『妻の3年』 vol.23〔実花〕
中D『妻の3年』 vol.23〔実花〕
伊藤氏のビルの改装工事が始まり、現場の監督として、毎日業者との打合せをしなければならないので、少なくとも2時間程度は現場にいた。2Fの窓から見ると、丁度そこは、道路が眼よりも少し高い位置になる。頭の上辺りを人が歩いていることになる。何気なく通行人を見ていると、OLらしいタイトスカートを穿いた女性が向ってくる。
スカートを覗くような目線になる。パーンと張った太ももから腰の動き、揺れる乳房。そのときに気が付いたが、このアングルから見上げると、女は、ほとんどが“いい女”に見える。現場で、そんなバカなことばかりを考えていたが、工事は順調に終り、竣工となった。伊藤夫妻にも気に入ってもらうことができた。
その改装工事は、今まで世話になった会社への恩返しと言うことで、竣工後に、円満退社で正式に独立した。社長も、「
慣れている人が居た方が良いのではないか。」と、今まで私の助手として働いていた川島実花を付けてくれた。彼女は、二級建築士の資格があり、よく気が付くしっかりした娘なので、今までも重宝していたが、私の事務所に喜んで来てくれた。もう一人、営業ができ、現場も管理できる大学時代の後輩の石田公彦が来てくれる事になり、3人のスタッフでスタートすることになった。
事務所は、改装工事をした伊藤氏のビルの2Fである。毎日、通る女の子のスカートが覗ける事務所だ。こんな楽しい仕事場もあまりないだろう。ボーっとして、女の子が通るたびに見上げていると、実花に〚所長、なに見てるんですか!〛と、一喝される。実花は、現場での打合せの時も、私と同じ作業服を着て作業員の親方たちと打合せをする。遠慮することはなく、悪いところは厳しく指摘する。が、それでいて“実花ちゃん、実花ちゃん”と慕われている。
言うことを厳しく言っても、憎まれないのは実花の愛嬌のある性格だろう。男たちと一緒に、現場を片付けたり、掃除をしたりなどは積極的に嫌がらないでやる。現場の連中は、上からの目線でものを言われると反発するが、同じ目線でものを云われると意外と素直に聞くものである。
“男勝り”という形容詞は実花には当て嵌まらない。むしろ“現場のアイドル”と言ったほうが適当だろう。男と同じ格好をして掃除などをしていても、ちょっと屈んだ時などの円く浮き出るようなヒップラインを見ているとドキッとする時がある。琴美も雅子さんもそうだが、“円(まる)い”という言葉は、女の尻を表現するためにある言葉だと思う。女の四角いケツなどはご免である。男ばかりの殺伐とした現場に、実花の存在は貴重である。
実花は、学生の時に、私が勤めていた設計事務所にアルバイトとしてきていた。その頃から、私の助手として現場にも一緒についてきた。ケラケラとよく笑う、根っからの明るい性格で、現場の職人たちとも直ぐに打ち解けるような性格だった。
なぜ、その設計事務所が気に入ったのかは知らないが、大学を出て大手のゼネコンや設計事務所にも就職することはできたのに、アルバイトの延長のように正社員となった。正社員となっても、私の助手という仕事の内容は変わらなかったが、実花は、それに対しての不満は一度も言ったことがない。仕事の忙しい時は遅くまで図面を引いたり、打合せの書類や工程表等を作成したりして私を補佐してくれた。何をやってもそつなくこなし、ほとんど完璧な助手であった。
実花の田舎は九州だが、一度、母親が上京してきたとき、実花のマンションに何日か泊っていたことがあり、たまたま、送っていったときに挨拶されたことがあった。
父親は、彼女が中学生の時に亡くなっている。今は、姉と母の女3人で、九州に姉と母が暮らしている。
