを持ちながら、理屈のうえでは理解していったようです。
そして後者ですが、今でこそ週3回は確実な夜の生活ですが当時は月に数度でした。桜さんの方も似た感じだったらしく、≪「浮気してみたいとか思ったことあります?」≫と詩織に質問を投げかけていた。≪『それは無いです。ただ、なんて言ったら良いかわからないんですけど、寂しいなって思うことはあります。もう夫婦で恋愛とかしないのかなって。今でも夫は大好きですけど、たまにはドキドキしたいなって思ってしまいます。ただやっぱり、浮気ということは絶対したくないですね。』≫
そして迎えた翔太との初プレイ後のメールを見てみる。≪『ついに昨晩Sとセックスをしちゃいました。やばいです。まだドキドキが止まりません。』≫ちなみにメールの送信、受信時間は昼間ばかりだったから、誇張半分に聞いても、やはり初プレイのショックは次の日まで尾を引くくらい大きかったみたい。
≪「今後の参考にしたいので、非良ければ詳細や感想をお聞かせ願いたいです。」≫
桜さんは、まだ初スワップをしていないようだった。
≪『とにかく、なんだか物凄いことをしちゃったなって、もうそれだけしか言えません(笑)』≫
それから翔太とのプレイを何度か重ねた時期の、桜さんからのメール
≪「私の方も、そろそろ話がまとまってきたようです。教えて欲しいのですが、愛情が移ってしまったりとかは大丈夫でしょうか?私の方は、夫が他の女性と関係を持つことにもなるので特にしています。≫
≪『それは結局人によるとしか言えないかもしれませんが、少なくとも私は全然大丈夫です。完全に割り切って出来ています。ただやはり、Sとの相性は最高なので、セックスしている最中は夢中になってしまいますが(笑)』≫
≪「夢中というと、普通に旦那さんとするようなセックスをしてしまうという意味ですか?」≫
≪『正直それ以上だと思います。最近気付いたのですが、背徳感とか罪悪感とか、あと私の場合は〔こんな奴に~〕っていう屈辱感でやばいです。(笑)簡単に気持ち良くさせられちゃうんですが、むかついて仕方ありません。(笑)ただそれを抜きにしても、単純に身体の相性が抜群なんだと思います。
あとSは、やはり女性関係が多かったのか、セックスがやたらと上手いです。そこがまたむかつきます。≫
≪「本当に嫌いなんですね(笑)でも正直セックスだけなら、Sさんですか?」≫
≪『悔しいけど、そうだと思います。Sにも自分にも、腹が立ちます。』≫
≪「それって、旦那さんに対して失望とかしないのでしょうか?私はそれを危惧しています。夫婦間に溝とか出来たりしないのでしょうか?」≫
≪『不思議と全くしません。正直、Sとした後の夫とのセックスは、物足りないと感じることも度々ありますが、けっして不満に思ったりすることはありません。むしろ夫への愛おしさが増すばかりです。自分でもよくわかりませんが、Sとのプレイの存在は、夫との間の大きな潤滑油になっていると思います。≫
≪「でもセックスしている最中は、Sさんに夢中なんですよね?(笑)」≫
≪『最初はやっぱり罪悪感が強いですよ。前戯の時とかは、夫に申し訳ないという気持ちで一杯になっています。早く終わらせて、夫と二人きりになりたいと心の底から強く思います。でも挿入されると駄目ですね。(笑)Sのセックスは少し卑怯だと思います。』≫
≪「そんなに相性が良いのですか?(笑)羨(うらや)ましいです。やはり、あそこの問題ですか?」≫
≪『夫より少しだけ大きいみたいです。あんまり変わらないかな?あとやっぱり堅さと形が大事なんだなって思いました。(笑)なんだかHな話でごめんなさい。普段はこういう話は嫌いなんですけど』≫
≪「大丈夫ですよ。そういう相談をし合いたくてメル友になったわけですから、女同士はっちゃけていきましょう。(笑)」≫
