〔トライアングル〕 第4章の1〖エピソードⅡ-1〗
中Aトライアングル 第4-1〖エピソードⅡ-1〗
これは奇妙な三角関係が始まって三カ月位経った頃の話。いつも俺の自宅で会っていたので、〔たまには映画を見に行きたい。〕と英人が言い出した。三人で映画を見てから英人の部屋に行く、と言う計画だ。俺はこの提案を英人から聞いた時、勿論映画なんてどうでも良く、英人の部屋で真昼間から翠が抱かれる姿を想像していた。英人の部屋で《セックスする》という事を誰も口にしないが、三人が集まればそうなる、という事は既にこの時は暗黙の了解であった。
映画の話は割愛する。俺は中身なんて全く覚えていない・・・。何故なら、気持ちは既に次に飛んでいたという事もあるけど、映画を見ている最中ずっと英人と翠が手を握り合っていたのを俺は知っていたから。嫉妬と興奮で二時間イライラドキドキしっ放しだった。
軽めのランチを取ってから英人のマンションへ移動をする。英人の2LDKの部屋は初めてだった。家具調度品はシンプルで、リビングには趣味のエレキギターが置いてあった。ソファについてからビールを勧められたが断わった。また寝てしまったら元も子もないから・・・・。西日が建物に隠れ、部屋が急に薄暗くなる夕方まで他愛の無い話をしていたが、話題が尽きた様に暫くの沈黙、そして英人が〔さて、シャワー浴びてくるかな・・・・。〕っと言った。
英人がおもむろに立ち上がる。その時、俺は咄嗟に意味不明なことを言ってしまった。
「翠、一緒に入ってきたら?」
『はっ?・・・・。』
一瞬固まる二人。翠は怒る、と言うよりも困惑している表情で俺を見つめた。しかし、すぐに英人を見上げ、その表情は媚びる様なものになっていった。悔しいが、一瞬二人が見つめ合い、すぐに意思疎通したように見えた。やっぱりまだ英人の事が好きなのかも・・・・。
英人が言った。〔翠ちゃん、狭いけど・・・・一緒に入る?・・・・〕自分から言っといて矛盾しているが、俺は翠に「断わってくれ。」と心の中で叫んでいた。
『・・・・うん・・・・。』
立ち上がって英人の後を追う翠。俺の方を振り返り、涙がこぼれそうな程に潤んだ瞳で見つめられた。
『これで・・・いいんだよね?』
俺は言葉を返す事が出来なかった。そんな俺を見つめながら翠がバスルームの奥へ消える。瞳が潤んでいたのは泣きたいからではなく、恥ずかしさからだったと思う。恥ずかしさ、イコール嬉しさか・・・・。(その時はそう思っていたのだ。)
この関係が始まってから俺達二人の夫婦仲は一段と深まった。二人でいる時には翠は俺から離れようとしない。結婚して暫く経ち、安心した気分にすっかり浸っていた俺も、何時の間にか翠を必死に求めていた。
うまく言えないが、翠が英人と付き合っていた頃を想い出していた。あの頃は、忘れようとすればする程翠の事が頭から離れず、友人の彼女なのだから振り向いてくれるはずもないのに、心の中で必死に翠の事を求めていた。英人に翠との付き合いの中身を聞かされる度に胸を掻き毟(むし)りたくなる様な嫉妬、青臭い青春の日々を思い出していたのだ。
「結婚をして俺の一番近くに居る人なのに、翠が何故か逃げて行くのでは?」との不安心もあったのかも知れない。兎に角、翠との仲が深まるに連れ、改めて翠を追い求めるようになっていた。(一年経った今だから言えるが、翠を英人に取られるんじゃないかと、本気で思っていた。)
そんな翠が、俺の嫁が、昔大好きだった男と一緒に歩いて行く後ろ姿を見て、情けない事に涙が出そうになった。今更ながら、これから起きる事に対して臆病になった俺は、いたたまれず、《用事思い出したので出てくる。適当に戻るので、気にしないでください。》とメモを書いている指が震えていた。そして、そのまま部屋を出た。
俺は近所のコンビニに寄って雑誌を立ち読みする。しかし、時間の経過が恐ろしく遅い。一人でいると、あれこれと嫌な事ばかり考えてしまう。辛抱が出来ずに30分程してから部屋に戻る事にした。
英人の部屋の前で深呼吸をして耳を澄ます・・・。人の気配を感じない。俺はゆっくりドアノブを回した。玄関には二人の靴がある。リビングはカーテンを閉めたのか薄暗く、目が慣れてから足音を立てない様に中に入ったが居ない。バスルームも覗いたが居なかった。やはり、奥の寝室か・・・。(心臓の音が聞こえるほど緊張してくる。)
不自然に半分開いた寝室のドア。そこから微かに聞こえる静かな洋楽。俺はドアの隙間から中を覗いた。ベッドの上で、69の形でお互いの股間を舐め合う二人が見えた。