実花は、いつもジーパンを穿き、肩くらいまでの髪をポニーテールにして、小麦色の健康的な肌に、化粧はほとんどしていない。それで私も実花を、女として特に気を使うようなこともなく、他の男性社員と同じように接してきた。それでも、忙しいとはいえ、さすがに遅くなると、先に帰るように言うのだが、“大丈夫です”といい、仕事を止めようとしない。帰りは、一人で帰すわけにもいかず、何度か私が車でマンションまで送った。車の助手席に乗るときは嬉しそうに、ふと女の子らしい一面を見せる。
実花が、私の事務所に来て半年ほど経った頃、伊藤氏より新たな仕事の依頼があった。伊藤氏がある人の別邸を購入した。敷地が3000坪もある豪邸で、建物が古いので取り壊して建て直すというものだ。大事な客などの接待に使うのを主目的とする別邸として設計してほしい、という依頼だった。建物の述べ床面積が200坪程度の、ちょっとした迎賓館といった建物になる。やりがいのある仕事だった。
〚わたし、こういうのを設計するのが夢なんです。是非わたしに設計させてください。〛
と、実花が眼を輝かせた。工期的には余裕があったので、実花にやらせてみようと思った。
早速、現場に行った。車で1時間弱の距離である。庭園が素晴らしく落ち着いた佇まいの邸である。「これは、みっともない仕事はできないな。」と思った。実花に任せることに、少し不安を覚える。
2014/10/15
伊藤氏のビルの改装工事が始まり、現場の監督として、毎日業者との打合せをしなければならないので、少なくとも2時間程度は現場にいた。2Fの窓から見ると、丁度そこは、道路が眼よりも少し高い位置になる。頭の上辺りを人が歩いていることになる。何気なく通行人を見ていると、OLらしいタイトスカートを穿いた女性が向ってくる。
スカートを覗くような目線になる。パーンと張った太ももから腰の動き、揺れる乳房。そのときに気が付いたが、このアングルから見上げると、女は、ほとんどが“いい女”に見える。現場で、そんなバカなことばかりを考えていたが、工事は順調に終り、竣工となった。伊藤夫妻にも気に入ってもらうことができた。
その改装工事は、今まで世話になった会社への恩返しと言うことで、竣工後に、円満退社で正式に独立した。社長も、「
慣れている人が居た方が良いのではないか。」と、今まで私の助手として働いていた川島実花を付けてくれた。彼女は、二級建築士の資格があり、よく気が付くしっかりした娘なので、今までも重宝していたが、私の事務所に喜んで来てくれた。もう一人、営業ができ、現場も管理できる大学時代の後輩の石田公彦が来てくれる事になり、3人のスタッフでスタートすることになった。
事務所は、改装工事をした伊藤氏のビルの2Fである。毎日、通る女の子のスカートが覗ける事務所だ。こんな楽しい仕事場もあまりないだろう。ボーっとして、女の子が通るたびに見上げていると、実花に〚所長、なに見てるんですか!〛と、一喝される。実花は、現場での打合せの時も、私と同じ作業服を着て作業員の親方たちと打合せをする。遠慮することはなく、悪いところは厳しく指摘する。が、それでいて“実花ちゃん、実花ちゃん”と慕われている。
言うことを厳しく言っても、憎まれないのは実花の愛嬌のある性格だろう。男たちと一緒に、現場を片付けたり、掃除をしたりなどは積極的に嫌がらないでやる。現場の連中は、上からの目線でものを言われると反発するが、同じ目線でものを云われると意外と素直に聞くものである。
“男勝り”という形容詞は実花には当て嵌まらない。むしろ“現場のアイドル”と言ったほうが適当だろう。男と同じ格好をして掃除などをしていても、ちょっと屈んだ時などの円く浮き出るようなヒップラインを見ているとドキッとする時がある。琴美も雅子さんもそうだが、“円(まる)い”という言葉は、女の尻を表現するためにある言葉だと思う。女の四角いケツなどはご免である。男ばかりの殺伐とした現場に、実花の存在は貴重である。
