『美鈴(みすず)』 1章その21
名C美鈴(みすず)その21
それからの私達は、ことあるごとに言い争いが増えて行きました。しかし、私自身は心の奥底では美鈴を嫌いになっていた訳ではなかったように思います。同じように美鈴も少しはそんな思いはあったのでしょう。お互いに自分の言動でこうなってしまったと痛感していたからです。
けれど現実は、お互いに歩み寄ろうとして行動や態度で示しても相手が今までのような言動と違うことに美鈴も私も、苛立ちを感じてそこから言い争いが始まるのでした。そんな頃、娘の花帆は部活の合宿へ行って家を開ける日がありました。
いつもなら花帆がいるので、なんとかぎこちなくとも会話をしていた私達でしたが、その日は私が仕事から帰ってきても重苦しい空気が立ち込めていました。とくに会話もせずに、夕飯を食べてお互い風呂に入り、ただテレビを見ている二人でしたが、ドラマか何かだったと思うのですが、親が離婚を考えている子供が両親に涙で訴えるシーンがありました。美鈴はその画面を見ながら涙しているのが、私にはわかりました。美鈴も私と同じようにそのシーンを自分にダブらせて見ているんだと思いました。
「なぁ~ ママ、彼とはどうなっているんだ?」と重苦しい雰囲気の中私は美鈴に問いかけました。ドラマを見て涙した美鈴は鼻をすすりながら『どうって?』と美鈴が私にそう言いました。
「俺と彼が偶然街で逢ったのは知っているんだろ?」
『・・・・うん。聞いたけど。』
「そっか。で彼とは?」
『時々電話で話しをするくらい・・・。』
「彼は〔俺からママを奪う。〕って言ってた。」
『・・・』
「ママはどうなんだ?」
『・・・わかんない。そんなことわかんな、』
「何がわからないの?」
『私がどうしたいのかが・・。』
「逢ってはいないのか?」
『〔逢おう。〕って言われるけど・・・逢えないよ。』
「どうして?」
『わかんない・・。』美鈴は俯き加減でそう言いました。
「俺は正直、ママを許せないって気持ちがないとはいえないけど俺自身のせいで、こうなったとも思っている。」
『・・・』
「勝手だけど俺はママとは離婚なんか考えていない・・。」
『・・・』美鈴は何も言いませんでした。
「一度彼と逢ってみれば?俺もママが彼に逢いに行って自分自身の気持ちを考えてみるから。」
『・・・』
美鈴は何もいわずに、テーブルの周りを整理して『寝るね。』と言い残し寝室へと行きました。また美鈴に彼に逢いに行けと言ってしまった。美鈴は私のその言葉をどう受け取ったのだろうか?
私は自分自身、性癖を満たす為に彼と逢えと言ったつもりはありませんでした。美鈴自身、彼と逢う事を避けているからにはそれなりの理由があるからだと。それが私に隠れて逢うことを意地になってしなかったのか、それとも逢ってしまうともう私の元へ戻れなくなってしまうのか・・。私はこれからの二人の関係がそれによってすべて判断されると思ったからでした。
次の週の週末に私が仕事をしていると美鈴からメールがありました。≪今日仕事が終われば連絡をください。いつものお店で少し話がしたいので。≫と書いてありました。仕事が終わり美鈴に電話して、店へと行きました。私が店に着いた時には、まだ美鈴は来ていませんでした。けれど店に入って席についた頃に美鈴はやって来ました。
「話って?」と美鈴に聞き、ビールと少しのつまみを注文しました。
『ごめんね。疲れているのに。』
「いいよ。で話ってのは?」
『うん。木嶋君と一度冷静に話をしてくれないかな?』
「なんで?俺があいつと話をしないといけないんだ?」
『パパはどうしてそんな言い方しかしないの?』
「俺が話をする理由なんてないじゃないか。」
『電話でもいいから一度話をしてよ!でなきゃ私、どうすればいいかわかんないの。』
美鈴は目に涙を浮かべて私を見てそう言いました。
「わかった。何を話せばいいのか、わからないけどママがそう言うんだったら。」
『・・・。』
美鈴はそう言ってバックからスマホを出して電話をかけます。
『もしもし? ううん。今主人といるから・・・少し主人と話してくれる?うん。うん。じゃぁ代わるね。』
美鈴はそう言って私にスマホを渡しました。
2014/10/08