≪『そうですね。(笑)まぁ正直に言うと、Sとセックスしたすぐ後に夫とすると、《あれ?入ってるの?》と思うこともしばしばあります。(笑)』≫
≪「え~、それはなんか嫌ですね。でもそれでも、旦那さんへの失望は無いんですか?」≫
≪『変ですかね?全く無いんです。(笑)むしろこっちが申し訳ない気持ちで一杯になります。』≫
≪「終わった直後はどうなんですか?やはり余韻はしばらく残るものなんでしょうか?」≫
≪『一時間くらいですかね。正直セックスしている最中は、もうラブラブって言っても良いくらいだと思います。それくらい気持ち良くしてくれるのですが、同時にむかつきもするんですけど、それで終わった後も、しばらくはそんな感じが残るんです。でもやっぱり余韻というのは精々一時間くらいですね。夫とセックスして、そのあと夫とお風呂に入っているころには、もうSの存在は完全に頭から消えています(笑)』≫
≪『それが、やっぱり自分は、この人のものなんだって安心できる時間ですね。所詮身体だけの関係なんて、そんなものだと思いました。次の日の朝くらいになると、Sへの嫌悪感が倍増する感じです。
むかついて仕方ない感じになります。(笑)』≫
≪『以前はどちらかといえば嫌い、だったんですが、今でははっきりと嫌いですね。Sのことは。とにかくウザいんですよ。それとは反比例して、やはり夫のことは心から愛しているんだと実感します。だからこそ、Sとのセックスで気持ち良くなることが夫に対して余計に申し訳なくて・・・』≫
≪「でもそれが興奮する一因になってしまっている、ってことでしょうか?難しいですね。」≫
≪『そうかも知れません。でも情が移るってことは、やっぱり隠れて会ってでもしないと無いと思いますよ。どうしても割り切った感じになりますから。≫
≪「隠れて会いたいなんて思ってしまうことありますか?自分や旦那がそうなってしまわないか心配です」≫
≪『私の場合は100%無いですね。確実にSとはベッドの中だけです。』≫
≪「なんだか、それだけ夢中だと、Sさんにコンドームを外したいとか言われたら詩織さんOKしちゃいそうですね?(笑)」≫
≪『セックスしている時に言われたらちゃんと断れるか心配ですね。(笑)ピル飲んでなかったら絶対NGです。』≫
こんなメールのやり取りが続いて、そしてようやく桜さんも初スワップを経験したらしい。
≪「本当やばい、としか言えないですね(笑)」≫
≪『お気持ちは十分わかります(笑)』≫
≪「でもね、詩織さんが言っていた通り、情が移ったりとかは無さそうな感じで一先ず安心です。あと
確かに、夫への愛情は増すばかりですね。(笑)」≫
≪『新婚みたいになりますよね。(笑)でも桜さんは私とは違って、旦那さんが他の女性としているわけですよね?その辺はどうなのでしょうか?』≫
≪「最初はそのことがやはり苦しいし、辛かったです。でもだからこそ、“夫もしているのだから~”と割り切って出来ました。逆に詩織さんの方が辛くないですか?」≫
≪『確かにそう感じる事が多いです。私だけなので夫に対して申し訳ないと思います。でも夫が他の女性とするのなんて、考えただけでも泣きそうになってしまいます。それは、あまりに自分勝手ですよね。』≫
こんなやり取りをしていたこともあり、俺はスワッピングの事も今後考えた方が良いのかな、と思いました。
あとドキっとしたのがこんなやり取りのところ
≪「詩織さんのところは、今後もSさんとのプレイを続けるのですか?」≫
≪『わかりませんけど、夫はしばらく続けたいみたいです。』≫
≪「詩織さん自身はどう思っているのですか?」≫
≪『正直なところ、Sとのセックスが楽しみで仕方ない、という部分はあります。Sに嫌悪感を抱いているのも、夫を愛しているのも偽りのない本心なのですが・・・』≫
