『妻の3年』 vol.31〔恐れ①〕
中D『妻の3年』 vol.31〔恐れ①〕
待ち合わせ場所のホテルのロビーで、わたしの顔を見た伊藤さんは嬉しそうです。ホテルから伊藤さんの車で、郊外にある日本料理の店に移動しました。離れの部屋に通されると、男の人が先に座っていて、伊藤さんから紹介されました。その人は、不動産会社の社長で藤本さんという方でした。伊藤さんより少し年上のように見えました。
うちと同じで、伊藤さんの所有する不動産の管理だけでも商売になりそうです。そういえば、夫が事務所を借りる時に契約したのが、藤眞不動産という藤本さんの会社だったことが後で判りました。しかし、どうして今日は、藤本さんが一緒なのかは分かりませんでした。
伊藤さんに抱かれることは、覚悟はしていました(夫の謙一にはまだ内緒だが雅子さんのアドバイスで前回の生理からピルを飲んでいる。)が、藤本さんがその場に居ることに、なんとなく不安を感じていました。わたしの気持ちを察したのか〔雅子さんも、後で来るから。〕と伊藤さんが言いました。
藤本さんは「では、社長、お先に失礼します。」と、料理が出てくる前にいなくなりました。懐石料理が運ばれてきました。考えてみたら、いままでは、伊藤さんと会うときはいつもパパがいたのですが、パパがいない所で会うのは初めてだったことに気付きました。また少し、不安になりました。
『雅子さん、遅いですね……。』
〔ああ、雅子は別な場所に居るから、食事が終ったら合流することになっているんだ。〕
わたしが、《自分の意思で、伊藤さんに抱かれるために、一人で来たのだ。》ということを、漸(ようや)く、自分で気がついたことに、自分で驚きました。なぜ、こんなことになってしまったのか。頭の中が整理できませんでした。
ただ、《夫への復讐(仕返し)の気持だけなのか?それを理由に、伊藤さんとセックスしたいのか?》そんな思いが錯綜していました。
〔真柴さんが居ないと、元気がないね。どうしたの……。〕
いつものからかうような調子で、伊藤さんが私に言いました。
『あ、ごめんなさい。そんなことないです。ちょっと考え事をしていたので、ごめんなさい。』
わたしは、それから意識していつものように振舞うよう、努めました。
食事が終り、伊藤さんが立ち上がります。
〔さあ、雅子のところへ行こうか。〕
わたしは、何も考えずに伊藤さんの車の助手席に乗り込みました。更に寂しい場所へと移動しているようです。こんもりとした大きな木が生えている所に、重々しい鉄の門扉があり、伊藤さんの車がその前に停まると扉が左右に開きました。
そのまま、その邸の玄関まで、すごく長い距離を走っているような気がしました。ヨーロッパのお金持ちが住むような邸宅が見えます。駐車場には、4台の高級外車ばかりが停まっていました。
車から降りると潮風を感じました。きれいに手入れをされている広い庭園が、照明で浮かび上がっていて美しかった。伊藤さんにエスコートされて中に入ると、広いリビングに豪華なソファーが幾つも置いてありました。誰もいません。
『ここは、伊藤さんのお邸(やしき)なんですか?』
〔いや、さっきの藤本さんの別邸だよ。〕
『どなたもいらっしゃらないんですか?』
〔みんな奥に居ますよ。いってみましょうか……。〕
2014/11/18
待ち合わせ場所のホテルのロビーで、わたしの顔を見た伊藤さんは嬉しそうです。ホテルから伊藤さんの車で、郊外にある日本料理の店に移動しました。離れの部屋に通されると、男の人が先に座っていて、伊藤さんから紹介されました。その人は、不動産会社の社長で藤本さんという方でした。伊藤さんより少し年上のように見えました。
うちと同じで、伊藤さんの所有する不動産の管理だけでも商売になりそうです。そういえば、夫が事務所を借りる時に契約したのが、藤眞不動産という藤本さんの会社だったことが後で判りました。しかし、どうして今日は、藤本さんが一緒なのかは分かりませんでした。
伊藤さんに抱かれることは、覚悟はしていました(夫の謙一にはまだ内緒だが雅子さんのアドバイスで前回の生理からピルを飲んでいる。)が、藤本さんがその場に居ることに、なんとなく不安を感じていました。わたしの気持ちを察したのか〔雅子さんも、後で来るから。〕と伊藤さんが言いました。
藤本さんは「では、社長、お先に失礼します。」と、料理が出てくる前にいなくなりました。懐石料理が運ばれてきました。考えてみたら、いままでは、伊藤さんと会うときはいつもパパがいたのですが、パパがいない所で会うのは初めてだったことに気付きました。また少し、不安になりました。
『雅子さん、遅いですね……。』
〔ああ、雅子は別な場所に居るから、食事が終ったら合流することになっているんだ。〕
わたしが、《自分の意思で、伊藤さんに抱かれるために、一人で来たのだ。》ということを、漸(ようや)く、自分で気がついたことに、自分で驚きました。なぜ、こんなことになってしまったのか。頭の中が整理できませんでした。
ただ、《夫への復讐(仕返し)の気持だけなのか?それを理由に、伊藤さんとセックスしたいのか?》そんな思いが錯綜していました。
〔真柴さんが居ないと、元気がないね。どうしたの……。〕
いつものからかうような調子で、伊藤さんが私に言いました。
『あ、ごめんなさい。そんなことないです。ちょっと考え事をしていたので、ごめんなさい。』
わたしは、それから意識していつものように振舞うよう、努めました。
食事が終り、伊藤さんが立ち上がります。
〔さあ、雅子のところへ行こうか。〕
わたしは、何も考えずに伊藤さんの車の助手席に乗り込みました。更に寂しい場所へと移動しているようです。こんもりとした大きな木が生えている所に、重々しい鉄の門扉があり、伊藤さんの車がその前に停まると扉が左右に開きました。
そのまま、その邸の玄関まで、すごく長い距離を走っているような気がしました。ヨーロッパのお金持ちが住むような邸宅が見えます。駐車場には、4台の高級外車ばかりが停まっていました。
車から降りると潮風を感じました。きれいに手入れをされている広い庭園が、照明で浮かび上がっていて美しかった。伊藤さんにエスコートされて中に入ると、広いリビングに豪華なソファーが幾つも置いてありました。誰もいません。
『ここは、伊藤さんのお邸(やしき)なんですか?』
〔いや、さっきの藤本さんの別邸だよ。〕
『どなたもいらっしゃらないんですか?』
〔みんな奥に居ますよ。いってみましょうか……。〕
2014/11/18
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