短Ⅱ26〖心の隙〗第9話
短Ⅱ26〖心の隙〗第9話
妻(明戸理紗:りさ:35歳)の会社の“研修旅行”を週末に控えた、ある日のことです。
私(明戸郁夫:33歳)はその日朝から何となく体調が悪く仕事場には出たものの、どうもいま一つ本調子ではありません。仕事が出来ないほど体調が悪いわけではありませんでしたが、たまたま暇な日だったので殊更具合が悪いふりをして、従業員達にあとを任せて早退しました。
今日妻のパートは休みだったはずです。そして、長女もここ数日、部活動の遠征で家を空けているので、次女が帰ってくる夕方まで妻は完全に行動が自由になるのです。ひょっとすると妻の理紗は所長の田中良明と会うかもしれない。いや、間違いなく会うだろう。
そうだ、折角の機会だからまた妻の行動を探ってみよう。
まず私は車で、いつかのお宮に行ってみましたが、人っ子一人いません。理紗のパート先に回ってみましたが、当然妻の車はありません。そして、私は田中所長の駐車場にも車がないことに気付きました。
《しまったな。外回りとかなんとか理由をつけて外出し、妻をどこかに連れ出して抱いているな。ラブホテルを虱潰しに当たるわけにも・・・どうしよう?・・・》
やむを得ず私は一旦自宅に帰りました。自宅の車庫には妻の車だけがあります。
《ああ、そうか。まだ出かけていなかったんだな。これから行くつもりなのかな? ん?待てよ。ひょっとすると、田中は私の自宅に上がりこんでいるかも?》
自宅の周りを少し探ってみると、裏通りの空き地の前の路上に見覚えのある田中の車が停まっています。
それで私は自分の車を少し離れた所に停め、自宅に戻り、庭に回ってリビングルームを窺いました。私の勘は当たっていました。薄い白のブラウスを着て、ピンクのスカートを穿いた妻と、スーツ姿の田中がリビングルームにいます。
《やっぱりそうだったのだ。よりによって、私の自宅に上がりこんで、妻を抱く気らしい。いや、何だかちょっと様子がおかしいぞ!?》
妻と田中はソファに座って、深刻な感じで話し込んでいました。理紗は泣いているようです。首を何度も横に振って“いやいや”をして、拳(こぶし)で男の胸をたたいて何かを訴えているようです。男は妻をなだめるように抱き寄せ、髪を撫でていました。妻の理紗はまだ泣きながら、何かを訴えているようです。
しかし、やがて妻と田中所長は唇を合わせ、愛の行為へ移っていました。理紗はブラウスのボタンを外され、ピンクの透けたブラジャーの上から両方のバストを男に揉みしだかれています。妻の両膝はだらしなく開き、ピンクのミニスカートから肌色のパンストを履いた妻の脚と、スカートの奥のピンクのパンティーまでがむき出しに見えています。
そんな行為をしながらも、二人は何か言葉を交わしているようですが、私には聞き取れません。これじゃ、何を話しているのか分らない。
《中に入って、盗み聞きしてみるしかないか。》
私は玄関にまわり、音がしないように静かに錠を回し、ドアを開けます。靴を脱いで下駄箱の中に隠し、廊下を忍び足で歩き、リビングのドアの前で息を殺して中の様子を窺いました。
ようやく二人の会話が聞こえてきます。
『所長。もう会えなくなるなんて、信じられない。そんな遠くに転勤しちゃうなんて、絶対嫌。私は所長が大好きで、こんなに尽くしているのに。やっと初めて二人でお泊りに行く予約も取れて、今週末の旅行を楽しみにしていたのに。これっきりになっちゃうの?』妻が甘えたような声で訴えています。
田中も〔私も理紗と会えなくなるなんて耐えられないから、何とか一年でも、半年でも先送りにと本社に何度も頼んだんだよ。でも、駄目だった。わかってくれよ、理紗。私の立場で転勤を拒否すれば、もう会社を辞めなきゃならない。今辞めたら、私はもうこの歳だからいい仕事への再就職なんて難しいし、私は生活できなくなるんだよ。でも、これからもずっと理紗を離さないよ。〕と答えました。
2016/03/05