それからの私達は、ことあるごとに言い争いが増えて行きました。しかし、私自身は心の奥底では美鈴を嫌いになっていた訳ではなかったように思います。同じように美鈴も少しはそんな思いはあったのでしょう。お互いに自分の言動でこうなってしまったと痛感していたからです。
けれど現実は、お互いに歩み寄ろうとして行動や態度で示しても相手が今までのような言動と違うことに美鈴も私も、苛立ちを感じてそこから言い争いが始まるのでした。そんな頃、娘の花帆は部活の合宿へ行って家を開ける日がありました。
いつもなら花帆がいるので、なんとかぎこちなくとも会話をしていた私達でしたが、その日は私が仕事から帰ってきても重苦しい空気が立ち込めていました。とくに会話もせずに、夕飯を食べてお互い風呂に入り、ただテレビを見ている二人でしたが、ドラマか何かだったと思うのですが、親が離婚を考えている子供が両親に涙で訴えるシーンがありました。美鈴はその画面を見ながら涙しているのが、私にはわかりました。美鈴も私と同じようにそのシーンを自分にダブらせて見ているんだと思いました。
「なぁ~ ママ、彼とはどうなっているんだ?」と重苦しい雰囲気の中私は美鈴に問いかけました。ドラマを見て涙した美鈴は鼻をすすりながら『どうって?』と美鈴が私にそう言いました。
「俺と彼が偶然街で逢ったのは知っているんだろ?」
『・・・・うん。聞いたけど。』
「そっか。で彼とは?」
『時々電話で話しをするくらい・・・。』
「彼は〔俺からママを奪う。〕って言ってた。」
『・・・』
「ママはどうなんだ?」
『・・・わかんない。そんなことわかんな、』
「何がわからないの?」
『私がどうしたいのかが・・。』
「逢ってはいないのか?」
『〔逢おう。〕って言われるけど・・・逢えないよ。』
「どうして?」
『わかんない・・。』美鈴は俯き加減でそう言いました。
「俺は正直、ママを許せないって気持ちがないとはいえないけど俺自身のせいで、こうなったとも思っている。」
『・・・』
「勝手だけど俺はママとは離婚なんか考えていない・・。」
『・・・』美鈴は何も言いませんでした。
「一度彼と逢ってみれば?俺もママが彼に逢いに行って自分自身の気持ちを考えてみるから。」
『・・・』
美鈴は何もいわずに、テーブルの周りを整理して『寝るね。』と言い残し寝室へと行きました。また美鈴に彼に逢いに行けと言ってしまった。美鈴は私のその言葉をどう受け取ったのだろうか?
私は自分自身、性癖を満たす為に彼と逢えと言ったつもりはありませんでした。美鈴自身、彼と逢う事を避けているからにはそれなりの理由があるからだと。それが私に隠れて逢うことを意地になってしなかったのか、それとも逢ってしまうともう私の元へ戻れなくなってしまうのか・・。私はこれからの二人の関係がそれによってすべて判断されると思ったからでした。
次の週の週末に私が仕事をしていると美鈴からメールがありました。≪今日仕事が終われば連絡をください。いつものお店で少し話がしたいので。≫と書いてありました。仕事が終わり美鈴に電話して、店へと行きました。私が店に着いた時には、まだ美鈴は来ていませんでした。けれど店に入って席についた頃に美鈴はやって来ました。
「話って?」と美鈴に聞き、ビールと少しのつまみを注文しました。
『ごめんね。疲れているのに。』
「いいよ。で話ってのは?」
『うん。木嶋君と一度冷静に話をしてくれないかな?』
「なんで?俺があいつと話をしないといけないんだ?」
『パパはどうしてそんな言い方しかしないの?』
「俺が話をする理由なんてないじゃないか。」
『電話でもいいから一度話をしてよ!でなきゃ私、どうすればいいかわかんないの。』
美鈴は目に涙を浮かべて私を見てそう言いました。
「わかった。何を話せばいいのか、わからないけどママがそう言うんだったら。」
『・・・。』
美鈴はそう言ってバックからスマホを出して電話をかけます。
『もしもし? ううん。今主人といるから・・・少し主人と話してくれる?うん。うん。じゃぁ代わるね。』
美鈴はそう言って私にスマホを渡しました。
2014/10/08
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