これは奇妙な三角関係が始まって三カ月位経った頃の話。いつも俺の自宅で会っていたので、〔たまには映画を見に行きたい。〕と英人が言い出した。三人で映画を見てから英人の部屋に行く、と言う計画だ。俺はこの提案を英人から聞いた時、勿論映画なんてどうでも良く、英人の部屋で真昼間から翠が抱かれる姿を想像していた。英人の部屋で《セックスする》という事を誰も口にしないが、三人が集まればそうなる、という事は既にこの時は暗黙の了解であった。
映画の話は割愛する。俺は中身なんて全く覚えていない・・・。何故なら、気持ちは既に次に飛んでいたという事もあるけど、映画を見ている最中ずっと英人と翠が手を握り合っていたのを俺は知っていたから。嫉妬と興奮で二時間イライラドキドキしっ放しだった。
軽めのランチを取ってから英人のマンションへ移動をする。英人の2LDKの部屋は初めてだった。家具調度品はシンプルで、リビングには趣味のエレキギターが置いてあった。ソファについてからビールを勧められたが断わった。また寝てしまったら元も子もないから・・・・。西日が建物に隠れ、部屋が急に薄暗くなる夕方まで他愛の無い話をしていたが、話題が尽きた様に暫くの沈黙、そして英人が〔さて、シャワー浴びてくるかな・・・・。〕っと言った。
英人がおもむろに立ち上がる。その時、俺は咄嗟に意味不明なことを言ってしまった。
「翠、一緒に入ってきたら?」
『はっ?・・・・。』
一瞬固まる二人。翠は怒る、と言うよりも困惑している表情で俺を見つめた。しかし、すぐに英人を見上げ、その表情は媚びる様なものになっていった。悔しいが、一瞬二人が見つめ合い、すぐに意思疎通したように見えた。やっぱりまだ英人の事が好きなのかも・・・・。
英人が言った。〔翠ちゃん、狭いけど・・・・一緒に入る?・・・・〕自分から言っといて矛盾しているが、俺は翠に「断わってくれ。」と心の中で叫んでいた。
『・・・・うん・・・・。』
立ち上がって英人の後を追う翠。俺の方を振り返り、涙がこぼれそうな程に潤んだ瞳で見つめられた。
『これで・・・いいんだよね?』
俺は言葉を返す事が出来なかった。そんな俺を見つめながら翠がバスルームの奥へ消える。瞳が潤んでいたのは泣きたいからではなく、恥ずかしさからだったと思う。恥ずかしさ、イコール嬉しさか・・・・。(その時はそう思っていたのだ。)
この関係が始まってから俺達二人の夫婦仲は一段と深まった。二人でいる時には翠は俺から離れようとしない。結婚して暫く経ち、安心した気分にすっかり浸っていた俺も、何時の間にか翠を必死に求めていた。
うまく言えないが、翠が英人と付き合っていた頃を想い出していた。あの頃は、忘れようとすればする程翠の事が頭から離れず、友人の彼女なのだから振り向いてくれるはずもないのに、心の中で必死に翠の事を求めていた。英人に翠との付き合いの中身を聞かされる度に胸を掻き毟(むし)りたくなる様な嫉妬、青臭い青春の日々を思い出していたのだ。
「結婚をして俺の一番近くに居る人なのに、翠が何故か逃げて行くのでは?」との不安心もあったのかも知れない。兎に角、翠との仲が深まるに連れ、改めて翠を追い求めるようになっていた。(一年経った今だから言えるが、翠を英人に取られるんじゃないかと、本気で思っていた。)
そんな翠が、俺の嫁が、昔大好きだった男と一緒に歩いて行く後ろ姿を見て、情けない事に涙が出そうになった。今更ながら、これから起きる事に対して臆病になった俺は、いたたまれず、《用事思い出したので出てくる。適当に戻るので、気にしないでください。》とメモを書いている指が震えていた。そして、そのまま部屋を出た。
俺は近所のコンビニに寄って雑誌を立ち読みする。しかし、時間の経過が恐ろしく遅い。一人でいると、あれこれと嫌な事ばかり考えてしまう。辛抱が出来ずに30分程してから部屋に戻る事にした。
英人の部屋の前で深呼吸をして耳を澄ます・・・。人の気配を感じない。俺はゆっくりドアノブを回した。玄関には二人の靴がある。リビングはカーテンを閉めたのか薄暗く、目が慣れてから足音を立てない様に中に入ったが居ない。バスルームも覗いたが居なかった。やはり、奥の寝室か・・・。(心臓の音が聞こえるほど緊張してくる。)
不自然に半分開いた寝室のドア。そこから微かに聞こえる静かな洋楽。俺はドアの隙間から中を覗いた。ベッドの上で、69の形でお互いの股間を舐め合う二人が見えた。
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