中P〖妻と部長〗第16話
中P〖妻と部長〗第16話
私(伊勢重隆)は、レストランを出てから、すぐには部屋に戻らず、ホテル内を散策した。と言っても、一階フロアをぶらりとしただけだが。昨夜、妻の愛美(まなみ)が言っていた喫茶室があった。入り口に9時オープンと書いてあった。こちらでも朝食が取れるんだと思い、中を覗いてみたが愛美達はいなかった。何かが頭の中に引っかかる。何だろうかと考えながら、喫茶室を後にしようとした時に振り返って入り口横の看板をみた。
営業時間 AM9:00~PM9:00 と書いた看板が立っていた。昨夜の事を考える。パーティーが終了してから愛美はここで真田部長と部長の知り合いとお茶をしていたのではなかったか?冷や汗が流れてきた。愛美は私に嘘をついていたのか?それでは、空白のあの時間、私が涼子達とバーにいたあの時間、愛美達はどこで何を…。目の前が真っ暗になる。
私はその場に立ち尽くしていた。《いったい何がどうなっているんだ。愛美に昨日何があったと言うのだ。》絶望は次第に怒りに変化していった。チェックアウトを済ませたカップルが怒りに震えている私を避けながら怪訝そうな目を向けていく。私はエレベーターの方に歩き出し、愛美達の部屋に向かう。
エレベーターが愛美達の部屋の階で止まり、私は降りると足早に愛美達の部屋に向かった。ドアの前でノックをしようとして立ち止まる。怒りにまかせてここまで来たが何をしに来たのだろうか?あたりをキョロキョロと見回し、耳を当ててみる。何やら物音が聞こえる気がする。もう少し聞いていると気のせいかギシギシと物が動くような音に聞こえる。音の正体が気になったが2つ隣の部屋でドアが開く音がしたのでドアから離れ、足早にエレベーターに向かい自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとチェックアウトの準備をした。着衣や下着をバッグに入れるだけなのですぐに準備は終わった。携帯電話を見ると着信を示すランプが点滅していた。愛美からの着信かと期待したが涼子からのメールだった。≪今日も会えて嬉しかった。しばらく逢えないかもしれないけど、また逢いたい。必ず連絡ください。≫と言う内容だった。嬉しくなり、すぐにメールを返信したがすぐに気分が重くなった。
携帯を睨みながらベッドの端に座っていた。愛美に電話しようか迷っている。電話するにしても何を話したらよいのか?悩んでいる間にも時間は刻一刻と過ぎていく。手に汗をかいてきた。迷っていても仕方ない。私は深呼吸をすると愛美に電話を掛けた。呼び出し音だけが耳に虚しく響く。なかなか電話に出ないので切ろうかと諦めかけたその時、
『もしもし。どうしたの?』と愛美が出た。
「い、いや、別に用と言う訳じゃないんだけど、用意できたかなぁっと。」と口ごもった。
『まだ、化粧の最中よ。だから、電話を取るのが遅くなっちゃった。ごめんね。』
「朝食は食べた?」
『食べたわよ。それがどうしたの?』
「いやぁ、レストランで見かけなかったから…。」
『多分、時間が違ったのかな?早かったし。』
「そ、そうか・・・。」次の言葉を発する前に、『あなた、ごめんなさい。たいした用がないなら切るわよ。まだ、化粧の途中だから。』と愛美が被(かぶ)せてくる。
「お、おう。」
『それじゃあ、10時にフロントで。』
「わかった。」と言い、電話を切った。
電話の声に怪しいところはない。今はしていないのだろう。自分の中で妄想が先走りしだしているようだ。電話を取るのが遅かったのは真田部長に抱かれている最中だったからじゃないのか?声を聞きながら、声がうわずっていないか確認していた。行為をしながら、電話しているのではないか?先程、喫茶室の営業時間を見てから、最悪の事態ばかり考えてしまう。
それは違うのではないか?ある程度前から最悪の事態を疑っていたのではないか?怒り、失望、虚しさが入り混じる。後悔していた。《どうして真田部長に妻とパーティーに参加するように提案したのだろうか?どうして部屋が違うことを強く抗議しなかったのか?どうして昨夜、愛美を自分の部屋に連れてこなかったのか?》今となっては、遅い事だが私は悔やんだ。
