『美鈴(みすず)』 1章その23
名C美鈴(みすず)その23
美鈴は私に助けを求めていたのです。いつこの手紙を書いたのかわかりませんが、美鈴自身も最悪の離婚を考えて書いた手紙だったのかもしれません。しかし、今日出かける前かそれとも少し前かはわかりませんが、美鈴自身がこの手紙を自分で捨てたのは間違いありません。美鈴はこの内容をも諦めてきっと手紙を捨てたのでしょう。私は自分の愚かさを尚更悔やみました。
私は美鈴に直ぐに電話をかけようとしましたが、昨夜少し話しをしたときに美鈴が私に『どんな気持ちになっても絶対に電話やメールはしないで欲しい。』と言われたのを思い出しました。私は美鈴をなぜ引きとめなかったのかと自分を強く攻めながら、家を出て近くの駅や近くの繁華街で美鈴の姿を探しましたが見つける事はできませんでした。
家に戻った頃には花帆も家に帰ってきていて、外は真っ暗になっていました。花帆と食事にでかけ、美鈴のいない2人での食事は私自身は楽しくはありませんでした。花帆も最近私達がうまくいっていないのも察しているようで、美鈴の外出に関しての話は私にはしませんでした。食事を終えてそれぞれが風呂にはいり、それぞれの部屋に戻った頃に時計を見ると午後10時を少し過ぎていました。
もし美鈴が帰って来るならそろそろかな?と少し安堵した気持ちにもなりました。12時を過ぎても美鈴が帰ってないことに苛立ちを感じ始めます。何度もスマホを手にしては美鈴に電話をしようと思うのですが、美鈴との約束を破ることは出来ませんでした。漸(ようや)く 午前2時を過ぎた頃、美鈴からメールが来ました。≪パパごめんなさい。今日は帰れません。≫その内容は私に絶望感を与えました。美鈴と話したときに『泊まらずに帰ってくれば許して欲しい。泊まって帰ってくればわたし(美鈴)を追い出せ。』と自分の口から言っていたのに・・・美鈴は私より木嶋を選んだのです。
「今ごろあの木嶋と・・・俺と花帆を見捨てて自分だけが・・・」最初は怒りで身体が震える程でした。けれどしばらくすると悲しみが私を襲ってきました。自業自得だとはわかっていてもやりきれない寂しさと悲しさがこみ上げ、どうすることも出来ません。頭に浮かぶのは楽しそうに木嶋と戯れる美鈴の姿でした。
私は缶酎ハイを一気に飲みました。いつもならしばらくして酔いが回ってくるのですが、どれだけ飲んでも今の自分の気持ちを忘れさせてくれることはありませんでした。私は泣きに泣きました。まるで子供の頃のように・・・気が付くと辺りがボーッと明るくなり始めていました。何本も飲んだせいで頭はガンガンするし気持ちは悪いし・・・最悪です。布団に入り目を閉じるのですが、目に浮かぶのは美鈴ではなくまだ眠っている花帆の顔でした。自分のせいで娘まで辛い思いをさせるのかと・・・。
花帆のことを考えていると、ふと美鈴が捨てた私への手紙を思い出しました。
《パパにもし少しでも私に愛情が残っているのなら・・・努力してください。》
何度も何度もその手紙を美鈴の寝室から持って来て読みました。読み返しているうちに、自分の中にある美鈴への愛情を確かめながら美鈴を取り戻すことを決意しました。
朝の8時を過ぎた頃だったと思います。美鈴からメールが届きました。
≪パパごめんなさい。今から家に帰ります。≫
私はそのメールを見て大きく深呼吸をして「よし!花帆のためにも」と心の中で叫びました。そして美鈴にメールを返します。
≪気を付けて帰っておいで。≫
そのメールを返信した後に花帆がバタバタと部活に出かけて行きました。しばらくして家の前に車が止まった音がしたので外を見て見ると美鈴がタクシーで帰って来ました。
『ただいま・・・。』と小さな声で玄関を入って来た美鈴はとても疲れているようでした。
「おかえり・・・疲れているみたいだね。」と私が言うと美鈴は目に涙をいっぱい浮かべて言いました。
『パパごめんなさい・・・パパの好きなようにして下さい。』
「わかった・・・。」
『・・・本当に・・・ごめんなさい。』
「俺の好きなようにしていいんだね?」
『うん・・。』
「じゃぁ一緒に風呂でも入るか?」と私が言うと美鈴は目をまん丸にして
『え??どうして?』
「ママさぁ~、俺に手紙書いてくれてただろ?」
『え?手紙?』
「寝室に捨ててあったママが俺に書いてくれた手紙を読んだ。」
『そう・・。』
「あぁ~ とにかく風呂に一緒に入ろうよ。」
『けど・・。』
「けど?どうしたの?」
『私・・・パパに見せられないよ・・・。』
「なぁ~ママ?正直に言うよ。確かに今は怒りもあるのは事実だよ。けどね情けないけどママを許せるかどうか解らないけど、今はママを嫌いにはなれないんだ。」
『・・・・・・・』美鈴は無言です。」
「ママの気持ちはどうか解らないけど、俺は努力してみるよ。」
2014/10/11
