短Ⅱ29〖妻の様子が?〗第2話
短Ⅱ29〖妻の様子が?〗第2話
第1話
数日後、仕事中に部長から呼び出され、あるプロジェクトの依頼を受けたのです。
[どうだ片桐君、君しかこの仕事を任せられないんだ。頼むよ。]
その内容とは、4月から九州で新しく工場を立ち上げることになりそのプロジェクトメンバーに選ばれたのです。私(片桐雅夫:かたぎり・まさお:37歳)にとっては願ってもないチャンス到来です。成功させれば係長から課長昇進も夢ではありません。
「はい、喜んでやらせていただきます。」
[でも片桐君とこはまだ子供さんが小さいらしいじゃないか。夫婦揃って転勤の方がいいんじゃないか?]
「はい、帰って妻と相談します。」
私も当然そのつもりでした。自宅へ帰り妻(片桐沙織:かたぎり・さおり:28歳)に喜んで話すと
『そうなの・・・。少し考えさせて・・。』
と困惑したような態度をとったのです。
「俺は一人でも行くぞ。こんなチャンスは滅多にないからな。」
と強気で決心を示すと沙織も心変わりすると思っていました。
1週間が経ったある日の夜、『あなた、ごめんなさい。やっぱり、わたし一緒に行けない。』と言い、可愛いざかりの娘の真奈美とも離れるのが辛い私はつい怒ってしまいました。すると泣きながら、『一人暮らしの母を置いて遠く九州に行くのは辛いの。それに買ったばかりの家を手放すのも嫌だし・・。』妻の沙織がいうには、『春から行くことになっている幼稚園の入園を取り消して、いまさら知らぬ土地で真奈美を入園させるのも難しいから。』と言うのです。
私も色々と説得を試みましたが、やはり沙織の気持ちは変わりませんでした。考えてみれば、沙織の言う通りかも知れません。「分かった。それじゃ俺一人で単身赴任するよ。」そう自分を納得させたのです。
単身赴任に発つ日、妻は真奈美と二人で東京駅まで見送りに来てくれ新幹線に乗ったときは泣きそうでした。赴任先では仕事に、家事にと忙しく目が回るような生活を送っていましたが毎日欠かさず電話はしていました。仕事が終わり夜に一人の部屋に帰るのは本当に寂しいものです。愛娘の声を聞くのが唯一の楽しみでした。
ある日、いつもように真奈美と会話にならない電話のあと沙織に代わると
『あの、あなた、来週の土日なんだけど、美由紀と旅行に行きたいの。落ち込んでいる彼女を励ましてあげたくて。いいでしょ?』
「真奈美はどうするんだ?」
『うん。真奈美は母に預けるから心配しないで。』
私も新婚旅行以来どこへも連れていっていない負い目もあったので
「そうだな。ついでにお前も気晴らししたらいいんじゃないか?まぁたまにはいいだろうが、お義母さんにあまり迷惑かけないようにな。」
と承諾をして切りました。この時に何か引っかかるものを感じながらも、仕事疲れのせいで眠ってしまいました。
妻の沙織が旅行に行く前日の金曜日に、いつもより早く会社が借りたマンションに帰った私は、沙織に電話したときでした。いつもより出るのが遅かったのを覚えています。
『ごめんなさい。明日早いからお風呂に入っていたの。』
「そうかぁ、明日だったよな。」
『ええ、あっ・・うん・・・。』
「どうした?」
『なんでもないわ。あっ・・いそいでお風呂でた・・あっ・・。』
「そうか。真奈美はどうしてる?」
『明日の朝が早いので昼に実家のほうへ預けたの・・あ、あっ・・。』
「どうかしたのか?」
『大丈夫よ・・あっ、あっ・・。』
と息があがっているような声です。
「体調でも悪いのか?無理しないほうが・・・。」
と言いかけた途端突然電話が切れたのです。私(片桐雅夫)は心配になり掛け直すと
『ごめんなさい。ちょっとのぼせたみたい。心配しないでね。』
と普通の感じに戻っていました。
私たちはそのあとすこし会話を交わし電話を終えました。しかし、私は、さきほどの沙織に違和感が残ります。なにか隠しているような気が・・今までこんなに長い期間離れて暮らしたことがなかった。《沙織が私を裏切るようなことはありえない・・》でも疑えば疑うほど悶々とし、よからぬことを考えてしまいます。知らぬ間に私はいつもより酒を飲んだのか、そのまま風呂にも入らず、いつしか眠りについていました。 第3話へ
2016/03/11
第1話
数日後、仕事中に部長から呼び出され、あるプロジェクトの依頼を受けたのです。
[どうだ片桐君、君しかこの仕事を任せられないんだ。頼むよ。]
その内容とは、4月から九州で新しく工場を立ち上げることになりそのプロジェクトメンバーに選ばれたのです。私(片桐雅夫:かたぎり・まさお:37歳)にとっては願ってもないチャンス到来です。成功させれば係長から課長昇進も夢ではありません。
「はい、喜んでやらせていただきます。」
[でも片桐君とこはまだ子供さんが小さいらしいじゃないか。夫婦揃って転勤の方がいいんじゃないか?]