妻(明戸理紗:りさ:35歳)の会社の“研修旅行”を週末に控えた、ある日のことです。
私(明戸郁夫:33歳)はその日朝から何となく体調が悪く仕事場には出たものの、どうもいま一つ本調子ではありません。仕事が出来ないほど体調が悪いわけではありませんでしたが、たまたま暇な日だったので殊更具合が悪いふりをして、従業員達にあとを任せて早退しました。
今日妻のパートは休みだったはずです。そして、長女もここ数日、部活動の遠征で家を空けているので、次女が帰ってくる夕方まで妻は完全に行動が自由になるのです。ひょっとすると妻の理紗は所長の田中良明と会うかもしれない。いや、間違いなく会うだろう。
そうだ、折角の機会だからまた妻の行動を探ってみよう。
まず私は車で、いつかのお宮に行ってみましたが、人っ子一人いません。理紗のパート先に回ってみましたが、当然妻の車はありません。そして、私は田中所長の駐車場にも車がないことに気付きました。
《しまったな。外回りとかなんとか理由をつけて外出し、妻をどこかに連れ出して抱いているな。ラブホテルを虱潰しに当たるわけにも・・・どうしよう?・・・》
やむを得ず私は一旦自宅に帰りました。自宅の車庫には妻の車だけがあります。
《ああ、そうか。まだ出かけていなかったんだな。これから行くつもりなのかな? ん?待てよ。ひょっとすると、田中は私の自宅に上がりこんでいるかも?》
自宅の周りを少し探ってみると、裏通りの空き地の前の路上に見覚えのある田中の車が停まっています。
それで私は自分の車を少し離れた所に停め、自宅に戻り、庭に回ってリビングルームを窺いました。私の勘は当たっていました。薄い白のブラウスを着て、ピンクのスカートを穿いた妻と、スーツ姿の田中がリビングルームにいます。
《やっぱりそうだったのだ。よりによって、私の自宅に上がりこんで、妻を抱く気らしい。いや、何だかちょっと様子がおかしいぞ!?》
妻と田中はソファに座って、深刻な感じで話し込んでいました。理紗は泣いているようです。首を何度も横に振って“いやいや”をして、拳(こぶし)で男の胸をたたいて何かを訴えているようです。男は妻をなだめるように抱き寄せ、髪を撫でていました。妻の理紗はまだ泣きながら、何かを訴えているようです。
しかし、やがて妻と田中所長は唇を合わせ、愛の行為へ移っていました。理紗はブラウスのボタンを外され、ピンクの透けたブラジャーの上から両方のバストを男に揉みしだかれています。妻の両膝はだらしなく開き、ピンクのミニスカートから肌色のパンストを履いた妻の脚と、スカートの奥のピンクのパンティーまでがむき出しに見えています。
そんな行為をしながらも、二人は何か言葉を交わしているようですが、私には聞き取れません。これじゃ、何を話しているのか分らない。
《中に入って、盗み聞きしてみるしかないか。》
私は玄関にまわり、音がしないように静かに錠を回し、ドアを開けます。靴を脱いで下駄箱の中に隠し、廊下を忍び足で歩き、リビングのドアの前で息を殺して中の様子を窺いました。
ようやく二人の会話が聞こえてきます。
『所長。もう会えなくなるなんて、信じられない。そんな遠くに転勤しちゃうなんて、絶対嫌。私は所長が大好きで、こんなに尽くしているのに。やっと初めて二人でお泊りに行く予約も取れて、今週末の旅行を楽しみにしていたのに。これっきりになっちゃうの?』妻が甘えたような声で訴えています。
田中も〔私も理紗と会えなくなるなんて耐えられないから、何とか一年でも、半年でも先送りにと本社に何度も頼んだんだよ。でも、駄目だった。わかってくれよ、理紗。私の立場で転勤を拒否すれば、もう会社を辞めなきゃならない。今辞めたら、私はもうこの歳だからいい仕事への再就職なんて難しいし、私は生活できなくなるんだよ。でも、これからもずっと理紗を離さないよ。〕と答えました。
2016/03/05
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