『美鈴(みすず)』 1章その28
名C『美鈴(みすず)』 1章その28
私は美鈴の中で木嶋の存在がどれだけ大きいのかが解りました。どうしようもない悔しさの中をただ受け止めるしかない私に美鈴が言いました。『けれどパパと・・・木嶋君は違うかな・・・。』美鈴はか細い声でそう天井を見つめて言いました。
「違う?何が?」
『パパはね、このまえ木嶋君を殴ったでしょ?』
「あぁ あの時は冷静じゃなかったからな・・・彼にはすまないことをしたと思っている。」
『木嶋君は殴られても仕方ないって言っいてた・・・けどね・・・。』
「けど?」
『私が抱かれてから、木嶋君はパパのことをずっと悪くばかり言うの・・・何につけてもね・・・。』
「そう言われても仕方はないさ。」
『パパはそうじゃなかったでしょ?私が抱かれて帰って来ても木嶋君を責めたり、悪く言ったりしなかった。』
「いや、それは自分で蒔いた種だから・・・。」
『そうかな?』
「そうだよ。」
『でもパパは私のことばかり考えてくれていたよ・・・。』
「俺と彼とでは立場が違うから一緒の様にはいかないさ。」
「ううん・・・違うよ」
「そうかな?俺も彼の立場なら同じだと思うよ」
「そうかな?きっと違うと思う・・・あのね・・・木嶋君にね」
「うん」
「あの日の帰りにも言われたんだけど・・・・パパに絶対に抱かれるなって」
「そうなんだ」
「うん。電話で話してもパパが抱こうとしないか?抱かれてないか?っていつも聞くの・・・」
「抱かれてないって言えばいいじゃないか?」
「そうは言ったよ・・・けどね・・・パパが木嶋君の所へ行かせてくれたでしょ?」
「あぁ」
「パパが今言ったように私も聞いたの。もし立場が逆なら木嶋君はパパとお別れするために私に行かせてくれる?って聞いたの・・・」
「そんなこと聞いたんだ・・・」
「そのときに木嶋君はパパの事・・・バカな旦那だって・・・自分ならそんなこと絶対にさせないし、無理やりでも自分で別れさすって・・・」
「・・・・まぁ情けない旦那だってことかな・・・」
そう私が言うと、美鈴は立ち上がり窓の外をみながら私に言いました。
『私ね・・・パパと今日食事に出かけてからずっと考えていたの。』
「考えていたって?」
『うん。パパとラーメンを食べたよね・・・そして街も歩いた・・・。』
「あぁそうだね。」
『私ね・・・彼に抱かれた後、家に帰る前にここでお風呂に入ったの・・・勿論一人でだよ。』
「彼と一緒にじゃないの?」と私は尋ねる。
『うん。一緒に入ろうって誘われたけどね・・・。』
「断ったんだ?」
『うん。一人でお風呂に入ったときに始めて夜景に気付いたの・・・綺麗だなって。』
「それまで気付かなかったんだ?」
『うん・・・夜景を見ているとね・・・パパとこんなところ来たことないなって・・・。』
「・・・・そうだね・・・。」
『そのことを今日歩いていると思い出したの・・・私がそんなこと思っているときに、パパは私の帰りをずっと待っていてくれたんだって・・・。』
「・・・・・・」そう聞いた時に複雑な想いがした。
『だから私パパと今日ここへ来たかったの・・・。』
「そっか・・・。」
『それでね・・・今日ここへ来てすぐに夜景が綺麗に見えることに気付いたの・・・。』
「うん。」
『でね・・・・私・・・ここへ来てよかったって思う。』
「どうして?」
『今の私が・・・今の・・・私がね本当の私なんだって・・・パパが気付かせてくれた・・・。』
私を見る美鈴の顔は涙は流している。そこには私だけに見せる美鈴の本当の笑顔がありました。私の一番見慣れた美鈴の笑顔が・・・。
《現実逃避》・・・そんな言葉を美鈴に投げかけて私は美鈴に自分の欲求を満足させるために自分以外の男に抱かれる事を企てました。そして美鈴は抱かれました。そこには興奮と嫉妬という性への満足感は満たされました。しかしそのことで、私の心の狭さや、男としての小ささで夫婦にとって大きな代償を払いました。
その代償も私達はなんとか二人の力で乗り越えることが出来たと私自身は考えています。
しかし今でも、私の心の中にも美鈴の心の中にも今回の出来事は決して消えることはありません。ふとした事から思い出してしまうのが人間だけれど私は今でも美鈴を責めることはしないでいます。
しかし、この出来事以来美鈴は本当に綺麗になったと思います。私以外の男性に恋心を抱き、母親からもう一度一人の女として戻ったように私には思えます。今では冗談で私に『パパ~この間、またジロジロ見られちゃったよ~また口説かれたらパパはどうする~~?』なんて私をドキドキさせてくれる美鈴がいます。
2014/10/25