「はい、帰って妻と相談します。」
私も当然そのつもりでした。自宅へ帰り妻(片桐沙織:かたぎり・さおり:28歳)に喜んで話すと
『そうなの・・・。少し考えさせて・・。』
と困惑したような態度をとったのです。
「俺は一人でも行くぞ。こんなチャンスは滅多にないからな。」
と強気で決心を示すと沙織も心変わりすると思っていました。
1週間が経ったある日の夜、『あなた、ごめんなさい。やっぱり、わたし一緒に行けない。』と言い、可愛いざかりの娘の真奈美とも離れるのが辛い私はつい怒ってしまいました。すると泣きながら、『一人暮らしの母を置いて遠く九州に行くのは辛いの。それに買ったばかりの家を手放すのも嫌だし・・。』妻の沙織がいうには、『春から行くことになっている幼稚園の入園を取り消して、いまさら知らぬ土地で真奈美を入園させるのも難しいから。』と言うのです。
私も色々と説得を試みましたが、やはり沙織の気持ちは変わりませんでした。考えてみれば、沙織の言う通りかも知れません。「分かった。それじゃ俺一人で単身赴任するよ。」そう自分を納得させたのです。
単身赴任に発つ日、妻は真奈美と二人で東京駅まで見送りに来てくれ新幹線に乗ったときは泣きそうでした。赴任先では仕事に、家事にと忙しく目が回るような生活を送っていましたが毎日欠かさず電話はしていました。仕事が終わり夜に一人の部屋に帰るのは本当に寂しいものです。愛娘の声を聞くのが唯一の楽しみでした。
ある日、いつもように真奈美と会話にならない電話のあと沙織に代わると
『あの、あなた、来週の土日なんだけど、美由紀と旅行に行きたいの。落ち込んでいる彼女を励ましてあげたくて。いいでしょ?』
「真奈美はどうするんだ?」
『うん。真奈美は母に預けるから心配しないで。』
私も新婚旅行以来どこへも連れていっていない負い目もあったので
「そうだな。ついでにお前も気晴らししたらいいんじゃないか?まぁたまにはいいだろうが、お義母さんにあまり迷惑かけないようにな。」
と承諾をして切りました。この時に何か引っかかるものを感じながらも、仕事疲れのせいで眠ってしまいました。
妻の沙織が旅行に行く前日の金曜日に、いつもより早く会社が借りたマンションに帰った私は、沙織に電話したときでした。いつもより出るのが遅かったのを覚えています。
『ごめんなさい。明日早いからお風呂に入っていたの。』
「そうかぁ、明日だったよな。」
『ええ、あっ・・うん・・・。』
「どうした?」
『なんでもないわ。あっ・・いそいでお風呂でた・・あっ・・。』
「そうか。真奈美はどうしてる?」
『明日の朝が早いので昼に実家のほうへ預けたの・・あ、あっ・・。』
「どうかしたのか?」
『大丈夫よ・・あっ、あっ・・。』
と息があがっているような声です。
「体調でも悪いのか?無理しないほうが・・・。」
と言いかけた途端突然電話が切れたのです。私(片桐雅夫)は心配になり掛け直すと
『ごめんなさい。ちょっとのぼせたみたい。心配しないでね。』
と普通の感じに戻っていました。
私たちはそのあとすこし会話を交わし電話を終えました。しかし、私は、さきほどの沙織に違和感が残ります。なにか隠しているような気が・・今までこんなに長い期間離れて暮らしたことがなかった。《沙織が私を裏切るようなことはありえない・・》でも疑えば疑うほど悶々とし、よからぬことを考えてしまいます。知らぬ間に私はいつもより酒を飲んだのか、そのまま風呂にも入らず、いつしか眠りについていました。 第3話へ
2016/03/11
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