長G〖救いの手を〗第2回
長G〖救いの手を〗第2回
第1回
そう…それはとある土曜日の出来事でした。前夜に翌日が休日である為に、趣味の読書がついつい朝方までとなり目覚めたのは昼過ぎです。妻(高坂彩矢:こうさか・あや:32歳)は休日出勤。寝ぼけて思考が定まらぬ私は熱いシャワーを浴び、生乾きのボサボサ頭でリビングに向かい、コーヒーを飲みながら新聞に目を通していました。
以前ならば土曜日は専業主婦であった彩矢と散歩がてらに近所の行きつけの喫茶店でランチが週末の日課だったのですが、今では仕事が多忙を極める妻とはそんな時間も無くなりつつありました。
昼下がりのテレビから聞こえる甲高い芸人の声が耳障りに感じた私は、久々に音楽でも聴こうとCDラックの中から彩矢と出会った頃に良く聴いたCDを探したのですが見当たりませんでした。【あれっ?何処にやったかな? 妻が自分の部屋にでも持っていって聴いていたのかも知れないな…。】
半年前に妻がエリアマネージャーに昇進し、捌(さば)ききれぬ仕事を自宅に持ち帰るようになった頃に私達夫婦は寝室を別々にして、お互いの寝室がそれぞれの書斎兼寝室になっていました。
当初、寝室を別々にする事には不満をもっていた私(高坂正文:こうさか・まさふみ:37歳)でしたが、この頃にはすでにセックスレスな夫婦でもあり、こんなに楽しそうに生き生きと仕事に打ち込み、傍から見ても専業主婦であった頃とは別人のような輝きを取り戻した妻の彩矢を【素直に応援してあげたい….。】そんな気持ちからの発展的な夫婦別々の寝室への流れだったのです。
こうなると不思議な物で彩矢は掃除や洗濯をしなくてはならないので私の寝室に入っているのですが、私が妻の寝室に行く事は、殆ど有りませんでした。私にはそこが、【彩矢の書斎兼寝室】が、何やら仕事に打ち込む妻の聖域であるように感じていたのです。
私はCDを探す為に、この数ヶ月一度も踏み入れる事の無かった彩矢の寝室の扉を開けました。ドアノブを回し,扉を開くと昼下がりの閉め切った妻の寝室から【ムッとする熱気とともに甘酸っぱい女の匂い】が私の全身を包みました。
蒼色のカーテンで閉めきられたままの室内は薄暗い。蒼(あお)色を基調に統一された寝具に木目張のクロゼットに大きな本棚と机… 。そして室内に充満する濃厚な大人の女性独特の蜜の香り…。むせて目が眩みそうになる甘酸っぱい匂いに一種異様な興奮にも似た物を覚えながら私はCDを探しました。
机の上に置かれたPCの横には乱雑に山積みにされた資料とおぼしき書類…。ベッドの布団は半分捲られた状態のまま。【やれやれ…いくら忙しいとは言え、もう少し綺麗に片付けろよ…。】私は軽く舌打ちする思いで雑然とした机の辺りを見わたします。 積まれた本の脇に数枚の透明なCDのケースが見えました。
私は積まれた本や書類の山を崩さぬようにそれらを慎重に引き抜くと探していたお目当てのCDです。【おっ…やはり有ったか… 】 引き抜いた他の三枚は、それぞれのケースに日付だけが記載された中身が不明の物でした。
【う~ん…何だこれは?彩矢の仕事絡みの物かな?】この時の私はそれらのディスクの中身など大して気にする事も無く、元の置かれていた場所に戻してしまいました。後々になって見ればこれが痛恨の極みでした。せめてこの時にこれらのディスクの正体に気付いていれば或はあれ程の事にならなかったかも知れないのです。 第3回に
2015/02/11
第1回
そう…それはとある土曜日の出来事でした。前夜に翌日が休日である為に、趣味の読書がついつい朝方までとなり目覚めたのは昼過ぎです。妻(高坂彩矢:こうさか・あや:32歳)は休日出勤。寝ぼけて思考が定まらぬ私は熱いシャワーを浴び、生乾きのボサボサ頭でリビングに向かい、コーヒーを飲みながら新聞に目を通していました。
以前ならば土曜日は専業主婦であった彩矢と散歩がてらに近所の行きつけの喫茶店でランチが週末の日課だったのですが、今では仕事が多忙を極める妻とはそんな時間も無くなりつつありました。
昼下がりのテレビから聞こえる甲高い芸人の声が耳障りに感じた私は、久々に音楽でも聴こうとCDラックの中から彩矢と出会った頃に良く聴いたCDを探したのですが見当たりませんでした。【あれっ?何処にやったかな? 妻が自分の部屋にでも持っていって聴いていたのかも知れないな…。】
半年前に妻がエリアマネージャーに昇進し、捌(さば)ききれぬ仕事を自宅に持ち帰るようになった頃に私達夫婦は寝室を別々にして、お互いの寝室がそれぞれの書斎兼寝室になっていました。
当初、寝室を別々にする事には不満をもっていた私(高坂正文:こうさか・まさふみ:37歳)でしたが、この頃にはすでにセックスレスな夫婦でもあり、こんなに楽しそうに生き生きと仕事に打ち込み、傍から見ても専業主婦であった頃とは別人のような輝きを取り戻した妻の彩矢を【素直に応援してあげたい….。】そんな気持ちからの発展的な夫婦別々の寝室への流れだったのです。
こうなると不思議な物で彩矢は掃除や洗濯をしなくてはならないので私の寝室に入っているのですが、私が妻の寝室に行く事は、殆ど有りませんでした。私にはそこが、【彩矢の書斎兼寝室】が、何やら仕事に打ち込む妻の聖域であるように感じていたのです。
私はCDを探す為に、この数ヶ月一度も踏み入れる事の無かった彩矢の寝室の扉を開けました。ドアノブを回し,扉を開くと昼下がりの閉め切った妻の寝室から【ムッとする熱気とともに甘酸っぱい女の匂い】が私の全身を包みました。
蒼色のカーテンで閉めきられたままの室内は薄暗い。蒼(あお)色を基調に統一された寝具に木目張のクロゼットに大きな本棚と机… 。そして室内に充満する濃厚な大人の女性独特の蜜の香り…。むせて目が眩みそうになる甘酸っぱい匂いに一種異様な興奮にも似た物を覚えながら私はCDを探しました。
机の上に置かれたPCの横には乱雑に山積みにされた資料とおぼしき書類…。ベッドの布団は半分捲られた状態のまま。【やれやれ…いくら忙しいとは言え、もう少し綺麗に片付けろよ…。】私は軽く舌打ちする思いで雑然とした机の辺りを見わたします。 積まれた本の脇に数枚の透明なCDのケースが見えました。
私は積まれた本や書類の山を崩さぬようにそれらを慎重に引き抜くと探していたお目当てのCDです。【おっ…やはり有ったか… 】 引き抜いた他の三枚は、それぞれのケースに日付だけが記載された中身が不明の物でした。
【う~ん…何だこれは?彩矢の仕事絡みの物かな?】この時の私はそれらのディスクの中身など大して気にする事も無く、元の置かれていた場所に戻してしまいました。後々になって見ればこれが痛恨の極みでした。せめてこの時にこれらのディスクの正体に気付いていれば或はあれ程の事にならなかったかも知れないのです。 第3回に
2015/02/11
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