私は美鈴の中で木嶋の存在がどれだけ大きいのかが解りました。どうしようもない悔しさの中をただ受け止めるしかない私に美鈴が言いました。『けれどパパと・・・木嶋君は違うかな・・・。』美鈴はか細い声でそう天井を見つめて言いました。
「違う?何が?」
『パパはね、このまえ木嶋君を殴ったでしょ?』
「あぁ あの時は冷静じゃなかったからな・・・彼にはすまないことをしたと思っている。」
『木嶋君は殴られても仕方ないって言っいてた・・・けどね・・・。』
「けど?」
『私が抱かれてから、木嶋君はパパのことをずっと悪くばかり言うの・・・何につけてもね・・・。』
「そう言われても仕方はないさ。」
『パパはそうじゃなかったでしょ?私が抱かれて帰って来ても木嶋君を責めたり、悪く言ったりしなかった。』
「いや、それは自分で蒔いた種だから・・・。」
『そうかな?』
「そうだよ。」
『でもパパは私のことばかり考えてくれていたよ・・・。』
「俺と彼とでは立場が違うから一緒の様にはいかないさ。」
「ううん・・・違うよ」
「そうかな?俺も彼の立場なら同じだと思うよ」
「そうかな?きっと違うと思う・・・あのね・・・木嶋君にね」
「うん」
「あの日の帰りにも言われたんだけど・・・・パパに絶対に抱かれるなって」
「そうなんだ」
「うん。電話で話してもパパが抱こうとしないか?抱かれてないか?っていつも聞くの・・・」
「抱かれてないって言えばいいじゃないか?」
「そうは言ったよ・・・けどね・・・パパが木嶋君の所へ行かせてくれたでしょ?」
「あぁ」
「パパが今言ったように私も聞いたの。もし立場が逆なら木嶋君はパパとお別れするために私に行かせてくれる?って聞いたの・・・」
「そんなこと聞いたんだ・・・」
「そのときに木嶋君はパパの事・・・バカな旦那だって・・・自分ならそんなこと絶対にさせないし、無理やりでも自分で別れさすって・・・」
「・・・・まぁ情けない旦那だってことかな・・・」
そう私が言うと、美鈴は立ち上がり窓の外をみながら私に言いました。
『私ね・・・パパと今日食事に出かけてからずっと考えていたの。』
「考えていたって?」
『うん。パパとラーメンを食べたよね・・・そして街も歩いた・・・。』
「あぁそうだね。」
『私ね・・・彼に抱かれた後、家に帰る前にここでお風呂に入ったの・・・勿論一人でだよ。』
「彼と一緒にじゃないの?」と私は尋ねる。
『うん。一緒に入ろうって誘われたけどね・・・。』
「断ったんだ?」
『うん。一人でお風呂に入ったときに始めて夜景に気付いたの・・・綺麗だなって。』
「それまで気付かなかったんだ?」
『うん・・・夜景を見ているとね・・・パパとこんなところ来たことないなって・・・。』
「・・・・そうだね・・・。」
『そのことを今日歩いていると思い出したの・・・私がそんなこと思っているときに、パパは私の帰りをずっと待っていてくれたんだって・・・。』
「・・・・・・」そう聞いた時に複雑な想いがした。
『だから私パパと今日ここへ来たかったの・・・。』
「そっか・・・。」
『それでね・・・今日ここへ来てすぐに夜景が綺麗に見えることに気付いたの・・・。』
「うん。」
『でね・・・・私・・・ここへ来てよかったって思う。』
「どうして?」
『今の私が・・・今の・・・私がね本当の私なんだって・・・パパが気付かせてくれた・・・。』
私を見る美鈴の顔は涙は流している。そこには私だけに見せる美鈴の本当の笑顔がありました。私の一番見慣れた美鈴の笑顔が・・・。
《現実逃避》・・・そんな言葉を美鈴に投げかけて私は美鈴に自分の欲求を満足させるために自分以外の男に抱かれる事を企てました。そして美鈴は抱かれました。そこには興奮と嫉妬という性への満足感は満たされました。しかしそのことで、私の心の狭さや、男としての小ささで夫婦にとって大きな代償を払いました。
その代償も私達はなんとか二人の力で乗り越えることが出来たと私自身は考えています。
しかし今でも、私の心の中にも美鈴の心の中にも今回の出来事は決して消えることはありません。ふとした事から思い出してしまうのが人間だけれど私は今でも美鈴を責めることはしないでいます。
しかし、この出来事以来美鈴は本当に綺麗になったと思います。私以外の男性に恋心を抱き、母親からもう一度一人の女として戻ったように私には思えます。今では冗談で私に『パパ~この間、またジロジロ見られちゃったよ~また口説かれたらパパはどうする~~?』なんて私をドキドキさせてくれる美鈴がいます。
2014/10/25
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