美鈴は私に助けを求めていたのです。いつこの手紙を書いたのかわかりませんが、美鈴自身も最悪の離婚を考えて書いた手紙だったのかもしれません。しかし、今日出かける前かそれとも少し前かはわかりませんが、美鈴自身がこの手紙を自分で捨てたのは間違いありません。美鈴はこの内容をも諦めてきっと手紙を捨てたのでしょう。私は自分の愚かさを尚更悔やみました。
私は美鈴に直ぐに電話をかけようとしましたが、昨夜少し話しをしたときに美鈴が私に『どんな気持ちになっても絶対に電話やメールはしないで欲しい。』と言われたのを思い出しました。私は美鈴をなぜ引きとめなかったのかと自分を強く攻めながら、家を出て近くの駅や近くの繁華街で美鈴の姿を探しましたが見つける事はできませんでした。
家に戻った頃には花帆も家に帰ってきていて、外は真っ暗になっていました。花帆と食事にでかけ、美鈴のいない2人での食事は私自身は楽しくはありませんでした。花帆も最近私達がうまくいっていないのも察しているようで、美鈴の外出に関しての話は私にはしませんでした。食事を終えてそれぞれが風呂にはいり、それぞれの部屋に戻った頃に時計を見ると午後10時を少し過ぎていました。
もし美鈴が帰って来るならそろそろかな?と少し安堵した気持ちにもなりました。12時を過ぎても美鈴が帰ってないことに苛立ちを感じ始めます。何度もスマホを手にしては美鈴に電話をしようと思うのですが、美鈴との約束を破ることは出来ませんでした。漸(ようや)く 午前2時を過ぎた頃、美鈴からメールが来ました。≪パパごめんなさい。今日は帰れません。≫その内容は私に絶望感を与えました。美鈴と話したときに『泊まらずに帰ってくれば許して欲しい。泊まって帰ってくればわたし(美鈴)を追い出せ。』と自分の口から言っていたのに・・・美鈴は私より木嶋を選んだのです。
「今ごろあの木嶋と・・・俺と花帆を見捨てて自分だけが・・・」最初は怒りで身体が震える程でした。けれどしばらくすると悲しみが私を襲ってきました。自業自得だとはわかっていてもやりきれない寂しさと悲しさがこみ上げ、どうすることも出来ません。頭に浮かぶのは楽しそうに木嶋と戯れる美鈴の姿でした。
私は缶酎ハイを一気に飲みました。いつもならしばらくして酔いが回ってくるのですが、どれだけ飲んでも今の自分の気持ちを忘れさせてくれることはありませんでした。私は泣きに泣きました。まるで子供の頃のように・・・気が付くと辺りがボーッと明るくなり始めていました。何本も飲んだせいで頭はガンガンするし気持ちは悪いし・・・最悪です。布団に入り目を閉じるのですが、目に浮かぶのは美鈴ではなくまだ眠っている花帆の顔でした。自分のせいで娘まで辛い思いをさせるのかと・・・。
花帆のことを考えていると、ふと美鈴が捨てた私への手紙を思い出しました。
《パパにもし少しでも私に愛情が残っているのなら・・・努力してください。》
何度も何度もその手紙を美鈴の寝室から持って来て読みました。読み返しているうちに、自分の中にある美鈴への愛情を確かめながら美鈴を取り戻すことを決意しました。
朝の8時を過ぎた頃だったと思います。美鈴からメールが届きました。
≪パパごめんなさい。今から家に帰ります。≫
私はそのメールを見て大きく深呼吸をして「よし!花帆のためにも」と心の中で叫びました。そして美鈴にメールを返します。
≪気を付けて帰っておいで。≫
そのメールを返信した後に花帆がバタバタと部活に出かけて行きました。しばらくして家の前に車が止まった音がしたので外を見て見ると美鈴がタクシーで帰って来ました。
『ただいま・・・。』と小さな声で玄関を入って来た美鈴はとても疲れているようでした。
「おかえり・・・疲れているみたいだね。」と私が言うと美鈴は目に涙をいっぱい浮かべて言いました。
『パパごめんなさい・・・パパの好きなようにして下さい。』
「わかった・・・。」
『・・・本当に・・・ごめんなさい。』
「俺の好きなようにしていいんだね?」
『うん・・。』
「じゃぁ一緒に風呂でも入るか?」と私が言うと美鈴は目をまん丸にして
『え??どうして?』
「ママさぁ~、俺に手紙書いてくれてただろ?」
『え?手紙?』
「寝室に捨ててあったママが俺に書いてくれた手紙を読んだ。」
『そう・・。』
「あぁ~ とにかく風呂に一緒に入ろうよ。」
『けど・・。』
「けど?どうしたの?」
『私・・・パパに見せられないよ・・・。』
「なぁ~ママ?正直に言うよ。確かに今は怒りもあるのは事実だよ。けどね情けないけどママを許せるかどうか解らないけど、今はママを嫌いにはなれないんだ。」
『・・・・・・・』美鈴は無言です。」
「ママの気持ちはどうか解らないけど、俺は努力してみるよ。」
2014/10/11
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