2015/07/13
私(伊勢重隆)は、レストランを出てから、すぐには部屋に戻らず、ホテル内を散策した。と言っても、一階フロアをぶらりとしただけだが。昨夜、妻の愛美(まなみ)が言っていた喫茶室があった。入り口に9時オープンと書いてあった。こちらでも朝食が取れるんだと思い、中を覗いてみたが愛美達はいなかった。何かが頭の中に引っかかる。何だろうかと考えながら、喫茶室を後にしようとした時に振り返って入り口横の看板をみた。
営業時間 AM9:00~PM9:00 と書いた看板が立っていた。昨夜の事を考える。パーティーが終了してから愛美はここで真田部長と部長の知り合いとお茶をしていたのではなかったか?冷や汗が流れてきた。愛美は私に嘘をついていたのか?それでは、空白のあの時間、私が涼子達とバーにいたあの時間、愛美達はどこで何を…。目の前が真っ暗になる。
私はその場に立ち尽くしていた。《いったい何がどうなっているんだ。愛美に昨日何があったと言うのだ。》絶望は次第に怒りに変化していった。チェックアウトを済ませたカップルが怒りに震えている私を避けながら怪訝そうな目を向けていく。私はエレベーターの方に歩き出し、愛美達の部屋に向かう。
エレベーターが愛美達の部屋の階で止まり、私は降りると足早に愛美達の部屋に向かった。ドアの前でノックをしようとして立ち止まる。怒りにまかせてここまで来たが何をしに来たのだろうか?あたりをキョロキョロと見回し、耳を当ててみる。何やら物音が聞こえる気がする。もう少し聞いていると気のせいかギシギシと物が動くような音に聞こえる。音の正体が気になったが2つ隣の部屋でドアが開く音がしたのでドアから離れ、足早にエレベーターに向かい自分の部屋に戻った。
部屋に戻るとチェックアウトの準備をした。着衣や下着をバッグに入れるだけなのですぐに準備は終わった。携帯電話を見ると着信を示すランプが点滅していた。愛美からの着信かと期待したが涼子からのメールだった。≪今日も会えて嬉しかった。しばらく逢えないかもしれないけど、また逢いたい。必ず連絡ください。≫と言う内容だった。嬉しくなり、すぐにメールを返信したがすぐに気分が重くなった。
携帯を睨みながらベッドの端に座っていた。愛美に電話しようか迷っている。電話するにしても何を話したらよいのか?悩んでいる間にも時間は刻一刻と過ぎていく。手に汗をかいてきた。迷っていても仕方ない。私は深呼吸をすると愛美に電話を掛けた。呼び出し音だけが耳に虚しく響く。なかなか電話に出ないので切ろうかと諦めかけたその時、
『もしもし。どうしたの?』と愛美が出た。
「い、いや、別に用と言う訳じゃないんだけど、用意できたかなぁっと。」と口ごもった。
『まだ、化粧の最中よ。だから、電話を取るのが遅くなっちゃった。ごめんね。』
「朝食は食べた?」
『食べたわよ。それがどうしたの?』
「いやぁ、レストランで見かけなかったから…。」
『多分、時間が違ったのかな?早かったし。』
「そ、そうか・・・。」次の言葉を発する前に、『あなた、ごめんなさい。たいした用がないなら切るわよ。まだ、化粧の途中だから。』と愛美が被(かぶ)せてくる。
「お、おう。」
『それじゃあ、10時にフロントで。』
「わかった。」と言い、電話を切った。
電話の声に怪しいところはない。今はしていないのだろう。自分の中で妄想が先走りしだしているようだ。電話を取るのが遅かったのは真田部長に抱かれている最中だったからじゃないのか?声を聞きながら、声がうわずっていないか確認していた。行為をしながら、電話しているのではないか?先程、喫茶室の営業時間を見てから、最悪の事態ばかり考えてしまう。
それは違うのではないか?ある程度前から最悪の事態を疑っていたのではないか?怒り、失望、虚しさが入り混じる。後悔していた。《どうして真田部長に妻とパーティーに参加するように提案したのだろうか?どうして部屋が違うことを強く抗議しなかったのか?どうして昨夜、愛美を自分の部屋に連れてこなかったのか?》今となっては、遅い事だが私は悔やんだ。
2015/07/13
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