実花は、学生の時に、私が勤めていた設計事務所にアルバイトとしてきていた。その頃から、私の助手として現場にも一緒についてきた。ケラケラとよく笑う、根っからの明るい性格で、現場の職人たちとも直ぐに打ち解けるような性格だった。
なぜ、その設計事務所が気に入ったのかは知らないが、大学を出て大手のゼネコンや設計事務所にも就職することはできたのに、アルバイトの延長のように正社員となった。正社員となっても、私の助手という仕事の内容は変わらなかったが、実花は、それに対しての不満は一度も言ったことがない。仕事の忙しい時は遅くまで図面を引いたり、打合せの書類や工程表等を作成したりして私を補佐してくれた。何をやってもそつなくこなし、ほとんど完璧な助手であった。
実花の田舎は九州だが、一度、母親が上京してきたとき、実花のマンションに何日か泊っていたことがあり、たまたま、送っていったときに挨拶されたことがあった。
父親は、彼女が中学生の時に亡くなっている。今は、姉と母の女3人で、九州に姉と母が暮らしている。
実花は、いつもジーパンを穿き、肩くらいまでの髪をポニーテールにして、小麦色の健康的な肌に、化粧はほとんどしていない。それで私も実花を、女として特に気を使うようなこともなく、他の男性社員と同じように接してきた。それでも、忙しいとはいえ、さすがに遅くなると、先に帰るように言うのだが、“大丈夫です”といい、仕事を止めようとしない。帰りは、一人で帰すわけにもいかず、何度か私が車でマンションまで送った。車の助手席に乗るときは嬉しそうに、ふと女の子らしい一面を見せる。
実花が、私の事務所に来て半年ほど経った頃、伊藤氏より新たな仕事の依頼があった。伊藤氏がある人の別邸を購入した。敷地が3000坪もある豪邸で、建物が古いので取り壊して建て直すというものだ。大事な客などの接待に使うのを主目的とする別邸として設計してほしい、という依頼だった。建物の述べ床面積が200坪程度の、ちょっとした迎賓館といった建物になる。やりがいのある仕事だった。
〚わたし、こういうのを設計するのが夢なんです。是非わたしに設計させてください。〛
と、実花が眼を輝かせた。工期的には余裕があったので、実花にやらせてみようと思った。
早速、現場に行った。車で1時間弱の距離である。庭園が素晴らしく落ち着いた佇まいの邸である。「これは、みっともない仕事はできないな。」と思った。実花に任せることに、少し不安を覚える。
2014/10/15
- 関連記事
-
- 『妻の3年』 vol.16〔色気〕 (2014/09/23)
- 『妻の3年』 vol.17〔脱皮〕 (2014/09/27)
- 『妻の3年』 vol.18〔恐れ〕 (2014/10/04)
- 『妻の3年』 vol.19〔仕事の依頼〕 (2014/10/07)
- 『妻の3年』 vol.20〔伊藤氏との話から〕 (2014/10/10)
- 『妻の3年』 vol.21〔パパ、イク~〕 (2014/10/12)
- 『妻の3年』 vol.22〔前と後〕 (2014/10/13)
- 『妻の3年』 vol.23〔実花〕 (2014/10/15)
- 『妻の3年』 vol.24〔抱いてください①〕 (2014/10/17)
- 『妻の3年』 vol.25〔抱いてください②〕 (2014/10/20)
- 『妻の3年』 vol.26〔1日パパ〕 (2014/10/23)
- 『妻の3年』 vol.27〔女同士〕 (2014/10/25)
- 『妻の3年』 vol.28〔孫悟空〕 (2014/10/28)
- 『妻の3年』 vol.29〔思い出のスイートルーム〕 (2014/11/09)
- 『妻の3年』 vol.30〔復讐?〕 (2014/11/15)
コメント
コメントの投稿