≪「Sさんとは本当に身体の相性が良いんですね。(笑)それだけ嫌っているのに、身体が求めてしまうのは凄いことだと思いますよ。」≫
≪『本当に腹が立つのですけどね。なんでこんな人に気持ち良くさせられるのだろって。勿論自分に対してですけど。身体の相性ってあるんですね。でもだからこそ、たまには自分でブレーキを利かせるようにしています。Sとのセックス中は、ついうっかり“好き”って言っちゃいそうになるくらい気持ちが良いです。(笑)勿論それは快感による勢いだけだし、本心でも何でもないし、意地でも絶対言わないです。それでもセックスが終わると、またちゃんと嫌いになれるから不思議です(笑)』≫
≪「うわ凄いですね。それは旦那さんも嫉妬するんじゃないですか?」≫
≪『こんなプレイをしていて嫉妬されると嬉しくないですか?安心するっていうか。』≫
≪「わかります。私の場合、それが目的になっていたりします。」≫
そしてまた後日に、こんなやり取りがあった。
≪「私は結果的には、スワッピングをやって良かったと思っています。詩織さんはどうですか?」≫
≪『正直わかりません。ただ、良かったと思える部分は、Sとのセックスの気持ち良かったとかそういう事では無いのです。夫との夫婦生活が改善されたことが、何よりの良い結果だと思っています。
あくまでも夫婦生活のアクセントの為だけの行為ということを忘れたくはないですね。』≫
≪「でもそれだけ相性が良いと、いつかプレイが終わったあとも、Sさんの事を身体がなかなか忘れてくれないかもしれませんね。(笑)」≫
≪『うわ~、それは嫌ですね(笑)さっさと忘れて欲しいです。今でもちゃんと毎回夫が忘れさせてくれていますから。(照)』≫
そして最近の話に戻ります。俺はスマートフォンを勝手に見てしまった事については自分から謝りました。すると詩織も、昔同じように覗いてしまったと謝ってきました。それに関しては、お互い様とノーサイドで終わらせました。
『あたしが浮気すると思ったの?』と、何故かニヤニヤと嬉しそうな詩織。俺は「翔太に取られるんじゃないかと不安だった」と、神妙な感じで正直に話す。詩織はお腹抱えて大爆笑をする。そして『・・・ね?・・わたし・・たっくんの赤ちゃんほしい・・・』と、潤んだ瞳で艶かしく囁いてきたから、俺も「いっぱい産ますからな」と、お姫様だっこで詩織を寝室に運ぶ。
勿論今はピルを飲んでいるから、絶対に無理なんだけど、あくまでお互いの気持ちを確認しあうという意味での会話と行為だった。ただ俺はPCメールの事は言っていません。なぜなら今後もこのプレイの保険として活用したいからです。勿論その秘密に関して罪悪感はありますが、とりあえず今後は、翔太とはしばらくお休みして別のプレイも考慮しようかと思っています。
- 関連記事
-
- 壊れかけた二人 第12章① (2014/03/14)
- 壊れかけた二人 第12章② (2014/03/16)
- 壊れかけた二人 第12章③ (2014/03/19)
- 壊れかけた二人 第13章① (2014/03/25)
- 壊れかけた二人 第13章② (2014/03/27)
- 壊れかけた二人 第13章③ (2014/03/28)
- 壊れかけた二人 第13章④ (2014/04/01)
- 壊れかけた二人 第14章 (2014/04/03)
- 壊れかけた二人 第15章① (2014/04/09)
- 壊れかけた二人 第15章② (2014/04/14)
- 壊れかけた二人 第15章③ (2014/04/16)
- 壊れかけた二人 第16章① (2014/04/21)
- 壊れかけた二人 第16章② (2014/04/27)
- 壊れかけた二人 第17章① (2014/05/02)
- 壊れかけた二人 第17章② (2014/05/11)
コメント
コメントの投稿